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2021年4月

[No.1047-2]赤いレモン

No.1047-2

「大丈夫なの?」
「も、もちろんよ!」

それ以来の栽培だが勝算はある。
家庭菜園の知識も増え、ゴーヤなら成果も出せている。

「ゴーヤとトマトじゃ比較にならないよ」
「えへへ・・・やっぱり?」

私の影響で友人も家庭菜園の知識を持つようになった。
言う通り、確かに違う・・・いや、大きく違う。

「今年は準備万端で行くわよ!」
「まぁ、期待せずに待ってるわ」

種からではなく、苗を買ってくるつもりだ。
何本も育てるつもりはないので。

「まずは1本だけ・・・育ててみるわ」
「そうだね、それがいいかも」

リスクもあるが、1本に集中することにした。
もちろん、ゴーヤを育てながら。

「じゃあ、今年の冷やし中華・・・」
「もちろん!自家製トマトで!」

とにかく、週末はゴーヤの種まきだ。
そして、トマトの苗も買いに行こう。

「土の準備は?」
「バッチリよ!」

これから忙しくなりそうだ。
もちろん、それも楽しさの一部だと言えよう。

「じゃ、たまに生育状況を知らせてよ?」
「了解!」

我が子同然に可愛がってくれる親戚のおばさん・・・。
友人はそんなポジションなのかもしれない。
S1047
(No.1047完)
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[No.1047-1]赤いレモン

No.1047-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
そろそろ今年も始めようと思う。

「えっ!?まだ正月気分?」
「あのね・・・」

冗談ではなく、本気でそう言うからたちが悪い。
さすがの私もそこまでのんびりはしていない。

「じゃあ、何を?」
「そろそろ覚えてよね!?」

それをかれこれ10年くらい続けている。
春の恒例行事と言ってもいいだろう。

「・・・なんだ、アレか!」
「わざわざ“アレ”って言う必要ある?」

いちいち面倒な友人だ。
周りに人がいたら聞き耳を立てられそうだ。

「アレはアレじゃん!」
「はいはい・・・」

ようやく気温も落ち着いてきた。
今週の週末あたりが良いだろう。

「今年は何にするの?」
「いつものアレと・・・」

友人につられて、自分も“アレ”と言ってしまった。
アレとはゴーヤのことだ。

「他には?」
「うん、今年はトマトに再チャレンジしようかと思って」

家庭菜園を始めたころ、トマトを育てたことがあった。
けど、見事に失敗した。

「強烈に酸っぱかったよね」

それはトマトではなく、赤いレモンだった。

(No.1047-2へ続く)

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ホタル通信 No.464

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.589 後先考えて
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

実話度は低いですが、当時の心境・・・正確に言えば今もそうかもしれない、心の声を形にしたものです。

作者の性別や年齢はさておき、明らかに行動が臆病になっています。それが“大人な社会人”と言えば、聞こえが良いのでしょうが、がむしゃらだったあの頃・・・今でもよく覚えています。
若い頃は若さゆえの行動も、当時の上司は許してくれて逆にそれを褒めてくれました。小説に書いた通り、色々な迷惑を掛けたのも事実ですが。それでも随分と可愛がってもらったものです。その上司にとっては娘や息子のように映っていたのかもしれませんね。

さて、そんなこんなな出来事をちょっとビジネスタッチで描いています。丁度、その頃、プレゼン資料を作っていたこともあって、当たり障りのない内容に自分自身でも嫌気がさしていました。
社会や会社を理解すればするほど、どんどん普通の人になって行って、「若き頃のアイデアに満ち溢れていた自分は何処に?」なんて状態です、今は(笑)

でも、その“火”は消えていないということも言えますね。
別に大した野心も冒険心も持ち合わせてはいませんが、いつか、その火が再び大きく燃えんことを願っています。
T464
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[No.1046-2]夜の猫

No.1046-2

「いつものことだけど」
「今日は特に多かったな」

場所が場所だけに寄ってくるのだろうか?
こんないい匂いがすれば猫も黙ってはいない。

「みんな仲良く座ってたよ」
「不思議よね」

夜になると俗に言われる集会が始まる。
お互い微妙な距離をとって佇んでいる。

「昼間ならケンカが始まるのにね」
「そうそう!」

昔、実家で飼っていた猫もそうだった。
私が顔を出すと急に強気になって・・・。

「どうしたの?」
「目が潤んでいるよ?」

思わぬところで思い出してしまった。

「あっ・・・うん、ちょっとね」
「あれ?あなたも目が赤いよ」

友人も何かを思い出して潤んでしまったのだろう。

「これ?さっき外で猫たちと飲んでたの」
S1046 
(No.1046完)
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[No.1046-1]夜の猫

No.1046-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇねぇ~聞いてぇ~!」
「また猫の話?」

