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[No.991-2]まずは目の前の・・・

No.991-2

「じゃぁ、踏みとどまった理由は?」

どちらかと言うと、こっちの話が聞きたい。
なぜ、“辞めなかったのか”を。

「当時の上司に相談したんだ」
「そしたら飲みに誘ってくれて」

なるほど・・・それで色々とアドバイスしてくれたんだろう。

「アドバイス?」
「それがさぁ・・・あはは」

彼が急に笑い出した。
何かを思い出したかのように。

「笑うところ?」
「ごめん、ごめん、思い出しちゃって」

よほど印象に残っていることがあったのだろう。

「アドバイスなんかひとつもなくて」
「楽しく飲んだ記憶しかないよ」

それならどうして踏みとどまることができたのだろうか?
ますます知りたくなる。

「それじゃ・・・なぜ?」
「何だろうね、俺もよく分からないよ」

雰囲気からすれば嘘や気遣いではなさそうだ。

「ただ、言えるのは・・・」
「俺自身もアドバイスを求めていたわけじゃないってこと!」

その言葉にドキッとした。

「だから、まずは目の前のビールを飲み干そうよ」
S991
(No.991完)
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