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2020年4月

[No.978-1]麩菓子

No.978-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「食べる?」
「おっ!懐かしいな」

その存在自体、忘れていたお菓子だ。
小さいころに食べた記憶しかない。

「懐かしい?」
「俺にとってはね」

駄菓子屋の定番のお菓子だ。
当時は、一本一本、バラ売りされていた。

「そうなんだ?」

今では、個装されているものもあるようだ。
まぁ、あれから・・・年も経っているから、当然と言えば当然だ。

「知ってる?」
「何を?」

バラ売りされてはいたが、普通には売ってはいない。
大袈裟に言えば。

「これさぁ、くじ引きで買うんだよ」
「ん?どういうこと?」

子供にとっては夢のあるシステムだった。
今でもこのシステムは残っているのだろうか?

「このサイズは・・・ハズレなんだよ」
「もぉ!意味わかんない!」

当時は・・・円だっただろうか、まず、それでくじを引く。
ハズレなら、このサイズをもらえる。

「普通に買うんじゃなくて?」
「そうだよ」
「・・・ということは」

そう・・・ハズレじゃない場合がこれまた凄かった。

(No.978-2へ続く)

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[No.977-2]あの木

No.977-2

「なんで今頃?」
「そうなんだよな・・・」

実在はしていたけど、大昔の木が夢に出てくる。
そこに何の想い出も思い入れもないのに。

「だから逆に気になっちゃって・・・それで」

何か不思議な力に導かれるかようにアルバムを探した。
その木を見つけなきゃならない衝動に駆られたと言っても良い。

「で、あったの?」
「うん、一枚だけ」

おそらく中学校に入学した時に写したものだろう。
着こなせていない学生服と幼い自分の顔がそれを物語っている。

「そんな時じゃなきゃ、写真撮らないもんね」

丁度、その木と並ぶような感じで撮られていた。

「でね、ここからが本題なんだけど・・・」
「えっ!?木の話じゃないの?」

実は気になったのは木のことじゃない、洒落じゃないけど。

「さっき、“衝動に駆られた”って言ったろ?」
「うん」

その木の写真を見つけた時に何らかの答えがあると思った。

「どういう意味!?」

写真を見つけたページには他にも写真が収められていた。

「だよね、アルバムだもん」
「えっ!?そこにどんな写真が・・・」
S977 
(No.977完)
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[No.977-1]あの木

No.977-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「珍しいね・・・」
「夢の話をするなんて」

自分でもそう思っている。
夢なんて支離滅裂な展開ばかりで人に聞かせる話ではない。

「そうなんだよな」
「でも、妙に記憶に残ってて・・・」

もちろん今回も支離滅裂の展開だ。
だから、夢自体を説明する気はない。

「夢の中でね、とある木が出てきて・・・」
「昔、実家に植えられていた木なんだよね」

昔・・・と言うくらいだから、今はもうない。
家の建て替えをした時に、切ってしまったと記憶している。

「何の木?」
「それが・・・何の木だったかは知らない」

親に聞いたこともなければ、これとった特徴もない。
物心付いたころには、もう植えられていたからだ。

「だから夢の中に出てきてビックリしちゃって」
「夢に出てくるまで、その存在を完全に忘れてたからね」

それこそ・・・ぶりに思い出した。
夢がなければ一生思い出すこともなかっただろう。

「想い出の木・・・とか?」
「いいや、空気みたいな存在」

色々な意味で特別な木ではない。
ある意味、僕にとっては雑草と、さほど変わりはない。

(No.977-2へ続く)

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ホタル通信 No.427

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

特別編

このタイミングで何が“特別”かと申しますと・・・トップ画面の左側のカテゴリに「(040)小説No.976~1000」を追加し、No.976の掲載を終えました。つまり、そろそろ、No.1000が現実のものとなってきました。

何度か話していますが、最初からNo.1000目指して小説を書き始めたわけではありません。
幸いなことに書き始めた当初は、書きたいことが山のようにあり、それに質も評価を気にせず、自己満足の世界を貫いておかげでNo.800くらいまでは怒涛のごとく駆け抜けた感があります。
ところが、それを過ぎたころからやや陰りが見え始め、No.900に達する頃には、それが顕著に出ていました。それから、今までは日々、崖っぷちの状態でした。

作風も大きく変わり、意味不明な独特の世界観もすっかり陰を潜めており、続ける原動力となっていたものは今はもうありません。
でも、こんな小説でも応援してくださる方が居て今でも多くの拍手をいただいています。
決して、評価されるために続けているわけではありませんが、拍手が背中を押してくれているのは間違いありません。

さて、No.1000に向けてどうしようか・・・考えています。
もちろん、ここまで来たら、是が非でも辿り着きたいと思っていますが、その先をどうするか、結論は出ていません。
消極的ですが、止めるならこれ以上ないベストなタイミングです。でも、止めたらどうなるのか・・・その先を想像できません。