友人が猫なで声を出しているからではない。
動かぬ証拠があるからだ。

「なんで分かったの!?」
「あのね・・・」

三流の探偵でもすぐに分かる。
その位、簡単だということだ。

「服、見てよ」
「服?あぁ・・・なるほどね」

ここに来る途中に“いっぱい”じゃれあったのだろう。
猫の毛がびっしりと付いている。

「一応、居酒屋さんなんだからね!」
「分かってるわよ、手は洗いました!」

いつもこんな調子だ。
不潔とは言わないが、相手は野良なので。

「それなら良いけど」
「で、どんな話?」

私も嫌いではない。
むしろ、彼女が持ち込む話題に興味がある。

(No.1046-2へ続く)

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[No.1045-2]そこに立つ

No.1045-2

「もぉー!どうでもいいから早く撮ってよ」
「仕方ないなぁ・・・」

どうして、こう撮られるのが好きなんだろう?
僕なら絶対、お断りだ。

「じゃあ、撮るよ」
「・・・どれどれ」

思いのほか、綺麗に撮れている。
人物と桜のバランスもいい。

「なに浸ってるのよ?」
「早く見せて」

スマホの画面を見せる。

「ふ~ん・・・なかなかいいわね」
「俺の腕がか?」

“違う!”と言わんばかりに睨まれた。
いいのは、自分自身らしい。

「まぁ、あなたの腕も褒めてあげるわ!」
「そりゃどうも!」

そう言えば、毎年こんなやりとりが行われている。
どうやら、騒がしく見るのが僕らの定番らしい。

「ほら!早く早く!次、行くわよ!」
「ちょ、ちょっと!」

僕の腕を掴み、前を歩き始めた。

「はい、次はここで!」
「りょーかい・・・」

一見すると強引で無頓着そうな彼女だ。
でも、足元に咲く、小さな花をしっかり避けてそこに立つ。
S1405
(No.1045完)
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[No.1045-1]そこに立つ

No.1045-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁ・・・きれいだね!」
「いつものことだろ?」

毎年、今時期になると桜で有名な場所を訪れる。
そして、いつものごとく・・・。

「もぉ!冷めてるわね!」
「だっていつものことだろ?」

年に一度とは言え、毎年、同じ光景が繰り返される。
決してうんざりしているわけではないが・・・。

「ほら見てよ!?」
「白とピンクのバランスがさぁ・・・」

去年もそのセリフを聞いた。
いや・・・正確には一昨年も、さらにその前も。

「そんなこと言うと嫌われるわよ?」
「ほんとのことだろ?」

毎年、誘われるものの、あまり乗り気ではない。
でも、別に桜が嫌いなわけではない。

「なんかこう・・・春になったら」
「みんな桜、桜って」

早い話、天邪鬼とでも言えばよいのだろうか?
人の集まる場所が好きではない。

「みんな浮かれちゃってさ!」

天邪鬼というより、ひねくれ者の方が似合う。

「ひねくれ者ね!」
「自覚してるよ」

本当は人一倍、はしゃぎたいのかもしれない。
特に今日みたいな暖かい日の午後は。

(No.1045-2へ続く)

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ホタル通信 No.463

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.545 ロボットの恋
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

まれに出てくる夢の話です。夢をテーマに・・・ではなく、本当に見た夢をそのまま書くことがあります。

今となってはさすがに詳細は覚えていませんが、確かにこのような夢を見て、当時は鮮明に覚えていました。ロボットの彼がどこまでロボットのようだったのかも正直覚えてはいませんが、マネキンに近かったような微かな記憶が残っています。
そのロボットは実はまったく知らない人でした。小説の中では私と会話をしている人だということになっていますが、これはあくまでもオチをつけるための演出でした。

時々、ありますよね?ロボットではないにせよ、全くの見ず知らずの人が夢の中に出てくる・・・「もしかしたら、これから出会う運命の人?」なんて淡い期待もしたりします。
けど、結局はそんなこともなく「あの人は本当に誰だったんだろ?」と、若干、オカルト気味な不思議感が残ります。
街角のどこかで会っていたのかもしれませんが、それなら逆に「普段良く会っている人が夢に出てこないのはなぜ?」夢とは何とも不思議なものですね。

前述した通り、オチはいつものパターンですかね。都合よく夢にオチが付くはずもなく、ここは人力で締めくくりました。
T463
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[No.1044-2]今も謎

