[No.985-2]風に揺られて
No.985-2
「ツルで必死にしがみついてるやろ?」
「まぁ・・・確かに」
それは僕も思うところがある。
誰に教えられたわけでもなく、棒や網にしがみつく。
「いつの間にか、しがみついてるんだよな」
「目があるわけでもないのに」
僕もツルに見とれるタイプの人間だ。
不思議さと相まって、色々と考えてしまう。
「人間も同じやね」
「・・・かもな」
彼女が熱心に見ていた理由がわかり始めた。
どうやら、それに自分を重ね合わせているようだった。
「ほら、そのツルだって・・・」
今は風に揺られて、空を切っている。
でも、そのうちどこかにしがみつくだろう。
「せやね」
「それでいいんじゃないかな?」
彼らにとってそれが生きるすべなんだと思う。
しがみつくことは、すなわち生きることなんだ。
「なにカッコつけてんねん!」
「い、いや・・・あはは・・・」
ついつい、熱く語ってしまった自分が居る。
「せやけど、嫌いじゃない」
そう言うと、しがみついてきた。
彼女の手もまた、空を切っていた一人だった。
(No.985完)
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