« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »

2020年11月

[No.1018-1]歩きスマホとあの香り

No.1018-1 

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「もう・・・しなくなったね」
「そうだな」

数日前まではあんなに独特の香りを放っていたのに。
相変わらず時の流れは早い。

「覚えてる?」
「もちろんだよ」

3年前の今頃、私たちは付き合い始めた。
そのきっかけにあの香りも含まれている。

「あの時さぁ・・・」
「ほんと・・・笑っちゃうね!」

私たちは衝撃的な出会いを果たした。
それはもう・・・かなりの衝撃だった。

「あはは!」」
「まさしくそうだったな」

あの時、歩きスマホでぶつかってしまった。
お互いスマホに夢中だった。

「見てた動画も同じだったと言う偶然・・・」
「それな!」

それこそ運命的な出会いを感じた。
ドラマのような展開が、今、起きていると。

「で、あの香りもしてた・・・と」
「だね!」

あの花の香りは今でも忘れることができない。

(No.1018-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1017-2]私の足元に

No.1017-2

「へぇ~そうなんだ」

家では焼き栗が主体だったと思う。
ただ、天津甘栗を買ってくる程度だし、私は好んで食べない。

「家で蒸すの?」
「もちろん!」

それからも色々と話してくれた。
蒸し栗にまつわる話を。

「普通のスプーンじゃ食べにくいから」
「ふちがギザギザのタイプを使うんだ」

そのスプーンのことは分かる。
家にもあったからだ、グレープフルーツ用として。

「ところで・・・どうして栗の話題をしたの?」
「やっぱり、このケーキ?」

質問が的外れなのは分かっている。
なにせ、モンブランと気付いていなかったのだから。

「どうだろう・・・無意識というか」
「秋だからかな?」

確かに季節的にはそうだと思う。

「まぁ・・・とにかく、一口食べてみる?」
「ごめん!クリームになった栗は苦手で・・・」

なるほど・・・だから注文しなかったんだ。
私は逆に、クリーム以外の栗は苦手だ。

「特に蒸し栗なんてダメかも」
「なんか・・・木の実、そのままって感じがする」

今も私の足元に似たようなものがいくつも落ちている。
これが目に入ったのかもしれない。
S1017
(No.1017完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1017-1]私の足元に

No.1017-1 

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「最近、栗、食べた?」
「くり?」

彼が突然、話題を変えてきた。
さっきまで、ドラマの話をしていたのに。

「て言うか、これも入るの?」

今、私はモンブランを食べている。
これも立派な栗だと思う。

「あぁ・・・そ、そうだな」
「どうしたの、急に?」

雰囲気からして、この手の栗ではないことは分かる。
多分、普通の形ある栗のことだろう。

「もしかして、天津甘栗みたいな?」
「そうだな、そっち系」

そっち系と言われても他に何かあるのだろうか?
せいぜい、焼き栗程度しか思い付かない。

「他に何があるの?」
「子供の頃はさぁ・・・」

彼が随分昔のことを話し始めた。
時を小学校の運動会まで巻き戻している。

「ほら、蒸し栗って言えばいいのかな?」
「焼かずに蒸すやつ」

蒸し栗・・・知ってはいるが、食べたことはない。
そもそも、栗を食べる習慣がなかった。

「家なんか、結構、食べてたよ」
「さっき話した運動会の時とかは必ず」

他にも秋の行楽には欠かせなかったらしい。

(No.1017-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.449

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.438 天使と悪魔
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

実際にネコがうずくまっていたのは事実です。少し記憶は曖昧ですが、2、3日は同じ場所に居たような記憶があります。

ネコが題材になっている話は数多くあります。作者がネコ好きということもありますが、野良ネコと出会う機会が多いことも理由のひとつです。
最初、怪我か病気でもしているのかと思いましたが、見た目は単に休んでいるようでした。窮屈な場所が好きな彼らですからその空間がお気に入りかな?とも思っていました。ただ、近づいても余りにも無反応で、それが小説のきっかけとなりました。
従って、シチュエーション的にはほぼ事実です。

後半になればなるほど実話度が薄まりラスト付近は創作です。さすがに、そんな都合の良い友人はいません。
これについては多少、テレビなどの影響を受けているんでしょうね。保護ネコを扱ったテレビ番組を私も何度も見ています。
その願望を文字として、小説として書いたものと言えますが、逆に自分の弱さを書きたかったのかもしれません。
「怪我や病気なんかしてなくてきっと元気に違いない」と思ったのは、もしかしたらその場を立ち去るために言い訳だったのではないかと思っています。
T449
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1016-2]本当の月

