[No.1027-2]元日の朝
No.1027-2
「それが出発式なのね?」
「そう!元旦にさぁ・・・」
それこそ1月1日の朝から、バリバリ働くわけだ。
それが全くと言っていいほど苦にならない。
「年賀状を心待ちにしてる人もいてさ・・・」
玄関先で声を掛けられたり、時には嬉しいことも起きた。
「もしかして・・・」
「まぁ・・・ね!」
特に年配の人から、お年玉をもらうことも少なくなかった。
額ではない・・・その気持ちが嬉しかった。
「なんかさぁ・・・人の役に立ってると実感したよ」
「なんだか楽しそうね!」
だから、高校3年間の元旦は、ずっと働いていたことになる。
もちろん、元旦だけではなく、長期の休みはずっと。
「最後には“ここに勤めたら?”とも言われたよ」
「あはは、分かる!分かる!」
もちろん、丁重にお断りしたからこそ今の僕がある。
けど、それでも良かったのかも・・・と今でも考えなくもない。
「バイトから社員へ、そして社長になんてこともあるよね?」
「サクセスストーリ-には」
確かにない話ではない。
「あなたにとっては、出発式は特別なのね?」
「そうだな、ちょっとこみ上げてくるものさえある」
局員に媚を売るわけでもなく、認めて欲しかったわけでもない。
ただただ我武者羅に働いた。
「それが青春よ!」
その時代に戻りたくなる時がある、何もかも忘れて。
(No.1027完)
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