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2021年5月

[No.1052-2]愛情

No.1052-2

「えー!?なにクラブに?」
「園芸部」

逆に部活には園芸部はなかった。
授業専用のクラブだった。

「渋っ!」
「あはは、だろうね!」

園芸部に行きたかったわけじゃない。
他に行くところがなかったのが、正直な気持ちだ。

「さっきも言ったように」
「球技は苦手だし、他の文系もクラブもさぁ・・・」

デザインやら何やら、才能を試されるクラブばかりだった。

「園芸関係の人が聞いたら怒られるわよ」
「かもなね」

でも本当にそうだ。
実際、そんな楽なクラブではなかった。

「花や植物を植えるだけだろ?って思ってたからさ」

それに、何よりも僕に欠けていたものがあった。

「欠けていたもの?」
「何だと思う?」

もしかしたら、一番必要なものかもしれない。
それが僕には無かった。

「えっー!何だろう・・・」
「まぁ、考えておいて」

ここで即答するのはちょっと照れくさく感じたからだ。

「人に対しても必要なものだよ」
S1052
(No.1052完)
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[No.1052-1]愛情

No.1052-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「学生時代、クラブ活動してた?」
「私?高校3年間、テニス部だったよ」

僕は陸上部に入っていた。
同じく、3年間続けた。

「それが何が?」
「説明しにくいんだけど・・・」

普通、部活は放課後に行う。
それは全国共通だと思う。

「まぁ・・・そうね、朝練とかはおいといて」
「うちの学校、それ以外にね」

授業の一環として、部活の時間があった。
国語や数学と同じ並びで。

「週に一度・・・金曜日だったかな?」
「へぇ~そうなんだ」

どうしてそれが設けられたのか理由は不明だ。

「多分、帰宅部対策と言うか」
「そうね、強制的に何らかのクラブに属させて・・・」

それも教育の一環と理解はできる、今なら。

「その授業のクラブも陸上部だったの?」
「ううん、それが・・・」

なぜか、陸上部はなかった。
確か、サッカーや野球部はあった記憶がある。

「じゃあ、なにクラブに入ってたの?」
「それが問題で」

球技は苦手としていた。
だから、1年生の時は、あるクラブに逃げてしまった。

(No.1052-2へ続く)

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[No.1051-2]ある映画のヒロイン

No.1051-2

「中学生の頃、友達同士でさぁ・・・」
「好きなタレントの話題が出たんだ」

当時はアイドル全盛期とも言える時代だった。
もちろん、僕にも好きなアイドルが居た。

「けど、それじゃ面白くないと思って」
「男子ってそんなとこ、あるよね?」

当時、流行り掛けていたある映画のヒロインに目を付けた。
可愛いというより、10代なのに完成された美人だった。

「確かに10代とは思えない魅力ね」
「だろ?だから・・・」

つい、彼女の名前を出してしまった。
そしたら・・・。

「話が盛り上がった?」
「そりゃもぉ!」

その映画は、思春期の男女を描いたものだった。
だから、色々なことが僕の心に突き刺さっていた。

「それでだんだんと意識するようになって」
「本当に好きになっちゃったのね」

続編も作られ、主題歌もヒットした。
それが映画をより盛り上げたとも言えよう。

「今でも歌えるよ」
「英語だけに歌詞は“雰囲気”だけどね!」

パンフレットをもう一度、手に取る。
甘酸っぱい青春時代がよみがえってきた。
S1051
(No.1051完)
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[No.1051-1]ある映画のヒロイン

No.1051-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「懐かしいね、これ!」
「あっ・・・ほんとだ」

実家から送られてきた荷物の中にそれがあった。
それにしてもよく捨てずにとってあったものだ。

「映画に行ったの?」
「どうだったかな・・・」

パンフレットがあっても見に行ったとは断言できない。
もらい物の可能性もあるからだ。

「ただ、その映画のヒロインが」
「好きだったの?」

間髪入れずに質問してきた。
別に珍しい話ではない、でも・・・。

「ませてたのね!」
「そう言うと思ったよ・・・」

ヒロインを好きなる。
言い換えれば、その女優を好きになるのと同じだ。

「だって外人さんなんだもん!」
「仕方ないだろ?」

最初はそれほど好きではなかった。
それが、ひょんなことから意識するようになった。

「きっかけがあったの?」
「あぁ、一言で言うなら・・・」

“大人ぶっていた”と思う。
背伸びをしたい年頃だったこともある。

(No.1051-2へ続く)