No.1016-2

「初めてだよね?こんなこと」
「あぁ、確かに」

陽のかげりや植物の成長度合い・・・。
それに、ここを通る時期や時間。

「いろんな偶然が重なったんだろうな」
「そうだろうね」

まるで、スクリーンに映し出された月を見ているようだ。

「その表現、良いんじゃない?」
「そ、そうだな!」

木漏れ日が作り出した、偶然の産物。
脳裏だけではなく、記録として残しておきたい。

「写真撮っておく?」
「うん、そうしよう!」

木漏れ日だけを写真に収めた。
その家の持ち主に迷惑が掛からぬように。

「写真に撮ると、余計に引き立つね」
「ねぇ・・・」

彼女が言葉を続けようとする。
その続きとして何を言いたいか、分かっているつもりだ。

「もう少し、粘ってみる?」
「そうこなくっちゃ!」

そうこうしているうちに、月の色が変わり始めたからだ。

「だんだん赤くなってきたね!」
「神秘的だな」

そしてその月は消えた。
でも空には、本当の月が見え始めてきた。
S1016
(No.1016完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1016-1]本当の月

No.1016-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁ・・・見て見て!」
「な、なんだよ!?、急に・・・」

彼女がとある家のシャッターを指差した。
多分、ガレージのシャッターだろう。

「シャッター・・・だよね?」
「もぉ!鈍感ね!」

前触れもなく、急にシャッターを指差された。
それでこの言われようだ。

「おいおい、そりゃ、ないだろ?」
「どう見たって、普通の・・・」

・・・と言いかけて気付いた。
なるほど・・・そういうことか。

「この木漏れ日のことか!」

シャッターに木漏れ日が当たっている。
その形がなんとも珍しい。

「すごいよね!」
「偶然とは言え」

それは1メートルくらいもある丸の形をしている。
まるで何かのオブジェクトのようだ。

「お月様みたいね!」
「まぁ、そうだな」

太陽と言うより、そっちの方が確かに似合う。

「それにしても・・・」
「こんな真昼間のこんな住宅地で」

それに歩きなれた道だ。
数百回は通っている。

(No.1016-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1015-2]くすぐったい

No.1015-2

「わかってるよ」

枯れ始めてきたとは言え、まだ新しい命も芽生えている。
なんとも植物はたくましい。

「ほら、このツルなんて生き生きしてるぞ」
「ほんまや!」

落ち葉拾いのつもりが観察に変わる。
今日もこのパターンだった。

「動物よりもかわいいかもな」
「それは言えてるぅ!」

モノは言わなくても、こうやって触れ合うことができる。
実際、くすぐられて癒されもした。

「命は決して長くはないけど」

樹木ではない限り、時期が過ぎれば枯れてしまう。

「でも、来年も新しい命に出会えるやん!」
「・・・だよな!」

たかが植物に大袈裟な表現が飛び交う。
でも、されど植物・・・だとも言える。

「枯れてしまうまではちゃんと育てような!」
「もちろんやで!」

だからこそ、こうして水をあげている。
命が尽きると分かっていても。

「じゃ、もうひとふんばりしますか!」

もう一度、落ち葉を拾い始めた。

「ひゃぁ~、またツルがうなじにあたるぅ~」

でも、それが彼女のイタズラだと後で知った。
S1015
(No.1015完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1015-1]くすぐったい

No.1015-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なんだよ~くすぐったいだろ?」
「なにひとりで、じゃれてるねん!」

彼女はやや離れた位置で花に水をあげている。
・・・ということは。

「まさか・・・」
「お化けちがうわ!」

“まさか”の一言だけでも適切なツッコミが入る。
さすが関西人だ。

「・・・だろうね」
「じゃぁ、誰だよ?」

その言葉は本当だ。
さっき、僕のうなじを誰かがやさしくなでた。

「誰じゃなくて、これやがな!」
「あぁ、やっぱり?」

まるっきり本気でボケたわけではない。
多少、余白を残した方が話が盛り上がりやすい。

「そりゃ、そうやろ!」
「この細いツルが触れたんや」

僕は僕でプランターの植物をじっくり観察中だった。
だから、そのツルに気付かなかった。

「それにしても、くすぐったかったよ」

しなやかに伸びているツルに触れてみた。
確かに、くすぐったくなる要素が満載だ。

「そんなことより」
「落ちた葉っぱとか拾っといてな!」

冬を目の前にして、本格的に植物たちが枯れ始めてきた。
それに伴い、落ち葉も増えて行った。

(No.1015-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.448


小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.411 交錯する季節
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

前回のホタル通信に引き続きオチがいまいちハッキリしない小説です。随分前に作った小説なので記憶も曖昧になっています。

さて、もう時期は過ぎましたが、少し前まではキンモクセイの香りが漂っていましたね。香りに気付き、周りをキョロキョロ・・・いつもそんな感じで、季節の変わり目に出会っています。
小説に書いてある通り、いつも花の名前を思い出せず、一旦、沈丁花と勘違いした後に、キンモクセイの誤りだと知ります。「いい加減、覚えろよ!」と自分で自分に突っ込みを入れています。

