[No.998-2]続く命
No.998-2
「それはそれで残念ね」
毎年、夏になるとセミとの出会いがある。
出会いと言っても、ちょっと物悲しい出会いにはなるが・・・。
「そうね」
「あんなうるさい奴らだけど」
うるさい分、消え行く命が対照的だ。
毎年、そんな命と出会う。
「朝まで玄関先に居たかもね」
「・・・その可能性はあるわね」
私との出会いを果たす前に・・・というパターンだろう。
「けど、よく気付いたわね?」
「透明でしょ、羽って?」
そう・・・確かに注意しなければ分からないレベルだ。
「そうね、でもあの質感と形ですぐ分かったよ」
「さすが!」
もしかしたら、今年の出会いはこれだけかもしれない。
「セミがあなたに会いに来てたのかな?」
「なんで?」
「だって、玄関先までなんて、よっぽど・・・」
まぁ、その可能性も否定できない。
セミの世界では私は有名人なのかもしれない。
「有名人?」
「バカみたい!って言えないのが、あなたのすごい所よ」
とにかく、夏と共に何かと話題を運んでくれる奴らだ。
「それで、その羽は?」
プランターで育てているゴーヤの肥やしにした。
命が続いていくように願いながら。
(No.998完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
| 固定リンク | 0
「(040)小説No.976~1000」カテゴリの記事
- [No.1000-2]ゴールor通過点?(2020.08.26)
- [No.1000-1]ゴールor通過点?(2020.08.25)
- [No.999-2]前向きな靴(2020.08.23)
- [No.999-1]前向きな靴(2020.08.20)
- [No.998-2]続く命(2020.08.05)
コメント