[No.979-2]あの空をこえて
No.979-2
「うん、帰ろう」
友人に助けられたようなものだ。
もし、先に言ってくれなければ、もう少しここに居たことだろう。
「よし!それなら、急ごう!」
「・・・どこに!?」
「あっ・・・」
急ぐ理由などなかった。
つい、7年前と同じセリフをしゃべってしまった。
「覚えてたんだ?」
「そ、そうみたい・・・」
覚えていたというより、脳が無意識に反応したようだった。
シチュエーションがそうさせたと思う。
「だったら付き合ってよ、私のセリフに」
「ごめんごめん!まさかの展開だったから・・・」
あの日も口火を開いたのは友人だった。
そして、帰りを急いだ。
「じゃぁ・・・もう一度言ってよ?」
「また言うの!?」
普通のセリフだけど、意識すると何だか照れ臭い。
“その先”の展開も分かっているからだ。
「いいじゃん!ねっ!」
「まぁ、そう言うなら・・・」
大袈裟だけど意を決して、もう一度、言うことにした。
「よし!それなら、急ごう!」
「うん、あの空をこえて!」
二人で消えゆく夕焼け空を追った。
ただ、体力の衰えは否めないけど。
(No.979完)
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