特に尖った話ではなく、冬のホタル特有の超日常な展開です。
そこに、ほんの少し、甘い話を入れているのも、冬のホタルの特徴とも言えますね。最近はその傾向も変わってきましたが、その昔は何でも恋愛話に結びつけていました。
今回のオチは分かりますか?ちょっと自信はないのですが、記憶を辿ると以下のような感じです。

彼とは付き合って1年目・・・でもキンモクセイの話は付き合う前からしていた。つまり、以前は元カレとしていたと言うことです。
それが「去年は聞いてないからな」のセリフです。
そして「来年も聞かせろよ」のセリフは遠回しに、来年も付き合っていたい・・・でも「あなた次第じゃない?」と、彼に軽くジャブを打つ・・・これがオチの真相です。

キンモクセイが香る時、それぞれドラマが始まったり、終わったりしているのでしょうね。
T448
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1014-2]青臭い(裏)

No.1014-2

その男子はすれ違いざまに、私をチラッと見る。
そして、背筋を伸ばす。

「・・・のように見えるだけだろ?」
「別の何かを見てるのかもしれないし」

確かに自意識過剰なのは否定できない。
今までの話はあくまでも私の主観に過ぎない。

「でも、すれ違う時は必ず・・・」
「たまたま・・・ってこともあるだろ?」

そう言われれば元も子もない。

「自転車に乗ってるんだから」
「腰が痛くなったりするだろうし」

一点だけを見つめて漕ぐ人もいない・・・と言わんばかりだ。

「・・・そうかも」
「ただな・・・」

どうやら続きがあるらしい。

「興味は持ってるかもな」
「もしかして、それを恋とは気付いていないのかも」

ここに来て、急展開した。
それが本当なら、それほど悪い話でもない。

「でもよ、そいつのこと好きなの?」
「だってすれ違うだけなんだろ?」

まぁ、向こうから声を掛けてきたら考えなくもない。
S1014
(No.1014完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1014-1]青臭い(裏)

No.1014-1  [No.1013-1]青臭い(表)  

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「ねぇ、どう思う?」
「そうだなぁ・・・」

最近、あることが起こり始めた
通学途中にすれ違う男子とやたら目が合う。

「教えてよ、同じ男子でしょ?」
「うーん・・・」

あまり真剣に考えてはいない素振りだ。
もしかして・・・。

「そもそも興味がない?」
「うーん・・・」

一向に話が前に進まない。
やはり、男子に聞いたのが間違いなのだろうか?

「多分、多分だよ?」
「えっ!なになに!」

ここ最近は毎日のようにすれ違っている。
もちろん、そうなるように私が合わせているわけではない。

「向こうが意識しているのかもしれない・・・し」
「やっぱり!?」

私から何らかのアピールをしたことはもない。
けど、最後の“し”が気にならなくもないが・・・。

「意識してないのかもしれない」
「なにそれ!?」

結局、分からないってことだ。

(No.1014-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1013-2]青臭い(表)

No.1013-2

彼女はすれ違いざまに顔を赤らめる。
そして、髪を整え直す。

「・・・のように見えるだけかもしれないじゃん!」
「くせで髪を触ってるだけかもしれないし」

確かに冷静に考えればそうかもしれない。
今までの話はあくまでも僕の主観に過ぎない。

「でも、すれ違う時は必ず・・・」
「たまたま・・・ってこともあるよね?」

そう言われれば元も子もない。

「自転車に乗ってるんだから」
「髪だって多少乱れるし」

漕いでるから顔も赤らむ・・・と言わんばかりだ。

「・・・だよな」
「でもね・・・」

どうやら続きがあるらしい。

「意識はしてるかもね」
「もしかして、それを恋と気付いてないかも」

ここに来て、急展開した。
それが本当ならうれしい。

「けどさぁ、あんた彼女のことが好きなの?」
「だってすれ違うだけなんでしょ?」

そこから始まる恋もある・・・偉そうだけど。
S1013 
(No.1013完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1013-1]青臭い(表)

No.1013-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なぁ、どう思う?」
「そうねぇ・・・」

一種の通学途中“あるある”かもしれない。
でも・・・期待度はMAXだ。

「教えろよ、同じ女子だろ?」
「うーん・・・」

イマイチ、煮え切らない態度だ。
もしかして・・・。

「はっきり言ってくれよ!」
「うーん・・・」

一向に話が前に進まない。
やはり、“脈なし”ってことだろうか?

