[No.1001-2]トンボの恩返し
No.1001-2
「でね、意外と大きかったのよね!これが」
秋によく見かけるアレよりも大きく感じた。
「そいつがさぁ、大きな目だまをクリクリさせちゃって」
私を見つめるかのように手の平にしがみついていた。
「あぁ・・・無理無理!」
「話だけでも、鳥肌もの!」
しばらくそのままで居ると、無事に大空に飛び立っていった。
もちろん、振り向きなどしない。
「気持ち悪いけどいい話ね!」
「あはは!」
別にちょっとしたヒーローを気取りたかったのではない。
私にとっては、ごく自然な行為だった。
「いつか恩返ししてくれるんじゃない?」
「トンボが?まさか!?」
動物なら多少期待も出来るが、さすがに昆虫は無理だ。
おとぎ話じゃあるまいし・・・。
「世の中、何が起こるか分からないわよ~」
「・・・というのは冗談で、ほんと暑いわね、今日も」
今日も昨日と同じ、雲ひとつない快晴だ。
それに暑さも厳しい。
「ほんと、嫌になっちゃうね!」
「全然、日陰もないし・・・」
私がそう言いながら、空を見上げた時だった。
「あれ、トンボじゃない?」
数匹のトンボが群れをなして、私の頭上を飛んでいる
まるで、日陰を作るかのように。
(No.1001完)
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