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2020年10月

[No.1011-1]親孝行と親不孝

No.1011-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、聞いていい?」
「ん?何を?」

最近、ある疑問が湧いてきた。
本当は疑問ではなく後悔という言葉の方が似合う。

「親不孝って何だと思う?」
「えー!?急になにぃ!?」

私は大きな勘違いをしていたのかもしれない。
親不孝の意味を・・・。

「ごめん、なんか重い話をして・・・」
「構わないけど急だからビックリしちゃって」

数日前にある親子を見掛けた。
親子と言っても、若い親と小さな子供ではない。
中年の母親と20代くらいの息子らしき子供のことだ。

「その親子がどうかしたの?」
「うん・・・」

主観で申し訳ないが、すねかじりに見えた。
根拠は何も無いが。

「もしかして自分もそうだから?」
「つまり・・・それが親不孝の質問ってこと?」

当たってもいるしハズレてもいる。

「そうね、ただ・・・」

親不孝であって親不孝ではない。
禅問答のようで申し訳ないが。

(No.1011-2へ続く)

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ホタル通信 No.446

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.408 黄色い電車
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

最初に、お詫びしておきます。ホタル通信では小説の舞台裏などを紹介するはずなのに、肝心の・・・オチの意味が分かりません。申し訳ございません。

最初に、場所や景色は実在しており、かつて線路があった土手が道路に変わったこと、そしてタイトルでもある黄色い電車のうわさも事実です。そうそう、牛が放し飼いにされていたのも本当なんですよ(笑)
その昔、実家のすぐ近くに大きな川が流れており、その川沿いの土手に線路が通っていました。とは言え、そこに電車(正確には汽車)が走っていた姿を一度も見たことはありません。線路の言わば終点にあたる所に、何らかの工場があり、そこに資材を運んでいたそうです。もしかしたら、これらの事実だけで場所が特定できるのかもしれませんね。

さて、内容は幼馴染とのやりとりを描いたものですが、これについてはほぼ創作で、実際にこのようなやりとりがあったわけではありません。
振り返れば、黄色い電車のうわさを何とか恋愛話に結び付けようとして、失敗してしまったような出来栄えです。そのため、読んでいて、何だかストレスを感じます、自分で作っていながら。
そのため、オチの部分である「地元を離れて~ある噂が広まっていたことを」のうわさが何であるか、覚えていません。
無理やり考えれば「黄色バスを見かけると幸せになれる、告白が成功する」なんて感じでしょうか?

最後に黄色い電車なんですが、現実世界では見たことはないのですが、一度夢の中に出てきたことがあります。それが何を意味しているのかは分かりませんが。
T446
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[No.1010-2]何がなんでも

No.1010-2

「ただね・・・僕にとっては大金でも」

当時のおもちゃは今よりも値が張ったのかもしれない。
本当に欲しいものは、千円程度では到底買えなかった。

「だから、結構苦労したんだぜ」
「千円で買える、そこそこ欲しいものを買うのに」

その結果がこれだ。
謎のキャラクターだけに、安かったのかもしれない。

「結構、深い話ね」
「・・・かもな」

そのプラモデルがなぜか、今も残っている。
特に大事にしているわけでもないのに。

「逆に今なら“お宝”かもね!」
「なるほど!可能性はあるな」

とは言え、新品未開封ならまだしも、使用感が半端ない。
傷だらけで、一部、ヒビ割れもしている。

「今でもこれを見るとさぁ・・・」
「何だか胸が苦しくなって」

その理由はひとつではないと思う。

「色んなものが買えるようになった今だから」
「余計にそう感じるのかもしれないな」

そのプラモデルは自分に対する戒めなのかもしれない。
そう言う気持ちを忘れないように・・・と。

「調べてみる?このキャラクターが何か」
「いいや、謎のままでいいよ」

当時の気持ちを忘れないためにも。
S1010
(No.1010完)
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[No.1010-1]何がなんでも

No.1010-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これなに?」
「見ての通り、プラモデルだよ」

