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2020年5月

[No.983-1]あっちからこっちを

No.983-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「どう?」
「そうね、案外いいかも」

いつもの散歩コースを歩いている。
でも、今日はちょっとだけ趣向を凝らせてみた。

「だろ?」
「見える景色はそれほど変わってないのにね」

今日は道路を挟んで、反対側を歩いている。
するとあることに気付いた。

「あの店って、焼肉屋だったんだ」
「元・・・だろうけどね」

随分前に畳んだような店がある。
もちろん、人の気配もまるで感じられない。

「いつもの道だと、頭上の看板が見えないからね」

それが反対側だとよく見えた。

「すごい今更感がある」
「ここに越して来て、何年だっけ?」

指折り数えてみる。
分かってはいるけど。

「丁度、10年かな?」
「10年目の新発見!?」

ちょっと大袈裟だけど、言い過ぎでもない。
知っているようで知らないのが、身近な存在だ。

「ほら、他にも・・・」

気付けていないものがあるようだった。

(No.983-2へ続く)

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ホタル通信 No.430

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.530 さくらさく
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

なるほど・・・ありがちなパターンの小説で、冬のホタルらしい独特な世界観は微塵も感じられません。

ただ、実話度が示す通り、全くの創作ではなく、ある事実を誇張したり、すり替えたりしています。彼・・・の存在はありましたが、恋人だったわけではなく、単なる同僚でした。
そんな同僚だったわけですが、好意が全く無かったわけではありません。もしかしたら・・・恋人に発展するかも?と言った道も見えてはいました。

ですが、月日は流れ、彼が転勤することになりました。
その時の別れの様子を恋人同士にすり替えて、誇張しました。正直に言えば恋人同士にも似た感情がなかったと言えば嘘になります。だからこそ、こんな小説が生まれたわけですから。
冒頭、冬のホタルらしからぬ・・・なんて書きましたが、登場人物で考えれば、小説上の彼は、よく登場する人物です。
まぁ、作者の性別を明かしていませんから、その彼が作者の可能性もあります。

桜を題材にした小説は比較的多いと思います。
別に桜を特別視しているわけではないのですが、桜の季節に何らかの感情の起伏が生まれているということでしょうね。
それこそ、別れ、そして出会い・・・桜はそんな出来事をきっと多く見守ってきたんでしょうね。
T430
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[No.982-2]うわ手な彼

No.982-2

「面白いよ」
「じゃ・・・聞くけど」

良いことを思いついた。
そこまで言うなら、意地悪く質問してみることにした。

「そう言えば、来月・・・」
「誕生日だろ?」

すかさず彼が答える。
まぁ・・・これはこれで嬉しいが。

「そ、そうなんだよね」
「何だよ・・・欲しいものでもあるのか?」

さっきまでは無かった。
でも、今は違う。

「新しいメイク道具、揃えようかな・・・」
「化粧品か?」

この際、何でも良い。
彼を試せれば。

「散々、そんな動画見てたら分かるよね?」
「まぁ・・・そうだな」

おそらく内容なんて覚えてない。
彼女が目当てなんだから。

「何にしようかなぁ~」
「アレもいいし、コレもいいし・・・」

もちろん、特別欲しいものはない。
でも、この際、ブランド品で攻めてみよう。

「シャ・・・」
「プチプラでいいよな?」
S982
(No.982完)
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[No.982-1]うわ手な彼

No.982-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「なににやけてるのよ?」
「そう?」

彼がYou Tubeを見ている。
それ自体は何も問題はない、ただ・・・。

「ふ~ん、そんな子が好みなんだ?」
「そうじゃなくて、内容が・・・」

確かに検証企画もあったようだが、多くは女子向きだ。
コスメやらメイクが特に多い。

「何だよ、聞いてたのか?」
「聞くつもりはなくても聞こえるでしょ?」

内容よりもその子に興味があるのは一目瞭然だ。
何となく、元カノに似ているからだ。

「誰かに似てない?」

軽くジャブを打ってみる。

「そうかなぁ?」

反応を見る限り、演技ではなそうだ。
焦った雰囲気もない。

「そう・・・で、そんなに面白いわけ?」
「面白いというか・・・」

言葉が続かない。
やはり、彼女目当てなのは間違いないだろう。

「女子向きの内容じゃん!」
「それでも面白いわけ?」

やきもちではないが、何だか悔しい。
スッピンを見せるなんて元が可愛くなければ出来やしない。

(No.982-2へ続く)

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[No.981-2]見えない力

No.981-2

「ちょっと寄っていかない?」
「私もそう思ってた!」

何となくその店に立ち寄りたくなった。

「これ・・・」
「どうしたの?」

友人が早速何かを見つけたようだ。
雑貨屋だけに、ワクワクする品が所狭しと並んでいる。

「あっ・・・」
「でしょ!?」

私が持っているブリキのおもちゃが売られていた。
それは別の友人からプレゼントされたものだった。

「もしかして、ここで買ったのかな?」
「・・・かもしれない」

当時、色々と探し回ったと聞いていた。
レトロ好きの私のために。

「そう言えば、今どこにあるの?」
「それが・・・」

数年前に引っ越しした時に行方不明になった。
とは言え失くしたわけじゃない。

「荷をほどいていない箱がいくつかあって・・・」
「その中に?」

多分、そうだと思う。
荷ほどきするタイミングを逸して今日まできてしまった。

「カフェじゃなくて」
「どうやら、そっちだったようね」

行きつけのカフェは私たち3人の憩いの場所だった。
S981
(No.981完)
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[No.981-1]見えない力

