[No.979-1]あの空をこえて
No.979-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
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どちらからともなく、その場に座り込んだ。
「・・・ねぇ、なに考えてる?」
「別に・・・」
もし、自分が先に聞かれたとしてもそう答えただろう。
何も考えていないけど、こうしたかった。
「綺麗な夕焼けだね」
「明日は晴れだね」
会話と言うより、状況説明に近い。
そもそも、どうして私たちはここに座り込んだのだろうか?
「まだ、肌寒いね」
「そうね、もうすぐ5月なのに」
暖冬だったわりには、春の訪れが遅かったように感じる。
まだ、薄手のコートが手放せないでいるからだ。
「そう言えば、高校の時もこんなことなかった?」
「私もそう考えてた」
ドラマの影響もあったのかもしれない。
土手に座り込むのは、青春そのものだった。
「7年後にまたここに座り込むなんてね!」
「成長してないね、私たち」
そうは言ったものの、本当は逆の考えだ。
成長したからこそ、今までここに来ることがなった。
「ううん、成長したわよ」
「・・・だね」
春とは言え、まだ日が落ちるのは早い。
あっという間に、夕焼け空が消えようとしている。
「そろそろ帰ろうか?」
口火を開いたのは、友人の方だった。
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