確か、小学生の頃に作ったものだ。

「何のキャラクターなの?」
「さぁ・・・何だろうね」

彼女をだましているわけではない。
本当にそれが何のキャラクターか知らない。

「知らないで買ったの?」
「うん、知らないで買った」

年に数回、母親にデパートに連れて行ってもらった。
もちろん、僕だけのためではない。

「その時に、何か買ってもらえるんだけど・・・」

買ってもらえると言っても、何でもと言うわけではない。
そこには暗黙の了解のようなものがあった。

「暗黙の了解?」
「あぁ、上限は千円程度だったかな」

だとしても、当時の僕には大金だった。
それに、少なからず家計にも影響があったと思う。

「それなら買わなきゃいいじゃん?」
「そうは行かないさ!」

そんなチャンスは滅多にないからだ。

「だから、何でもいいから使わないと!って感じで」
「ふ~ん・・・」

何とも説明し難い。
とにかく、何でもいいから買わなくちゃ・・・の精神だった。

(No.1010-2へ続く)

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[No.1009-2]突き抜ける空

No.1009-2

「今日、あの空の辺りに行ってみない?」
「いいね、それ!」

遠いと言っても、自転車なら行ける距離だ。
それに、ふたりの帰り道の方向にも近い。

「何か出来るのかなぁ~?」
「ビルが建ったりして!それも超高層の!」

そうなるとまた殺風景な景色に逆戻りだ。

「まぁ、その可能性は大いにあるわね」
「それも含めて確認しに行きましょ!」

個人的には公園でも出来ていれば最高だ。
ここからは到底見えないけれど。

「なんだか、ワクワクしてきたね!」
「ほんと、授業を受けている場合じゃないかも」

特に今は退屈な科目だ。
先生の声なんて、全然耳に入ってこない。

「けど、なんで最近まで気付かなかったんだろう?」

確かにそう言われてみるとそうだ。
取り壊したのなら、工事の途中も見えたはずだ。

「なんでだろうね」

もちろん、建物があったことが前提だ。

「多分、授業をまじめに聞いていたからじゃない?」
「今とは違って、よそ見をせずに」
S1009
(No.1009完)
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[No.1009-1]突き抜ける空

No.1009-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なんか違う・・・」
「ん?何か言った?」

友達が窓の外を指差した。

「ほら、私の席からは空は見えないんだよね」
「そうだっけ?」

でも、今は遠くに空が見えている。
丁度、建物に挟まれるような感じで。

「そう言えば、そこに何か建ってたよね?」
「・・・確かに」

それが何だったか覚えてはいない。
でも、その空間に建物があった。

「取り壊したのかな?」
「多分、そうなんだろうね」

無機質だった風景に潤いが生まれた。
大袈裟だけど、そんな感じだ。

「それにしても気持ちがいいね!」
「たったこれだけのことなのに」

秋晴れも手伝って、抜けるような青空だ。
空を抜けて、更に向こうの景色まで見えそうな勢いだ。

「あれは・・・富士山かな?」
「山が見えたら、すぐそれを言うんだから!」

もちろん富士山ではない。
でも、つい言ってみたくなるのが日本人だ。

(No.1009-2へ続く)

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ホタル通信 No.445

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.541 見てない
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

今でも鮮明に覚えています。覚えている理由は特徴的なエピソードだということもありますが、もうひとつ裏話があります。

計算ドリルの答えを書き写したのは事実です。担任の先生の机が教室の前にあったので、皆の前で呼び付けられ、立たされていました。これならよくあるパターンですが、ここからが裏話です。
実は、私の他に同じようなことをした女子がいて、その子も私と同じように前で立たされていました。
まぁ、完全に“クロ”だったわけですが、“見てない”を押し通しました。その女子も私と同じく、“シロ”だと・・・。

今振り返ると素直に謝っておくべきでしたし、遅くなりましたが、「先生、あの時は答えを書き写してしまいました。本当にごめんなさい」さて、禊が済んだところで(笑)、あらためてとても懐かしいエピソードのひとつです。計算ドリルに答えを付けていたのは、もしかして、試されていたからなのか、それとも信頼されていたからなのか真相は不明です。
大人になった今なら「そんなことも起こりうるから、答えを付けておくことなんてありえない」と、偉そうにリスク管理の必要性を語ったりするのでしょうかね。