No.1044-2

最初はゲームのためだと思っていた。
実際、彼女も僕もそのゲーム暦は長い。

「でも、僕が嫌いになったら・・・」

クローバーさえ、送ることも求めることもないと思う。
それなら他のプレーヤーにすれば良い。

「けど、今は僕だけだから仕方なく?」

比較的、難しいゲームだ・・・途中でやめた人も多い。
実際、身近では僕と彼女しかプレイしていないようだ。

「ただなぁ・・・」
「嫌いな人に送るのかな?」

もしかしたらそれはそれと割り切っているのかもしれない。
ゲームのためなら・・・と。

「まぁ、それ以外は連絡ないしな」

試しに正月にLINEを送った。
“謹賀新年”のスタンプだけを。

「見事に既読スルーされたよな」

予想はしていた。
けど、淡い期待もしていた。

「そして今も・・・」

クローバーの到着を知らせるメッセージが届いた。

「う~ん、謎だぁ!」
S1044
(No.1044完)
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[No.1044-1]今も謎

No.1044-1

登場人物
男性=牽引役
-----------------------------

「・・・どう判断したらいいんだろうね?」

投げかけてはいるが相手は居ない。
ただの僕の独り言だ。

「まだ許してくれてないんだろうな・・・」

1年ほど前、知り合いの女性と口論してしまった。
正確に言えば、LINE上の文字でだ。

「あの時は言い過ぎたよな」

罵倒したのではない。
仕事上のアドバイスの度が過ぎた。

「ましてや女性の心理も理解せず・・・」

一番、嫌われる口論だと後で知った。
そこから、LINEでのやり取りが途絶えた。

「けどなぁ・・・」

今までのように文字や写真が届くことはなくなった。
でも、あるものだけは今でも届いている。

「そんなにゲーム好きだったかな?」

そのゲームは基本、無料で遊べるスマホゲームだ。
その中で、“クローバー”と呼ばれるものがある。

「これにどんな意味が・・・」

そのクローバーがあれば、すぐに1回プレイができる。
彼女はそれを毎日、送ってくるし、求めてもくる。

(No.1044-2へ続く)

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[No.1043-2]私たちも

No.1043-2

「私たちもそうだったね」

希望や不安に満ち溢れていた。
おかしな表現だけど。

「でも、あなたに出会えてよかったよ・・・」
「なによ、気持ち悪いわね」

こんな悪態をつけるのも、友達だからだ。
お互いの手の内は知っている。

「最初はギクシャクしてたもんね」
「そうそう!」

友達になれそうでなれない時期がしばらくあった。

「だから一気に友達になれたよね」
「今までの時間を取り戻すかのように」

それからは怒涛のごとく仲良くなった。
そして、今に至る。

「繰り返すようだけど・・・」
「ほんと、制服が眩しいね!」

確かに、その集団に圧倒される。
加えてその若さにも。

「そりゃそうよ」
「いくら私たちが若いと言っても」

10歳くらいは離れている。
とても話題が合いそうにない年の差だ。

「さぁ!私たちは私たちで行くわよ」
「だね!」

私たちもある意味、そんな目で見られているだろう。
着こなせていない地味なスーツにハイヒールだと。
S1043
(No.1043完)
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[No.1043-1]私たちも

No.1043-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
一目で新一年生と分かる。
襟は輝かんばかりの白さとパリッとした質感。

「そういう時期ね・・・」
「こっちまでワクワクしてくるね!」

中学生が数名の集団で登校している。
春先にはよく見かける光景のひとつだ。

「小学校時代からの友達なんだよね、その集団」
「そうそう!」

入学したての頃は、皆、さぐりさぐりだ。
すぐに友達ができるわけじゃない。

「だから、つい、今までの・・・」
「まぁ、みんなそうよ」

でも、時間の経過と共に新しい友達ができ始める。

「くっついたり、離れたり・・・」
「これからそんなことが起きるよね」

集団の登校も、もう少ししたら様変わりするはずだ。
実際、私たちもそうだった。

「いつの間にか仲良くなって」

ついには同じ高校、大学に通うことになった。

「そう考えると長い付き合いね」
「そうだね」

それにしても、真新しい制服が眩しい。

「・・・思い出すね」
「ほんと・・・」

希望と不安が入り乱れた表情も初々しい。

(No.1043-2へ続く)

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ホタル通信 No.462

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.525 鶏が先か卵が先か
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

書いてあることは事実なんですが、このような会話が交わされたわけではありません。

小説に書いてあるアイドル・・・年齢が分かってしまうので、あえて伏せさせてもらいます。ちなみに話の牽引役は男性になっていますが、実際は女性かもしれませんよ。その意味でも、アイドルの名前を書いてしまうと作者の素性がバレてしまうので(笑)
実は今でも顔の好みは変わっていません。意識しているつもりはなくても、気付けばそのアイドルと似ている人を好きになっています。多分、このアイドルを好きになった頃から、顔の好みが決まったような感じがあります。

ただ、それがアイドルが起源なのか、それとも別の何かに影響を受けた結果なのか・・・それは今でも分かりません。
今回の小説は、このようなことを面白おかしく書いてみました。現彼女の立場で考えてみれば、決して気持ちのいい話ではないかもしれません。
似ていること自体は何も問題はないのでしょうが、似ていることが好きの基準であり、考えようによってはアイドルの代替品のようにも捉えることができます。

ラストはそんな彼女の追及をかわすために、目に入った週刊誌の見出しを読み上げてみました。
この“新種”については本当に週刊誌の見出しとして書かれていたものを採用したんですよ。
T462
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[No.1042-2]不安の象徴

No.1042-2

「・・・となると本当に根深いのかもね」

(なによ・・・軽いものだと思ってたの?)

