« ホタル通信 No.428 | トップページ | [No.979-2]あの空をこえて »

[No.979-1]あの空をこえて

No.979-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
どちらからともなく、その場に座り込んだ。

「・・・ねぇ、なに考えてる?」
「別に・・・」

もし、自分が先に聞かれたとしてもそう答えただろう。
何も考えていないけど、こうしたかった。

「綺麗な夕焼けだね」
「明日は晴れだね」

会話と言うより、状況説明に近い。
そもそも、どうして私たちはここに座り込んだのだろうか?

「まだ、肌寒いね」
「そうね、もうすぐ5月なのに」

暖冬だったわりには、春の訪れが遅かったように感じる。
まだ、薄手のコートが手放せないでいるからだ。

「そう言えば、高校の時もこんなことなかった?」
「私もそう考えてた」

ドラマの影響もあったのかもしれない。
土手に座り込むのは、青春そのものだった。

「7年後にまたここに座り込むなんてね!」
「成長してないね、私たち」

そうは言ったものの、本当は逆の考えだ。
成長したからこそ、今までここに来ることがなった。

「ううん、成長したわよ」
「・・・だね」

春とは言え、まだ日が落ちるのは早い。
あっという間に、夕焼け空が消えようとしている。

「そろそろ帰ろうか?」

口火を開いたのは、友人の方だった。

(No.979-2へ続く)

| |

« ホタル通信 No.428 | トップページ | [No.979-2]あの空をこえて »

(040)小説No.976~1000」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ホタル通信 No.428 | トップページ | [No.979-2]あの空をこえて »