それにしてもあの女子・・・どうしていますかね。まぁ、この小説を読むこともないだろうし、読んでも「私かも?」と思うには情報が少なすぎます。
逆に「私のこと?」と思う人が沢山いれば、それはそれで面白いのかもしれませんね。
T445
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[No.1008-2]想い出のグラス

No.1008-2

「なんでそれだったのかな?」
「実は・・・ね」

当時は特に何も考えていなかった。
店の余り物をくれた程度にしか・・・。

「でも、よくよく考えたら」

その日は成人式だった。

「お祝いに?」
「そう!・・・だけどな」

確かにお祝いだと思う。
けど、僕は成人式には行っていない。

「・・・そうなの?」
「うん、配属先がさぁ・・・」

実家とは遠く離れた場所だった。
その場所にはもちろん知り合いなどいない。

「だから行かなかったんだ?」
「それに仕事もあったし」

そのは日曜日だった。
でも、僕は仕事をしていた。

「そんな日に、コンビニに行く?」
「・・・だね」

年齢は知っていたと思う。
何日か後の成人式の話をしたことがあったからだ。

「オーナーなりのやさしさだったと思う」
「・・・向こうに着いたら、これで一杯やろうか?」

そのコンビニはもう違う店に変わっているけれど。
S1008
(No.1008完)
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[No.1008-1]想い出のグラス

No.1008-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あっ!懐かしいな・・・」
「どうしたの?」

引っ越しあるあるかもしれない。
荷造りの最中に色々な物を見つけては手が止まる。

「えっ!ウィスキー?」
「じゃなくて、こっちの方だよ」

確かに箱にはウィスキーの写真が載っている。
けど、中身はその隣のグラスだ。

「グラス?」
「そう!非売品のな!」

もう、20年以上前の出来事だ。
若き日頃、とあるコンビニオーナーと親しくなった。

「コンビニ?」
「うん、独身だったからさ・・・」

夕食は近くのコンビニでお弁当を買って帰る毎日だった。
そのせいでオーナーのおじさんと親しくなった。

「今思えば、親心だったのかな?」

帰りは、かろうじて“当日”だったことも珍しくなかった。
そんな僕を不憫に思っていたのかもしれない。

「もし、息子がいたら」
「あなたくらいの年齢?」

そう考えるのが自然だ。
いくら常連客とは言え、飲み屋さんではあるまいし・・・。

「で、ある日・・・」

非売品のグラスセットをもらった。

(No.1008-2へ続く)

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[No.1007-2]揺れた心

No.1007-2

あれ以来、彼女との距離がグッと縮まったような気がする。
まぁ、僕の勘違いかもしれないが・・・。

「おはようございますぅ!」
「おはよう・・・」

挨拶も少し変わった気がする。
これも僕の勘違いかもしれないが。

「・・・なに?」
「ん?い、いや、おはよう!」

意味もなくもう一度、あいさつをしてしまった。

「じゃあ、また後で!」
「・・・と、いうほどの距離じゃないけどね」

あの日、二人だけが微かな揺れを感じた。
何らかの秘密を共有した・・・そんな気分になった。

「ほら、こっち見てないで仕事、仕事!」
「あぁ・・・だな」

つい彼女のことを考えてしまう。
まるで学生時代に戻った感じだ。

「・・・あれ?メールが届いてる」

送り主は彼女だ。
ついさっき送ったようだ。

「なぁ・・・」

そう言い掛けて、話しかけるのを止めた。
彼女の横顔が妙に照れているように見えたからだ。
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[No.1007-1]揺れた心

No.1007-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ん?」

微かだが今、揺れた気がする。
そんな時、決まってキョロキョロするのが人間だ。

「あっ!」
「・・・えっ!」

少し離れた席に座っている女子社員と目が合った。

「だよね?」
「うん、多分」

彼女の方から声を掛けてきた。
もちろん、何を言いたいのかは分かっている。

「みんな気付いてない?」
「そうみたい」

彼女は単なる同僚だ。
比較的近くに席があってもさほど親しいわけでもない。

「ちょっと調べてみるね」

彼女がネットで地震速報を確認し始めた。

「・・・あったみたいね!」
「やっぱり!」

不思議とホッとする自分が居る。
勘違いの可能性もあったからだ。

「勘違いじゃなくて良かったぁ~!」

どうやら彼女も同じ心境だった。

(No.1007-2へ続く)

