[No.993-2]前世はカミナリ様
No.993-2
「これで晴れてたら私・・・立ち直れない!」
「なんだ、意外とデリケートじゃん」
とは言え、その心中を察していないわけじゃない。
「もぉ!“意外と”は余計なの!」
「はいはい、怒らない」
そうこう話しているうちに、雨足はさらに激しさを増してきた。
「ちょっと、遠慮してよ!」
「私に文句!?」
私が雨女じゃないと弁明する方が難しくなってきた。
これで、建物の中に逃げ込んで雨が止んだとしたら・・・。
「仕方ない、もう一軒行く?」
「いいね~!」
まるで会話が飲み歩くオジサンそのものだ。
とにかく、適当な店を探そう。
「そうだ!私に任せて、いい店、知ってる」
ここからも遠くないし、ゆっくり過ごすのに丁度良い。
「さぁ、急ぐわよ!」
大急ぎで、その店を目指す。
「もしかして・・・あの店?」
店に飛び込んだ瞬間、雨音が消えた。
音がシャットアウトされたわけじゃない。
「・・・止んだね」
学会に発表する決意を決めた。
「・・・ん?なに泣いてるのよ?」
「だぁってぇ~このぉみぃせぇ~」
同僚が雨にも負けない勢いで泣き始めた。
どうやら、彼に別れを告げられた店らしい。
(No.993完)
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