[No.999-2]前向きな靴
No.999-2
「あなたも?」
「ほら、見てみなよ」
玄関先を指差す。
「ほんとだ・・・こっち向いてる」
もちろん、調子よく彼女に合わせたわけじゃない。
普段通り、家に上がった。
「向き、直す?」
「いいや、そのままでいいよ」
プライベートの空間だ。
そんな所まで神経を尖らせる必要はない。
「あなたらしいね」
「自宅ぐらい、自由にさせろよ!ってこと」
公共の場で、それなりに振舞えればそれでいい。
「それにさぁ」
僕がにやけていた理由はもうひとつある。
「今はつま先がこっち向いてるだろ?」
「でも、朝になったら」
彼女の靴も僕の靴も、つま先が外を向いている。
もちろん、心霊現象ではない。
「ほら、出掛ける前に向きを変えてくれてるだろ?」
「多分、無意識に」
それも、ここに来るようになって気付いた。
「・・・そうなの?」
「全然、意識してなかった」
たかが靴の向きの話だ。
でも、向いている未来まで同じに感じる。
(No.999完)
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