「多分ね・・・多分だよ?」
「おっ!・・・うん」

通学中に別の学校の女子とすれ違う。
お互い自転車だから、その時間は短い。

「好きかもしれない・・・し」
「えっ!?やっぱり!」

思わず歓喜の声が出てしまった。
けど、最後の“し”が気にならなくもないが・・・。

「好きじゃないかもしれない」
「な、なんだよ、それ!?」

結局、分からないってことだ。

(No.1013-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.447

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.410 スニーカー
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

実話度が示す通り、ほぼ創作です。もちろん、話のきっかけとなるスニーカーや足のサイズについては事実です。

足のサイズは大人になってからは、ずっと変わらなかったのにある時、サイズが小さくなっていました。これを面白おかしく切り取ってみました。ただ、あえて書けば、設定上、29歳となっていますが、実際の年齢はそうではありません。そこはご想像にお任せします・・・と言うのが冬のホタルの決まりです。

さて、ほぼ創作なので、そこにリアルな事実は隠されておらず、前述した面白おかしく話を進めています。
「足が小さくなる」を「胸」にも引っ掛けているのは、まぁ、よくあるパターンの展開ですね。友人と小競り合いをするように話を進め最後にオチを持ってきています。
オチの部分も創作なので「選んだスニーカーは真っ黒に銀色のドクロマーク」は事実ではないものの、全く似ても似つかないものを買ったわけでもありません。これも前述した面白おかしく話を締めくくるための演出です。

自分で言うのも変ですが、特に何かを主張したいわけでもなく、何かを狙っているわけでもなく、ただただコミカルに展開していきます。最近の小説も割とこんな感じなものが多いですね。
T447
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1012-2]役に立ってる?

No.1012-2

「そうね・・・特に理由はないかな」
「えっ!?無いの!」

あなたが居れば落ち着く・・・そんな言葉を期待していた。

「それなら、居なくてもいいじゃん!」
「勉強では役に立たないわけだし・・・」

色々考えると、だんだんと腹が立ってきた。

「何だかイライラしてきたよ」
「・・・ねぇ、聞いてる!?」

気付けば私一人がしゃべっている。
その間にも友人は参考書片手に勉強中だ。

「もぉ!ねぇーってばぁ!」
「ちゃんと聞こえてるわよ」

表情ひとつ変えず、返事を返してきた。

「もぉー!私帰っていい?」
「それだけはダメェー!」

席を立とうとした私の腕をつかんできた。

「邪魔でしょ?」
「こんなうるさい私なんか・・・あっ!」

その時、気付いた。
それは、友人も同じだった。

「何だか分かったみたい」
「ごめん・・・私も」
S1012
(No.1012完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1012-1]役に立ってる?

No.1012-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「こんな所でよく勉強できるわね?」
「そう?逆にこんな所じゃないと出来ないの、私」

反対に、私は絶対に無理だ。
勉強するなら究極に静かな環境がいい。

「家に居るときはどうしてるの?」
「スマホで音楽を鳴らしてる」

私なら、うるさいことに加えて聞き入ってしまう。
つまり・・・勉強など到底できやしない。

「そんな環境でよく集中できるわね?」
「本当はもっとうるさくてもいいけどね」

これを集中力と言っても良いのだろうか?
ある意味、超鈍感とも言えなくもない。

「けど、成績は上位なんだよな・・・」
「えっ?なんか言った」

なるほど・・・うるさくても集中しているわけだ。
それなら、静かでもいいのにと思ってしまうが。

「聞いているけど聞いてないの!」
「何だかよくわかんないよー!」

それにしても友人の勉強に付き合わされる私が居る。
もちろん私は勉強しない・・・というよりできる環境にない。

「なんでわざわざ私を誘うのさ?」

少なくとも勉強ではお役に立てない。
成績は友人よりもはるかに下だからだ。

(No.1012-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1011-2]親孝行と親不孝

No.1011-2

「親不孝であって親不孝じゃない?」
「ほんと禅問答だよ、それ」

その親子を見てあることに気付いた。
そんな息子でも母親は終始笑顔だった。

「子供は親不孝なことしても」
「親はそうは思っていない・・・ってことね?」

まさしく友人の言う通りだ。

「逆に少しくらいなら・・・」
「親不孝であった方が良かったのかもしれない」

私は真逆に育ってしまった。
親に迷惑を掛けないことが親孝行だと。

「それが距離を作ってしまった原因だったのかも」

迷惑を掛けまいと、ろくに連絡もせず生きてきた。
それが親孝行と信じて。

「親孝行な娘は実は・・・」
「そう、親不孝でもあるってこと」

もちろん、人それぞれだとは思っている。
けど、あの親子のようなシーンを何度も見てきた。

「まぁ、後悔しても遅いんだけどね」

親不孝も親孝行も、する対象者はもう居ない。
1年前に気付けば何とかなったものの。

「でもご両親はそう思っていないんじゃない?」
「だって、自分の娘だもん!分かってるわよ」
S1011
(No.1011完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

« 2020年10月 | トップページ | 2020年12月 »