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[No.996-2]コーヒーカップ

No.996-2

「うん、飲めないと言うか、飲まない」
「やっぱりトラウマだから?」

飲めるかどうかは別にして、確かにトラウマはある。
コーヒーカップ自体に。

「そうだね」
「何があったの?落として割って怒鳴られたとか?」

なかなか良い展開だ。
勝手に話が進んで行く。

「まぁ・・・そんなところかな?」
「うそばっかり」

(ん?・・・気付かれている?)

「う、うそじゃないぞ!」
「コーヒーカップにトラウマがあるのは確かだよ!」

トラウマになるくらいだ・・・かなり強烈に覚えている。
あの出来事を・・・。

「泣いたでしょ?」
「えっ!?なんで知ってんだよ!?」

あの日の事実を知っているのはごく身近な人だけだ。
僕の家族と当事者である、いとこの女の子だけだ。

「ビックリした?」
「そりゃ、するでしょ!?」

自分自身でもう一度確認する。
誰にも話したことは・・・絶対にない。

「これよ」
「それ・・・僕のアルバム・・・」

もしかして・・・。

「ほら、この写真」
「あっ・・・」

写真の傍らに、ご丁寧に書いてある。
トラウマの原因となるものが。

「読んでみたら?」
「・・・コーヒーカップで急回転されて号泣・・・」
S996
(No.996完)
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