[No.1016-2]本当の月
No.1016-2
「初めてだよね?こんなこと」
「あぁ、確かに」
陽のかげりや植物の成長度合い・・・。
それに、ここを通る時期や時間。
「いろんな偶然が重なったんだろうな」
「そうだろうね」
まるで、スクリーンに映し出された月を見ているようだ。
「その表現、良いんじゃない?」
「そ、そうだな!」
木漏れ日が作り出した、偶然の産物。
脳裏だけではなく、記録として残しておきたい。
「写真撮っておく?」
「うん、そうしよう!」
木漏れ日だけを写真に収めた。
その家の持ち主に迷惑が掛からぬように。
「写真に撮ると、余計に引き立つね」
「ねぇ・・・」
彼女が言葉を続けようとする。
その続きとして何を言いたいか、分かっているつもりだ。
「もう少し、粘ってみる?」
「そうこなくっちゃ!」
そうこうしているうちに、月の色が変わり始めたからだ。
「だんだん赤くなってきたね!」
「神秘的だな」
そしてその月は消えた。
でも空には、本当の月が見え始めてきた。
(No.1016完)
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