« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »

2021年2月

[No.1034-1]水道水

No.1034-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
僕らの時代の学校“あるある”だと思う。
自信はないが・・・。

「最近はマイボトルが多いよね」
「私もそうよ」

昔々はボトルではなく水筒だった。
根本的には同じものだが、おしゃれ度も性能も異なる。

「僕らの時代は透明の水筒が流行でさ」
「透明?タッパみたいね」

そう・・・用途は違うが質感はまさしくそれだ。
中身が丸見えで、ある意味便利だった。

「マイボトルの話なの?」
「あっ!じゃないよ」

少し話が脱線してしまった。
同じ水物には変わりはないが・・・。

「小学生の頃とかさぁ」
「喉が渇いたらどうしてた?」

今なら自販機やそれこそマイボトルだ。
でも、当時はそうはいかなかった。

「水筒は?」
「持ってたけど・・・」

身近で手軽なようでそうでもなかった。
水筒は特別な存在だった。

「だから、学校に持って行くのは珍しかったんだ」

夏場にほんの数日程度、持っていった。
カチコチに凍らせて。

「凍らせて?」
「夏場の定番だよ」

ただ、保温能力もなく、タオルで包む程度だった。

(No.1034-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1033-2]小バエの憂鬱

No.1033-2

「お風呂場の水しぶきにも耐えてさぁ」

この場所が好きなのかそれとも・・・。

「行き場所がないようにも見えた」
「なるほどね」

友達が何かを悟ったようだった。

「小バエに自分を重ねた?」
「・・・どうだろう」

曖昧な返事をしたのは認めたくないからだと思う。
小バエはまさしく今の自分そのものだ。

「それにしても・・・」
「すごいものに例えたね、自分を」

その言葉に思わず吹き出しそうになった。
確かに例えたものが・・・小さい。

「でも、あなたらしいよ」
「褒めてる?」

でも、私は小バエに何を重ねたのだろうか?
分かっているようで分かっていない。

「悩み多い年ごろじゃん!」
「それで片付けるの!?」

そう言えば長風呂した時に、フッと目にとまった。

「その時、色々考えてたのね」

小バエだって・・・考えるよ。
S1033
(No.1033完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1033-1]小バエの憂鬱

No.1033-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
時々、お風呂場に現れる一匹の小バエ・・・。

「・・・朝からする話?」
「いいじゃん、べつに」

どこから来てどこに行こうとしているのか?
真剣に考えることがある。

「頭でも打ったの?」
「失礼ね!どこも打ってないわよ」

とは言うものの・・・。
そう思われても仕方ないのは理解している。

「あえて答えるなら、排水溝から来て・・・」

そんなの言われなくても分かっている。
生態は調査済みだ。

「それなら何で悩んでるのさ?」
「いいじゃん、べつに」

本日、2回目のセリフだ。

「まぁ、いいわ」
「で、その小バエはどうなったのさ?」

数日間、お風呂場の壁でじッとしていた。
その後、姿が見えなくなった。

「どこかに飛んで行った?」
「かもしれないし」

死んでしまったのかもしれない。
まぁ、そう考えるのが妥当だろう。

(No.1033-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.457

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.592 妄想の縮図
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

似ても似つかないものを結び付ける・・・この小説は冬のホタルの“あるある”です。

実話ベースとは言え、すべての小説が実話度100%というわけではありませんから、冬のホタルは妄想の塊の小説と言っても言い過ぎではありません。
目の前の何気ない日常と“何か”を結び付け、そこに色々な想いを乗せるのが冬のホタル流です。その“何か”の中には結構ドロドロとしたものが含まれています。

今回の小説は水鳥の群れを人間界の縮図として捉えています。偶数ではなく奇数という点もポイントです。一人、三人・・・これだけでドラマが見えます。
ひとりぼっち、三角関係・・・これが今回の小説の隠された主軸です。まぁ、それほど隠してはいませんが・・・。水鳥たち眺めながら、いつもそんなことを考えていました。

ちなみに会社の近くの小川は実在しています。ベンチもありますが、さすがにランチまでは実現していません。
そうそう!この手の小説でよく登場するのが、ハトです。ハトも私にとっては特別な存在なんですよ。
T457
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1032-2]卵かけごはん

No.1032-2

「ところが・・・」

就職して初めて親元を離れ寮生活を始めた。
その時・・・。

「“初めて知った!”んだ?」
「それはそうなんだけど・・・」

確かにその時、知った。
でもそれ以前にある問題が僕の前に立ちはだかった。

「問題?」
「ほら、よく考えてみてよ」

僕は生卵を使った卵かけご飯を知らなかった。
ダメ押しすれば見たことも聞いたこともない。

「・・・あっ!」
「だろ?」

寮生活の初日の朝に、生卵が用意されていた。

「何なのこれって?」

ゆで卵と間違えずに済んだのは幸いだった。
戸惑う僕を尻目に他の人たちが食べ始めたからだ。

「それも躊躇なく、卵を割ってさ・・」
「それはビックリするかもね」

そこから僕の人生は変わった。
こんなに美味しい食べ方があることを知ったからだ。
S1032_20210211225601 
(No.1032完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1032-1]卵かけごはん

No.1032-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「朝は卵かけご飯でいいの?」

答えは決まっているけど一応聞いてくれる。
その気遣いが嬉しい。

「もちろん!」
「ほんと好きだね」

逆に嫌いな人が居るのだろうか?
もちろん、卵嫌いな人は別にして。

「でもさぁ・・・」
「なぁに?」

この卵かけご飯には色々と思い出がある。

「思い出?」
「あぁ、実は・・・」

僕の実家の卵かけご飯は目玉焼きだった。
それをご飯の上にのせて混ぜる。

「生卵じゃないんだ!?」
「そうなんだけど・・・」

そもそも卵かけご飯が生卵だとは知らなかった。

「えっ・・・どういうこと?」
「そういうこと」

今でこそ“TKG”だが、当時の世はそんな欠片もなかった。
だから、他の家庭の事情なんて知る由もなかった。

(No.1032-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1031-2]門出の言葉

No.1031-2

「はい!これでどう?」

そこには“卒業式で言うやつ”と入力されていた。

「なんだよ!?まんまじゃないか!」
「だからそう言ったでしょ」

(あっ!そうだった)

