[No.999-1]前向きな靴
No.999-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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「なによ、さっきからニヤニヤしちゃって」
おっと・・・顔に出やすいのは親譲りだった。
分かっていても直らない。
「そ、そうかな~」
「うそが下手なのも親譲り?」
どうやら裏の裏までお見通しのようだ。
確かに、うそをつくのも上手ではない。
「正直者って言って欲しいな」
「結果は同じでしょ」
ある出来事が僕をにやけさせる。
ただ、にやけさせる割には色気のある話ではない。
「で、なに?」
「そのにやけ顔の真相は?」
最近、彼女の家に泊まるようになった。
それで、あることに気付いた。
「靴だよ、靴」
「えっ!?靴がどうしたのよ?」
彼女は帰ってきた方向のままくつを脱ぐ。
つまり、つま先が家の中を向いている。
「やだぁー!」
「私が行儀悪く聞こえるじゃん」
実際、世間的には行儀が悪いとされるだろう。
ただ、それに関しては僕は強く言えない立場だ。
「まぁまぁ落ち着いて!」
「少なくとも僕もそうだから」
にやけた理由のひとつがこれだ。
何よりも彼女に親近感を覚えたからだ。
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