順当に行けば、夏真っ盛りか、終わりごろには、No.1000に達すると思います。その時にまたホタル通信でお逢いしましょう!
T427
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[No.976-2]時々、女子に

No.976-2

「いつもはどこに置いてるの?」
「普段は・・・この辺りなんだけど」

探し物は探している時には見つからない。
けど、見つかる時は速攻で見つかる場合もある。

「・・・あっ」
「もう見つけたの!?」

見つけたもなにも、“この辺り”に置いてあった。

「これだろ?」
「そう!それそれ!」

“どこで見つけたの?”顔をしている。

「ここに置いてあったぞ」
「えぇー!?ほんと?」

驚きぶりからすれば、本当に気付かなかったらしい。
一瞬、何らかの理由で試されているかと考えていたからだ。

「そうか・・・デコったんだった!」

よく見るとヘッドホンにキラキラ光るパーツが貼られている。
最初から貼られていたものではないのは明白だ。

「デコったの忘れてた」
「だから思い込みがあったみたい・・・それは違うって」

とにかく、あって良かった。
なきゃないで後が大変だ。

「どう?おしゃれでしょ?」
「そ、そうだね」

そんな彼女は時々、女子になる。
S976
(No.976完)
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[No.976-1]時々、女子に

No.976-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ・・・どこいったかな?」

さっきから何かを探しているようだった。
でも、声を掛けられていないのでとりあえずスルーしている。

「おかしいな・・・」
「ねぇ・・・聞こえてる?」

予想通りだ。
そろそろ矛先が僕に向くころだと思った。

「探しものか?」
「見れば分かるでしょ!?」

つい反論したくなる。
でも、今はやめておこう。

「そうだね、で、何を?」
「これよ、これ!」

音楽プレーヤーを目の前に差し出してきた。
どうやら“相棒”を探しているようだ。

「ヘッドホン?」
「そう!」

彼女と付き合うにはこれくらいは最低必要だ。

「一緒に探してあげるよ」

“探してあげようか?”ではないこともポイントだ。
口を滑らせるとどんな結末が待っているやら・・・。

「そう・・・そう言うなら」

彼女の気の強さは僕にとっては心地よく感じる。

(No.976-2へ続く)

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[No.975-2]話したいこと

No.975-2

「教材?」
「うん、後で知ったんだけど・・・」

いわゆるセールスマンから買ったらしい。
今の時代、死語に近い売り方かもしれないが・・・。

「一冊、二冊・・・とかそんなレベルじゃなくて」

相当な量だったことを覚えている。
金額こそ聞かなかったが、安い買い物ではないことくらい分かる。

「やっぱり、心配だったんじゃない?」
「そうだとは思うんだけど・・・」

でも、正直に言えばそれにはほとんど手を付けなかった。
最初こそ興味をそそられたが、三日坊主もいいところだった。

「それじゃ・・・」
「でも、受験は上手くいった」

自分に見合った学校を選んだこともあって・・・。

「じゃその本は?」
「さりげなく捨てたんだ」

中身を見られる前に紐で縛って、古新聞と共に回収に出した。
その時はすごい罪悪感に襲われた。

「結果オーライとは言え・・・」
「それに母親が勝手に買ったとは言え・・・」

結局、それについて母親に詫びる機会を失った。

「そんな僕なんかのために大枚をはたいてさぁ・・・」
「別に今からでも遅くないんじゃない?」
「・・・だ、だよな!」

今度、実家に帰ったら話してみようと思う。
やさしく微笑む遺影の前で。
S975
(No.975完)
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[No.975-1]話したいこと

No.975-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「普通・・・ね」
「だから言ったろ!?」

中学生の頃の通知表を見ている。
そこには至って“普通”の数字が並んでいる。

「得意な科目は?」
「みれば分かるだろ!?」

オール3だから得意も不得意もない。

「ひとつくらい5とかあってもいいのにね」
「嫌味か、それ?」

けど、それはそれで一理ある。
勉強は出来なくても体育や美術は優れているとか・・・。

「学習塾とかは?」
「ううん、行ったことない」

理由は色々あったと思う。
そもそも僕が勉強に興味を持っていなかったことが大きい。

「別に嫌いだったわけじゃないぞ!」
「それなりに勉強はしてた・・・けどな」

さすがに学校の授業だけではついていけない部分もある。
それは理解していた。

「でも、それ以上どうかしたいとか欲もなくて」

それを親は分かっていたと思う。
都合よく言えば子供の意志を尊重してくれていた。

「それでも受験時期になるとさすがにね」
「行ったの?」

そんなある日、母が僕のために学習教材を用意してくれた。

(No.975-2へ続く)