No.981-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
時として、不思議な出来事が起こる。
まるで何かに導かれたかのように・・・。

「えっ・・・臨時休業!?」

行きつけのカフェが閉まっていた。
年中無休のはずだったのに・・・。

「ついてないね・・・」
「そうね、わざわざここまで来たのに」

予期せぬ出来事だけにショックが大きい。
大袈裟だけど。

「・・・どうする?」
「そうね・・・それなら新規開拓してみない?」

ここに来る途中に新規オープンらしき店を見掛けた。

「・・・そうしようか」

かなり戻ることになるが仕方がない。
他に適当な店も見当たらないからだ。

「こっちの道の方が近道かも」
「うん、そうしよう!」

表通りではなく、裏通りを進む。

「へぇ~こんな通りがあったんだぁ」
「なかなか良い雰囲気ね」

この辺りは何度も訪れているが、裏通りは初めてだった。
ちょっとした隠れ家的雰囲気がここにはある。

「・・・見て!可愛い雑貨屋さんがあるよ!」

レトロ感が半端ない店がひっそりと店を構えていた。

(No.981-2へ続く)

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ホタル通信 No.429

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.536 すずめの涙
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

この小説は、言わば願望を具現化したものと言えます。もちろんすずめと彼女をオーバーラップさせながら。

実話度20%は、すずめに関する部分で、すずめとの一連のやり取りは実際に起きた出来事です。その他のことは創作になりますので、彼女は全く関わっていませんが、私にはそのすずめがどうしても彼女と重なって見えてしまい、このような小説になったわけです。
ある意味、彼女も逃げる場所がなく、隅でジッとしているようなものでした。極端に言えば、生きることをあきらめていると言ってもいいかもしれません。そんな彼女と出会い、色々・・・ありましたね。

最近、この手の小説はほとんど書いていません。本来これが冬のホタルの神髄のはずなんですが寂しい限りです、自分で言うのも変ですが。
後半のラスト近くに「やっぱり連れて帰るべき・・・」という表現がありますが、これはすずめと彼女、両方のことを言っています。
だからと言って、彼女に帰る場所がなかったわけではないんです。
帰る場所はあったけど前述した通り、安住の地ではありませんでした。

今でも時々、思い出すことがあります。
あのすずめはどうなったのか、と・・・。楽しい思い出より、苦しい思い出の方が多いのですが、大空に飛び立っていればいいな。
T429
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[No.980-2]困りごと

No.980-2

「へぇ~凄いね!」
「でも、それの何が困りごとなの?」

簡単に言えば、切りの悪い数値が気持ち悪い。
だから、切りが良くなるように・・・。

「つまり・・・“続ける”ってこと?」
「そう!後何分、後何キロ・・・」

時間を切りよくすれば、距離やカロリーの切りが悪くなる。
なので、全体の切りをよくしようと・・・。

「なかなか、3つとも切りがよくならなくて」
「結果、なかなか終われない」

そんなの無視すれば何も困ることはない。
でも、それが出来ないのが生まれ持った性格というものだ。

「まぁ・・・困りごとと言えば困りごとだけど」
「そのお陰で、かなり成果が出てるじゃん!?」

それに関しては、予想以上の結果だと言える。

「止め時が見つけられないのも辛いものよ」
「私にとっては」

後少し、後チョット・・・の繰り返しで終われない。

「贅沢な困りごとよ」
「・・・と言うより、そもそも困りごととも言えないよ、それ」

確かに、そうかもしれない。
逆に、一歩間違えば嫌味になってしまう。

「そうそう!困りごとって言うのはね・・・」

友人がお腹の肉をつまんで見せた。
S980_20200520213501
(No.980完)
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[No.980-1]困りごと

No.980-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・痩せたんじゃない?」
「そ、そうかな?」

言葉とは裏腹に、間違いなく痩せた。
もちろん、ダイエットを始めたからだ。

「うちにアレあったじゃん?」
「アレ?」

長い間、本来の目的を果たしていなかったアレが。

「ほら、ジムで見掛ける・・・」
「・・・あの自転車!?」

買ってからというもの、洗濯物を部屋干しするために使っていた。
ハンドル部分が何かと丁度良かった。

「夏に向けて・・・ね」

冬の不摂生を今のうちに挽回したい。
その一心で、ダイエットを始めた。

「私も始めてみようかな・・・」

ただ、ちょっと困ったことがある。
着実に体重が減っているのは良いのだが・・・。

「なによ、困りごとって?」
「順調なんでしょ?」

性格が災いしていると言えば良いのだろうか?
まぁ、悪いことではないのは確かだけれど。

「目標を立てて漕いでるんだよね」
「30分、15キロ、100キロカロリーって」

それをキチンと守った成果が今の私の姿だ。

(No.980-2へ続く)

