[No.1004-2]今ならわかる
No.1004-2
「・・・知らせてたの?」
「ううん、私の口からは知らせてはいない」
反抗期も手伝ってか、詳細は何も伝えなかった。
ただ、プリントは置いておいた記憶はある。
「まぁ、心のどこかでは」
「一応、知らせておこうと言う気持ちはあったかも」
でも、迎えに来て欲しいという意味は微塵も込められていない。
むしろ、来られたら迷惑だった。
「反抗期だけに?」
「そうね、恥ずかしながら・・・」
今思えば、反抗期とは自分に対する言い訳に過ぎない。
イライラの矛先を身近に求めた結果だ。
「だから、まさか来てるなんて思わなくて」
「だうろうね」
他にも何人か、母親が来ていた。
だから、幸いにもそんなに目立ちはしなかった。
「それで、友達と一緒だったんだけど」
ごく自然に別れて、母親のもとに向かった。
特に申し合わせたわけでもないのに。
「それがさぁ・・・なんて言うか・・・」
母親を見た時、涙が溢れ出て止まらなかった。
ただ、その涙が何に対してなのか当時は理解できずにいた。
「今なら?」
「それが良くわかるよ」
あの時とはシチュエーションは違えども・・・。
こうして、子供を待つ身になれば、自然と。
(No.1004完)
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