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ホタル通信 No.444

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.569 土に還る
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

最初に言っておくと、ラストの「今日、彼女は土に還った」は創作であり、事実ではありません。でも、いずれそうなる日は来ます、誰のもとにも。

土に還る・・・つまり、この小説で言う“死ぬ”がテーマにはなっていますが、決して暗い話ではありません。
家庭菜園に関係した話はとても多く作っています。そこから得られる教訓やとても小さな出来事は、まさに冬のホタル向きです。
つい最近も「No.1005 小さな世界」を発表しました。
さて、この小説は実際に“土に還る”と言う話題が出たことがきっかけになっています。もちろん、そこに悪意はなく、むしろ愛情を感じられる一言でした。
でも、本当に不思議なんですよね、土をいじっていると、落ち着くと言うか、そこに何かを感じずにはいられません。

設定的には、恋人同士の会話です。ラスト付近の「ありがとう!あなたと一緒に・・・」のセリフが、逆プロポーズとも取れるでしょうね。これを機に結婚、そして月日が流れた・・・。
記憶は定かではありませんが、非常に作りやすかった小説でした。自分的にはストレスなく書き進められた記憶があります。
小説を作ったというより、心の片隅にあった素直な気持ちを文字にしたという感じでしょうか。

土に還る・・・自分で言うのも変ですが、とても心に響く言葉です。小説を読み直し、昨日よりも少しやさしくなろう!と思う今日この頃です。
T444
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[No.1006-2]読めないメモ

No.1006-2

「それなら、何か覚えてるでしょ?」
「それが・・・」

忘れないためにメモをとる。
でも、現実は忘れてもいいようにメモをとっている。

「一緒じゃないの?」
「いいや、後者は・・・」

メモに頼りすぎている面がある。
つまり、頭の中・・・記憶としては覚えていない。

「書いておけば安心!が裏目にでたのね」
「まぁ・・・そんな感じ」

気を取り直し、アレコレ考えてみる。
持って帰るもの・・・持って帰るもの・・・。

「・・・だめだ、思い出せないよ」

そもそも本当にそうなんだろうか?
メモと言うより、独り言を書いたとか・・・。

「そうね、何かのアイデアを書いたのかも?」
「無いとは言えないな」

そうなるともはや思い出すのは無理だろう。

「まぁ、生活に支障がないなら、それでもOKでしょ?」
「・・・そうだよな!」

後で響いてくる危険性はなくもない。
でも、どうせたいしたことないだろう・・・今はそう思うようにする。

「秋だから・・・」
「置き忘れた想い出を・・・なんて言わないでよね」

ロマンチストではないがそれも悪くない。

「とにかく、もう諦めるよ」
「そうね、ひょんなことから思い出すかもしれないし」

持って帰るもの・・・。
10年後、それが何か分かることになった。
S1006
(No.1006完)
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[No.1006-1]読めないメモ

No.1006-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ?何だっけな・・・」

あえて大袈裟に言ってみたい。
意味不明なメモほど役に立たないものはない。

「どうしたの?」
「いやぁ、手帳にメモしてあるんだけど」

それが何を意味しているか分からない。
分からないというより、思い出せないのが正解だろう。

「どこ?」
「ほら、ここに」

殴り書きで読めないわけではない。
文字としては余裕で判別できる。

「“持って帰る”って書いてあるね」
「何を?」

それが分からないから困っている。

「さすがに範囲が広すぎて」

せめて場所が書いてあれば大いにヒントになるのだが。

「おもしろくなって来たわね!」
「おいおい・・・」

明らかに目が輝いている。
いらぬ、スイッチを入れてしまったようだ。

「いつごろのメモなの?」
「そうか!確か・・・」

メモに日付は書いていない。
けど、何となく分かる。

「手帳は毎日開いてるから」
「2、3日前にはなかったはず」

そう考えると、ごく最近のメモということになる。

(No.1006-2へ続く)

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