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ホタル通信 No.466

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.428 ロンサム・シーズン
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

実話度は低めですが、当時の心境と言うか事実をある歌詞に引っ掛けてみました。

ある歌の歌詞・・・すでに答えが書いてあるのでクイズにもなっていませんが「さて、どちらの歌手が歌ったものが小説のヒントになっているでしょうか?」と問いかければ多少、クイズになるかもしれませんね。

当時、付き合っていた彼がいた。でも、なかなか先に進めなくてヤキモキしていた女心を描いたものです・・・が、あえて皆さんを惑わせるとすると作者は“彼”の方かもしれません。つまり、ヤキモキさせていた側・・・ということになりますね。
実はこれを紐解く小説を書いており、その小説とセットにして読むと作者の人物像が分かるかも?しれません(笑)

「事実は小説より奇なり」と言われることがありますが、この小説でも事実の方がよりリアルなことが起こっていました。
実際は手紙ではなく、口頭で“それを”言ったんですよね。まぁ、小説ほどストレートではありませんでしたが。ですが、小説の通り、それは叶わず・・・そして、その歌詞と出会うことになったわけです。
T466
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[No.1050-2]母の日

No.1050-2

「だから、今年もやめておくよ」
「その方がいいかもね」

母の日には毎年、花を欠かせなかった。
花束もあれば、鉢植えの時もあった。

「たしか、結婚してからだったよね?」
「うん、だから・・・」

かれこれ・・・年ほど続けたことになる。
それが、去年、途絶えた。

「来年はどうする?」
「そうだね・・・」

受け取る人が居ない方がより贈りたくなる。
何とも不思議な感覚だけど。

「まぁ、“エア母の日”ってのもありだろ?」
「あはは!いいかも!」

もちろん、ケチりたいわけじゃない。
それを選んでいる時間が大切なんだ。

「とにかく・・・2回目だね」
「そうだな」

この日くらい、ちょっと涙してもいいよね?
S1050
(No.1050完)
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[No.1050-1]母の日

No.1050-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今年で2回目の母の日になる。

「そうだね・・・2回目だね」

他人が聞けば“母の日初心者”と思うだろうか?
2回目というくらいだから。

「でも、違うんだよね~」
「あはは!たしかにね」

今年は何を贈ろうか・・・今でも迷っている。

「やっぱり、無難に花かな?」
「そうね・・・」

一応、悩む振りをしてみる。
実は去年もそうだった。

「でも、やっぱり・・・」
「贈らない?」

贈りたい気持ちはある。
受け取る本人が居ないとしてもだ。

「ただ、父がさぁ・・・」

今でも元気がない。
そこにきて、強烈に思い出させてしまうだろう。

(No.1050-2へ続く)

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[No.1049-2]答えが来る

No.1049-2

「さっきからニヤニヤして・・・」
「だって、思い出しちゃってさ!」

彼女を待つ男子高校生・・・と言うシチュエーションだ。
どうやら同じ高校ではないようだ。

「彼女を待ってたのか?」
「友達を待っていたように見える?」

その違いは一目で分かる。
しきりに髪を気にして、待っている姿がどこかキザだ。

「よく見てるな!?」
「女性ならごく当たり前の観察眼よ、それにほら!」

予想通り、あの子がその男子の前で立ち止まった。
そして仲良く電車に乗り込んだ。

「ほんとだ・・・」
「でしょ?」

私も同じようなことを経験した。
残念ながら、目の前の人と。

「ん!?何か言ったか?」
「いいえ、何も」

私の場合、彼をしばらく観察していた。
私を待っている時の彼を知りたかったからだ。

「なんだよ・・・またニヤニヤして・・・」
「別に!」

だって、さっきの男子と全く同じなんだもん。
S1049
(No.1049完)
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[No.1049-1]答えが来る

No.1049-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「ふふふ・・・」
「何だよ、気持ち悪い」