「それより、結果はどう?」

早速、答えが出てきた。
それも検索結果の一番上に。

「あはは!みんな同じなんだね」

どうやら地方によっていくつかあるらしい。
でも、僕はこれだったと思う。

「どれ?」
「この“門出の言葉”だよ」

自信はない・・・でも、直感的にそう思う。

「それはそうと・・・」
「で、その一言ってなに?」

そうだった・・・肝心なことを話していない。

「あぁ、そうだったね」
「それはね、“6年生の皆さん!”だよ」

今でも鮮明に覚えている。

「まぁ・・・あれだね」

彼女の反応がイマイチなのも記憶に残りそうだ。
S1031
(No.1031完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1031-1]門出の言葉

No.1031-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今でも鮮明に覚えている一言がある。

「えー!それってフラれた時の?」
「なんでそうなるんだよ・・・」

どうやら僕はそういうキャラらしい。
いつもこんなパターンから話が始まる。

「ほら、小学生の時、あっただろ?」
「なんて言えばいいのかな・・・」

卒業式に卒業生と言葉の掛け合いを行うアレだ。
ただ、その名前が分からない。

「バカね!そんなのググれば一発じゃん!」

そんなことは僕でも分かっていた。

「え~っと・・・」
「だろ?」

どんな文言を入れてググればよいか分からない。
だからこそ、困っている。

「・・・そうだ!」

彼女が何かひらめいたようだ。

「まんまでいいじゃん!」
「まんま!?」

まんま・・・とはどういう意味なんだろうか?

「ちょっとスマホ貸して!」
「えっ!?あ、うん・・・」

この際、小さなことは気にしないようにしよう。

(No.1031-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.456

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.539 映画監督
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

タイトルを見て「こんな小説を作ってたんだ・・・」と正直思いました。もちろん、どんな話か読み返すまで分かりませんでした。

この小説の主軸ではありませんが、冒頭の「よく5年も・・・」のセリフが示す通り、この時点では小説を書き始めて5年目だったんでしょうね(笑)実話をベースにしているだけあって、時々現実で小説を書いている話が登場します。

さて、話の主軸では、とあるブロガーさんのことを小説にさせていただいています。残念ながら現在は辞められていますが当時は随分と楽しませていただきました。
ブログを続ける難しさ・・・特に現在はツイッターやインスタなど気軽に投稿できるものが主流の中、もはやブログは・・・なんて思うことがあります。趣味と言うより、半分仕事感覚で今も続けているのは小説に書いてある通りです。

そのとあるブロガーさんは写真がメインで、そこに一言二言、言葉が添えられています。偉そうですが、私が文字で何かを伝えようとしているとすれば、その方は写真で・・・ということになるのかもしれません。
そこに喜びや悲しみが表現されており、辞められる直前にはとある写真に迷いを感じました。

実はブログは続けるより、辞める勇気の方が必要なのでは?と思っています。プロスポーツ選手のように、ある種の限界を感じたら潔く・・・今の自分に必要な勇気かもしれません。
T456
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1030-2]決定的瞬間

No.1030-2

「まぁ・・・偶然という点では似てなくはないけど」

言い換えれば、決定的瞬間というものだ。
さっきの1枚だってそう見れるものじゃない。

「何だか分かったような分かんないような・・・」
「私もそんな感じ」

話を広げておいて無責任だとは思う。
でも、そんなことでも話題にしたくなる日もある。

「やっぱり何かあったでしょ!?」
「何もないわよ」

でも、心に何か引っ掛かるものがある。

「それならいいけど・・・」
「最近、忙しいそうだったから心配だよ」

確かにそうだった。
大規模なプロジェクトをチームのみんなと無事にやり遂げた。

「まぁ、リーダーがあんなイケメンなら」
「あなたじゃなくてもやる気が出るわよ!」

そうだった・・・忘れてた。

「忘れてた?ほんと大丈夫?」

そう言えば彼に企画書を褒められ、重要な仕事も任された。

「もしかして・・・あなた・・・」
「ん?なに?どうしたの?」

同僚に指摘され気付いた。
私はその瞬間に恋に落ちていたんだと。
S1030
(No.1030完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1030-1]決定的瞬間

No.1030-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
時に人は、何でもないことに想いを寄せることがある。

「今日、さぁ・・・」
「カラオケ?それともこっち?」

握った拳をクイッ!と上にあげる。

「どっちも違うわよ」
「えぇ~また合コン?」

早めに答えを言ってしまおう。
話がややこしくなる前に。

「ほら、廊下の掲示板に色々貼ってあるじゃない?」
「ん?あぁ・・・そうねぇ・・・」

同僚のテンションが急に下がったのが分かる。
でも、逆にその方が都合が良い。

「その1枚がね・・・」

何気なく掲示板を見た時、剥がれ落ちた。
その瞬間を目撃した。

「えっ!?どういうこと・・・」
「・・・というか、何の話?」

予想できた展開だ。
自分でも何を話しているのか、よく分かっていない。

「ちょっと大丈夫?」
「・・・うん、大丈夫よ」

何気なく時計をみたら、11時11分11秒だった・・・。
それとよく似ている。

(No.1030-2へ続く)

| | | コメント (0)

« 2021年1月 | トップページ | 2021年3月 »