[No.1003-2]まるで肩を寄せ合うように
No.1003-2
「こうするとな、余計な水分が落ちんねん!」
確かに、水っぽいものだけがボウルに落ちている。
逆に粘度のある部分は残っている。
「たったこれだけでも違うもんやで」
何がどう変わるかは別にして、そう思えなくもない。
味が濃くなるというか、密度が増すというか・・・。
「で、後は焼くだけ!」
「お早く頼むよ!おなかペコペコだよ・・・」
目玉焼きひとつに、仰々しく時間を使っている。
まぁ、それが彼女の良い所でもある。
「ほな、行くで!」
ザルから、フライパンに卵を移し変える。
食欲をそそる音が早くも聞こえてきた。
「水分が抜けたせいで形もいいよな」
「せやねん!」
白身がベチャッとならず、ふっくらしている。
見た目がホテルで食べる、あの目玉焼きのようだ。
「まぁ・・・実際、食べたことはないけどな」
あくまでも、見たことがあるレベルだ。
「これだけでもうまそうに見えるな」
「せやろ!・・・それに見てん!」
そう言うと、フライパンを指差した。
「うちらと同じやん!」
そこには、まるで肩を寄せ合うように黄身が並んでいた。
(No.1003完)
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