[No.1045-2]そこに立つ
No.1045-2
「もぉー!どうでもいいから早く撮ってよ」
「仕方ないなぁ・・・」
どうして、こう撮られるのが好きなんだろう?
僕なら絶対、お断りだ。
「じゃあ、撮るよ」
「・・・どれどれ」
思いのほか、綺麗に撮れている。
人物と桜のバランスもいい。
「なに浸ってるのよ?」
「早く見せて」
スマホの画面を見せる。
「ふ~ん・・・なかなかいいわね」
「俺の腕がか?」
“違う!”と言わんばかりに睨まれた。
いいのは、自分自身らしい。
「まぁ、あなたの腕も褒めてあげるわ!」
「そりゃどうも!」
そう言えば、毎年こんなやりとりが行われている。
どうやら、騒がしく見るのが僕らの定番らしい。
「ほら!早く早く!次、行くわよ!」
「ちょ、ちょっと!」
僕の腕を掴み、前を歩き始めた。
「はい、次はここで!」
「りょーかい・・・」
一見すると強引で無頓着そうな彼女だ。
でも、足元に咲く、小さな花をしっかり避けてそこに立つ。
(No.1045完)
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