[No.1001-1]トンボの恩返し
No.1001-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
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「ん?」
どこかで、カサカサと乾いた音が聞こえる。
聞き覚えのある音だ。
「もしかして・・・」
あたりをキョロキョロ見渡す。
数名の乗客も、私と同じようにキョロキョロしていた。
「毎度のことだけど尊敬しちゃうわ~」
昨日の電車内での出来事を話した。
「そうかしら?」
「私じゃなくてもトンボくらい触れるんじゃない?」
友人が“無理”という表情を無言で伝えてきた。
よほど、ダメらしい。
「まぁ、行為自体は褒めてあげたいけどね」
「同じ命には変わりないから」
昨日、車内にトンボが紛れ込んでいた。
逃げ出せず、もがいている音があの乾いた音の正体だった。
「私の他にも乗客がいたんだけど」
皆、トンボの存在には気付いたようだった。
でも、それ以上のアクションはなかった。
「まぁ、みんな女性だったし」
「それはあなたもでしょ!」
だから、私が何とかしようと考えた。
「都合よく、降車駅も近づいてきたので」
さりげなくトンボを捕まえて、そのまま下車した。
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