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[No.979-2]あの空をこえて

No.979-2

「うん、帰ろう」

友人に助けられたようなものだ。
もし、先に言ってくれなければ、もう少しここに居たことだろう。

「よし!それなら、急ごう!」
「・・・どこに!?」
「あっ・・・」

急ぐ理由などなかった。
つい、7年前と同じセリフをしゃべってしまった。

「覚えてたんだ?」
「そ、そうみたい・・・」

覚えていたというより、脳が無意識に反応したようだった。
シチュエーションがそうさせたと思う。

「だったら付き合ってよ、私のセリフに」
「ごめんごめん!まさかの展開だったから・・・」

あの日も口火を開いたのは友人だった。
そして、帰りを急いだ。

「じゃぁ・・・もう一度言ってよ?」
「また言うの!?」

普通のセリフだけど、意識すると何だか照れ臭い。
“その先”の展開も分かっているからだ。

「いいじゃん!ねっ!」
「まぁ、そう言うなら・・・」

大袈裟だけど意を決して、もう一度、言うことにした。

「よし!それなら、急ごう!」
「うん、あの空をこえて!」

二人で消えゆく夕焼け空を追った。
ただ、体力の衰えは否めないけど。
S979
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[No.979-1]あの空をこえて

No.979-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
どちらからともなく、その場に座り込んだ。

「・・・ねぇ、なに考えてる?」
「別に・・・」

もし、自分が先に聞かれたとしてもそう答えただろう。
何も考えていないけど、こうしたかった。

「綺麗な夕焼けだね」
「明日は晴れだね」

会話と言うより、状況説明に近い。
そもそも、どうして私たちはここに座り込んだのだろうか?

「まだ、肌寒いね」
「そうね、もうすぐ5月なのに」

暖冬だったわりには、春の訪れが遅かったように感じる。
まだ、薄手のコートが手放せないでいるからだ。

「そう言えば、高校の時もこんなことなかった?」
「私もそう考えてた」

ドラマの影響もあったのかもしれない。
土手に座り込むのは、青春そのものだった。

「7年後にまたここに座り込むなんてね!」
「成長してないね、私たち」

そうは言ったものの、本当は逆の考えだ。
成長したからこそ、今までここに来ることがなった。

「ううん、成長したわよ」
「・・・だね」

春とは言え、まだ日が落ちるのは早い。
あっという間に、夕焼け空が消えようとしている。

「そろそろ帰ろうか?」

口火を開いたのは、友人の方だった。

(No.979-2へ続く)

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ホタル通信 No.428

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.558 壊れたおもちゃ
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

またまたセミの話ですね。ここまでくるとセミが好きなんだと認めざるを得ないかもしれません。

ただ、タイトルや内容からすれば、死にかけたセミを“壊れたおもちゃ”と表現するのは不謹慎かもしれません。でも、たかが昆虫とは言え、そこに命を感じ、向き合っているからこそ、生まれた小説です。
それこそ息も絶え絶えで、その姿はまるで壊れたおもちゃの何物でもありません。ですが、壊れたおもちゃのまま終わらせず最後は電池切れ・・・で終わらせることにしました。
やさしさ?いいえ・・・どちらかと言えばやや残虐性ある表現に近いと思っています。

それにしてもどうしてセミに心動かされるのでしょうか?他にも昆虫はいっぱいいるのに・・・もしかしたら、元気な姿と死に行く姿のギャップが大きいからかもしれません。
まぁ、単純によく見掛けるだけかもしれませんけどね。カブトムシやクワガタが死んでいる姿を見掛けますか?他の昆虫はどうでしょうか?ゼロではないものの見掛けることは殆どありません。

そう考えると彼らはとても身近な存在なんですよね。いつの間にか私はその存在を認めてしまっているのかもしれません。電池交換が出来ない彼らのことを。
T428
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[No.978-2]麩菓子

No.978-2

「昔はこんなパターンが多かったかもしれないね」

他にも同じシステムを採用していた駄菓子があった。

「それはそうと、先を聞かせてよ」

ハズレがあるということは、当然アタリもある。
ただ、そのアタリに夢があった。

「早く聞かせなさいよ」
「アタリは確か・・・3等からあったかな」

アタリに応じて、数ではなく、大きさが変わった。
1等ともなると、相当の大きさだった。

「えぇーどれくらい!?」
「太さは・・・これくらいかな?」

自分の手首を指さす。

「でかっ!」
「・・・と思うだろ?」

実はその上があった。
1等と言えども足元にも及ばない大きさだった。

「その上・・・?」
「あぁ、“特賞”ってやつがね」

手を開いて見せる。

「まさか、手のひらサイズなの!?」
「そっ!」

何かに例えられないのが悔しい。
想像以上に重厚感があった、見た目も手伝って。

「うらやましいぃ!」

ただ、見た記憶はあっても食べた記憶はない。
それがちょっと残念だが・・・。
S978
(No.978完)
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