[No.972-2]嫌いな理由
No.972-2
「そうなの!?」
「こんなに美味しいのに!」
そう言うと、もう一口、パクついた。
「これ系はダメなわけ?」
「ううん、それだけ嫌い」
好き嫌いが分かれるであろう、春菊だって食べられる。
それが嫌いな理由が味ではないからだ。
「今の季節、一番美味しいじゃん!」
「だから余計に嫌いなの!」
就職のため、地元を離れた。
それからというもの、”野生”のそれを見かけたことがない。
「野生?」
「まぁ・・・広い意味では野菜は全部"野生”なんだろうけど」
つまりこういうことだ。
私にとってそれは、道端に勝手に生えている雑草に近い存在だ。
「実家のすぐそばの土手に・・・」
それこそ食べきれないほど生えている。
「・・・そうなんだ」
「そう!分かってくれた?」
正確に言えば嫌いなのではなく、食が進まない。
どうしても雑草を食べているようにしか・・・。
「知らなかった・・・」
美味しそうに食べる友人には悪いがそういうことだ。
「・・・そんなに生えてるなんて」
友人の瞳の奥が輝いて見えるのは気のせいだろうか?
(No.972完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
| 固定リンク | 0
「(039)小説No.951~975」カテゴリの記事
- [No.975-2]話したいこと(2020.04.17)
- [No.975-1]話したいこと(2020.04.16)
- [No.974-2]After Tone(2020.04.14)
- [No.974-1]After Tone(2020.04.12)
- [No.973-2]ここにも春が(2020.04.10)
コメント