[No.1019-2]田舎と田舎
No.1019-2
「私はいつか戻ってきたいな」
「えっ!?ここに?」
友人が小さくうなづく。
「東京と比べたら・・・」
「何と何を比べるの?」
逆に友人が質問してきた。
もとは私が聞き始めたことなのに。
「それは・・・建物とか・・・」
「そんなの比べてたら、東京だって」
上には上が居る・・・そう言いたげだった。
確かに世界では東京だけが際立っているわけじゃない。
「なにもないのが田舎だとしたら」
「少なくともこの町は田舎じゃない」
なぞなぞのようでもあり、禅問答のようなセリフだ。
「この町は色々なモノで溢れている」
「色々なもの?」
一応、疑問符で返したが、何となく分かる気がする。
「分かってるくせに」
「・・・」
何もないはずの地元で、中学の同窓会が開かれた。
「今日だけじゃなく、たまには戻って来たら?」
「・・・うん、そうする」
この町には都会で失ってしまったモノで溢れている。
(No.1019完)
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