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ホタル通信 No.426

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.508 男女の違い
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

今では珍しいタイプの小説かもしれませんね。冒頭に結論を持ってきて、それに追いつくように物語が進んで行きます。

実話度は低めですが、実際に似たようなシチュエーションがありました。小説では恋人同士の設定ですが、本当は単なる同僚です。同僚のまま話を進めても良かったのですが、冒頭と言いますか、ラストを際立たせたかったため、恋人同士にしたような記憶があります。
単なる同僚には違いないのですが、恋心が全くなかったと言えば嘘になります。だからこそ、こんな感じの小説になったのでしょうね。

ただ、小説のポイントである冒頭(ラストも同じ)で何を言いたかったのか、何を伝えたかったのかは記憶が曖昧です。
強い女性、決意、旅立ち、そして別れ・・・色々なキーワードが思い浮かびますが、どうもしっくりきません。
当時、何を想いこの小説を書いたのでしょうか・・・自分で自分に問うています。

時々こんなムーディな小説を書くことがあります。自分の中では騒がしい場所ほど孤独を感じます。まるで、そこだけ時間が止まったような感じです。
とても小さな物語がそこで繰り広げられそして泡のように消えてて行く・・・今日もどこかで。
T426
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[No.974-2]After Tone

No.974-2

「ったく・・・」
「大事に扱ってよ」

しばらくすると懐かしい曲が流れてきた。
数えきれないくらい聞いた曲だ。

「どう?」
「どう・・・って・・・」

当時、私にとっては歌詞が大人過ぎた。
そのアーティスト自体、素敵な大人の女性だったからだ。

「今なら少しは理解できる・・・かな」
「へぇ~そうなんだ?」

付き合っていた彼と別れた。
フラれたのではなく私からフッた形になった。

「なのに、私の方が引きずったままで」
「そんな時、このCDに出会ったの」

彼はすぐに新しい彼女をみつけた。
それが私に追い打ちをかけた。

「そう言えばそうだったわね・・・」
「で、今はどうなの?」

今はもう未練はない。
その証拠に、そのCDがあることさえ忘れていた。

「もう私には必要ないよ」
「そう、それを聞いて安心したよ」

今までの行為は友人なりの心配の仕方だと解釈しておこう。
あえてそのCDの話題を振ってくれたということで。

「何ならあげるよ、そのCD」
「ううん、いらない・・・持ってるから」
S974
(No.974完)
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[No.974-1]After Tone

No.974-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ん?」
「どうしたの?」

友人が何か見つけたようだ。
とは言っても今はそんな場合じゃない、本当は。

「このCD懐かしいね!」
「ちょ、ちょっと・・・」

さっきから手伝ってるのか邪魔してるのか分からない。
何かにつけ手が止まる。

「まだ持ってたんだ?」
「別にいいでしょ!?」

高校生の時に買ったCDだ。
でも、その頃に発売されたものではない。

「やっぱり忘れられないんだぁ?」
「何によ、その“だぁ”って!?」

言い方が引っ掛かる。
少なくとも心配されているようには聞こえない。

「まぁ、そんなに突っかからないでよ」

そう仕掛けているのは友人の方だ・・・と言いたい。

「ねぇ・・・久しぶりに聞いてみない?」
「今!?」

繰り返すが今はそんな場合じゃない。
引っ越しがもう明日に迫っているからだ。

「パソコンは最後にしまうんでしょ?」
「まぁ、そうだけど・・・あなた・・・」

全てを答え終わる前にすでにパソコンの前に座っていた。
間髪入れずに“カチャリ”とトレーが開く音が聞こえた。

(No.974-2へ続く)

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[No.973-2]ここにも春が

No.973-2

それにしても桜のピンクと空の青さがマッチしている。
やはり、桜はこうやって見上げるにかぎり限る。

「ほら、あれなんて!」

他の枝よりも、ピンク色が濃い花が咲いている。
そうなるともちろん・・・。

「“映え”だね!」

スマホを構え、チャンスを伺う。
風に揺られて、なかなかシャッターが切れない。

「もぉ・・・」

今日はやや風が強い。

「仕方ない・・・ちょっと待つかな」

急いでいるわけでもない。
待てばいいだけの話だ。

「そうそう!あなたも撮ったら?」

桜を見上げるのに夢中で、すっかり友人のことを忘れていた。
その時、風が止んだ。

「チャーンス!」

まさしく奇跡の一枚が撮れた。

「あなたも撮れた?」
「撮れたわよ」
S973
(No.973完)
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[No.973-1]ここにも春が