「だから困ってるんじゃない!」
「ごめん、ごめん!」

仕事がら飛行機を良く使う。
電車と違い、そう簡単に乗り遅れるわけにはいかない。

「そんな気持ちがそのうち・・・」

不安の象徴に変わったと思う。
いつの頃からか・・・。

「分かる気がする」
「私は私の不安の象徴があるからさ」

突然のカミングアウトだった。

「そうなの!?」
「別に驚くことじゃないでしょ?」

確かにその通りだ。
私にだけ“ある”ってことはないだろう。

「まぁ、秘密だけどね!」
「えぇ~気になるぅ!」

けど、今は私の問題だ。
友人の話は一旦、横に置いておこう。

「とにかく、今日はとことん飲もうよ!」
「そ、そうね!」

上手く行けばその不安が消えてくれるかもしれない。
ちょっと不安だけど。
S1042
(No.1042完)
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[No.1042-1]不安の象徴

No.1402-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「最近、また・・・」

ある夢を見るようになった。
しばらく見ることがなかったのに。

「・・・と言うことは」

友人も心得ている。
以前も相談したことがあるからだ。

「仕事?それともプライベート?」
「それが・・・」

飛行機に乗り遅れる夢・・・。
夢占いによれば何らかの不安を抱えているらしい。

「何が原因か分からなくて」
「不安が・・・ないの?」

ないことはないと思う。
ただ、明らかに・・・と言う不安に心当たりがない。

「それほど根が深いってことかしら?」
「かもしれないね」

仕事はいつも通り、パッとしない。

「あはは!普通は“それ”よね?」
「言わないの!」

プライベートでは最近、彼にフラれた。

「それでもなさそうね・・・」
「私のこと、理解し過ぎ!」

確かにフラれたことくらいじゃ悩まない。
いつものことだ、不安になったことはない。

(No.1402-2へ続く)

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[No.1041-2]王様のアイデア

No.1041-2

「これどうなってんの?」

写真は多分、ニューヨークのマンハッタンのビル群だ。

「街の光・・・と言えばいいのかな?」
「そこに光ファイバーが通ってあって」

光源からの光が光ファイバーを通る。
光ファイバーが街の光を表現している。

「中に回転する部品があってさぁ」
「それで色を変えてるんだよ」

本物の街の光のように、光に動きが生じる。
さながら写真が生きているように見える。

「大袈裟ね!と言いたいところだけど」
「あなたにしては悪くない表現ね」

これを買った頃はインテリアに凝っていた時期だった。
とは言え、会社の独身寮だったけど。

「それにしても随分、構造に詳しいわね?」
「ほら、気になるだろ?」

興味本位で分解したことがあった。
どんな構造をしているのかと。

「じゃあ、もっと大事にしなきゃ」
「こんなに埃まみれになって・・・」

確かにそうだ。

「ついでに掃除をしておくよ」
「そうしなよ!」

では、ひとまず電源を切って・・・と。

「ちょっと待って!」

何だか彼女が艶っぽい・・・。
S1041
(No.1041完)
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[No.1041-1]王様のアイデア

No.1041-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これなに?」
「あぁ・・・それね」

言われて気付いた。
自分の部屋に置いてあるものなのに。

「掃除してる?」
「結構、埃っぽいよ」

確かに、いつ掃除したか覚えていない。
それほどその存在を忘れていた。

「それは何て言うか・・・」
「ただの写真ではないと思うけど?」

一言で表すとインテリアだ。
自分で言うのも何だが、かなりお洒落な。

「お洒落?」
「実際に見てもらった方がいいな」

その方が断然、理解が早い。
まずは部屋を暗くして・・・と。

「なにカーテン閉めてんのよ!」
「えっ!?か、勘違いするなよ!」

あくまでも部屋を暗くするのが目的だ。
そうしなければ良さが伝えられない。

「なら、いいわ」
「・・・ったく」

おもむろに電源コードをコンセントに差し込む。
そして、スイッチを入れる。

「どう?」
「わぁ・・・きれい!」

写真が時間の経過と共に、色々な色に輝きだした。

(No.1041-2へ続く)

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