人が居なかったら、一発殴っているところだ。
今は大人しくしておこう。

「向こうの男子、なにしてると思う?」
「何って・・・スマホいじってるだけだろ?」

まぁ、難しい質問だとは思う。

「電車が到着してるのに乗り込まない」
「そして周りをキョロキョロ・・・」

このヒントで答えが分かるとは思っていない。
自分で自分は見えないからだ。

「いきなり、クイズかよ!?」
「早くしないと“答えが来ちゃう”わよ」

彼がキョトンとしている。
我ながら“答えが来る”とは名言だ。

「何だよ、それ!?」
「さぁ、はやくはやく!」

そうこうしている内に、答えらしき人が近づいてきた。
スマホを片手に足取りが軽い。

「多分、あの子が答えよ」
「あの子!?」

その男子も“あの子”に気付いたようだ。
そしてスマホをいじる手が止まった。

(No.1049-2へ続く)

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ホタル通信 No.465

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.427 二枚の写真
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

実話度が高い割に、タイトルだけでは内容が思い出せませんでした。振り返れば昔々の出来事です。

フィルムカメラならいわゆる“焼き増し”をしないと複製することは出来ませんが、デジタルカメラなら簡単です。コピーを消し忘れていた写真を見つけた所から物語が始まります。
彼女は、個撮モデルのような仕事をしていました。したがってメジャーなモデルではありませんでした。
そんな彼女とヒョンなことで知り合い、時々、会うようになりました。仕事でもなく、プライベートでもなく・・・丁度、中間あたりの立ち位置でしたね、お互い。

そのため、小説の出来事も仕事のようなプライベートのような何とも不思議な感覚でした。お互い、深いところには踏み込めない理由もあったので必然的にそうなったと思います。
普段はスッピンに近いほど、まるで化粧感がない彼女ですがいざ、撮影ともなると別人かと見違えるほどです。
ただ、小説のラストにも書いてある通り、彼女の場合、モデルはまさしく生きていくための、仕事でした。一言であらわせば波乱万丈の人生だったので、彼女は容姿を武器に生き抜いてきたとも言えます。

冒頭に書いた通り、今となっては昔々の話です。でも、彼女が今、どこで何をしているか・・・気にならないわけはありません。
T465
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[No.1048-2]二十四の瞳

No.1048-2

「そう言えば・・・」
「そうやね」

先生を目指していたと聞いたことがあった。
確か、音楽の先生だった。

「昔の話やね」
「昔、昔のね」

挫折したわけじゃない。
“色々あった”からだ。

「まぁ、選択肢は無限にあるさ」
「かもしれんな」

その“色々”に僕も少なからず関係している。
いや・・・。

「後悔は?」
「してるわけないやん!」

その言葉に嘘はないと思う。
でも、今、なぜ、その本なんだろうか?

「その本、買ったの?」

そう言えば肝心なことを聞いていなかった。

「買ったよ、随分前やけどな」

と言うことは今、引っ張り出して読んでいることになる。

「・・・そっか」

それが何を意味しているか、僕にはわからない。
けど、二つの瞳は輝いて見える。

「なに見てんねん!恥ずかしいやろ」
S1048
(No.1048完)
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[No.1048-1]二十四の瞳

No.1048-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「珍しい本、読んでるな?」
「珍しい!?」

彼女の顔がみるみるうちに険しくなる。
理由は・・・今、気付いた。

「なに言うてんねん!」
「名作やろ!?」

もちろん、その本が名作なのは僕でも知っている。
ちょっと言い方を間違えただけだ。

「ごめんごめん!」
「“珍しいな、本を読むなんて”と言おうとしたら・・・」

なぜか言葉が繋がってしまった。

「ほら、あまり本を読んでいるイメージがないから」
「・・・せやな」

あっさり認めるところも彼女らしい。

「急に読みたくなったんや」
「そうなんだ・・・」

でも、それがなぜ“二十四の瞳”なのか・・・。
それは大きな謎だ。

「ちなみに内容は知ってたの?」
「全然、知らん!」

偶然、手にしたとすればある意味、引きが強い。
彼女と全く無関係とは言えない本だからだ。

「で、どこまで読んだの?」
「半分くらいやろか」

確かに丁度半分くらいに見える。

(No.1048-2へ続く)

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