[No.1036-1]完全な個室
No.1036-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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僕に“完全な個室”を与えられたのは高2の夏だった。
「完全な?」
「今までは・・・」
最初は床の間を改造した程度の部屋だった。
一応、申し訳程度のカーテンで仕切られていた。
「元が床の間だからさ」
「狭そうね・・・」
狭いと言うより、机を置くのがやっとだった。
そもそも“部屋”と呼べるようなものでもない。
「姉はさぁ、先に生まれたということもあって」
部屋が与えられていた。
まぁ、女子だということも理由のひとつだとは思う。
「弟さんも居たよね?」
「うん、いるよ」
弟が物心付くころにあわせて家を増築した。
増築と言っても、父親手作りの部屋だ。
「それでもようやく・・・って感じ」
「わかる、わかる」
弟と同部屋だったから、個室ではなかった。
けど、嬉しかったのは覚えている。
「で、高1のとき・・・」
家を建て替えることになった。
「それで初めて個室が・・・ってことね?」
「そう!」
大袈裟だけど、自分の城を持てたような気分だった。
ところが・・・。
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