[No.990-2]カルピス
No.990-2
「小さいころさぁ・・・」
彼が昔話をし始めた。
なるほど・・・そのことが色濃く影響しているのだろう。
「アイスってあのアイス?」
「そうだよ、カルピスを凍らせて」
最近、コンビニで見掛けないこともない。
ただ、それとはちょっと物が違うようだが。
「夏になるといつも冷凍庫に入ってたなぁ・・・」
その口ぶりからすれば誰かが作っていたのだろう。
その誰かは容易に想像できる。
「凍るとそれほど白くもなくて」
「“みぞれ”と雰囲気は同じ」
もしかしたら、それを分かって作っていたのかもしれない。
牛乳嫌いの子供のために。
「だから、唯一カルピスだけは大丈夫!」
「面倒な人ね・・・全く」
どこか嬉しそうに飲む彼の姿が印象的だった。
「お母さんに感謝だね」
「まぁ・・・そうことかな」
そう言うと、グイっと一気に飲み干した。
「どちらにせよ、飲むたびに思い出すよ・・・色々と」
(No.990完)
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