No.973-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ようやくだね」
「そうだね」

多くの桜で開花が始まった。
殺風景だった枝もようやく色付き始めた。

「やっぱりこれがないとね!」

やはり桜が咲かないと春が来た気がしない。
この感情は決して私だけじゃないと思う。

「ねっ!そうでしょ!」

それにしても、この桜の木は樹齢何年だろうか・・・。
他の桜の木と比べても貫禄があり過ぎる。

「ほんと立派な桜だねぇ」
「まるで“主”って感じね」

それこそ神が宿る木・・・そんな風にも見えなくもない。

「ねぇ、ねぇ、どう思う?」

友人に同意を求める。
ゲーム好きの彼女なら、こう答えるだろう。

「村にある“伝説の木”みたいでしょ?」

言わば村の長老と似たような立場にある。

「この木は何でも知っている・・・なんてね!」

私も随分と友人に毒されたものだ。
すっかり、ゲームの世界観を理解している。

(No.973-2へ続く)

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ホタル通信 No.425

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.470 また次の夏も
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

タイトルを見て自分が想像していた内容と違うことに驚きました。時々こんなことがあります。

さて、冬のホタルでは命がテーマになっている小説が少なくありません。人はもちろん、人知れず消えていく、虫たちにそれが向けられていることもあります。
特に夏の風物詩であるセミは何度となく登場しています。あえて“奴ら”と呼びますが、奴らと出会うのは決まって、その命が消えようとしている時です。
でも、そうですよね?元気な奴らを捕まえるにはこちらも本気を出せないといけません。ですから、必然的にそうなってしまうわけです。

今回のようにベランダやエレベーターホールで出会うことが多いですね。異質な場所に居る・・・というか迷い込んだというべきか、とにかく、気付きやすい場所に居ます。
別に虫が好きでもなく、もちろん特別な感情などこれっぽっちも持ち合わせてはいません。でも、あれだけ騒がしかった奴らの弱々しい姿を目にすると、さすがの私も、無視するわけには行かなくなります。
別に善人ぶってるわけでもなく、ましてや仏の心を持ち合わせているわけでもありません。ただ何となく、心に響くものがあります。

小説ではベランダの植物の茎に・・・としていますが、実際は地上の木に引っ掛けました。小説に書いたように脚の構造上、かろうじてそうすることができました。
ラスト付近のカラオケのくだりは全て創造です。これについては当ブログの主旨である、“悲しい終わりはない”に準じたものです。

もう少し先になりますが、また今年も始まりますね。頼むから私の前にはもう現れないでくださいね・・・でもそれはそれで寂しいかもしれません。
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[No.972-2]嫌いな理由

No.972-2

「そうなの!?」
「こんなに美味しいのに!」

そう言うと、もう一口、パクついた。

「これ系はダメなわけ?」
「ううん、それだけ嫌い」

好き嫌いが分かれるであろう、春菊だって食べられる。
それが嫌いな理由が味ではないからだ。

「今の季節、一番美味しいじゃん!」
「だから余計に嫌いなの!」

就職のため、地元を離れた。
それからというもの、”野生”のそれを見かけたことがない。

「野生?」
「まぁ・・・広い意味では野菜は全部"野生”なんだろうけど」

つまりこういうことだ。
私にとってそれは、道端に勝手に生えている雑草に近い存在だ。

「実家のすぐそばの土手に・・・」

それこそ食べきれないほど生えている。

「・・・そうなんだ」
「そう!分かってくれた?」

正確に言えば嫌いなのではなく、食が進まない。
どうしても雑草を食べているようにしか・・・。

「知らなかった・・・」

美味しそうに食べる友人には悪いがそういうことだ。

「・・・そんなに生えてるなんて」

友人の瞳の奥が輝いて見えるのは気のせいだろうか?
S972
(No.972完)
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[No.972-1]嫌いな理由

No.972-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
どうしても違和感を感じずにはいられない。

「何よ・・・」
「私の顔になんか付いてる?」

友人がベタな反応をしてきた。
まぁ、そうさせているのは私のせいだが・・・。

「ごめん、ごめん!」
「美味しそうに食べるんだなぁ~と思って」

実際、なんでも美味しそうに食べる。

「そうかしら?」
「褒めたってあげないわよ」

普段なら、食い付くところだ。
でも、今は"あげる”と言われてもお断りだ。

「いらないわよ」
「へぇ~、珍しいじゃん」

友人の影響で私まで食いしん坊のレッテルが貼られている。

「べつに珍しくないわよ」
「まぁまぁ・・・そう言わずに」

逆にそれを勧めてきた。
そこがなんとも憎らしい。

「い、いらないわよ、マジで!」
「・・・嫌いだっけ?」

ようやく話が収束しそうだ。

「そう!嫌いなの!」

でも、嫌いな理由は味ではない。

(No.972-2へ続く)

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[No.971-2]飛べない鳥

No.971-2

「怖がらせたらあかんよ」
「ごめん、ごめん」

そうこうしている内に、その鳥が動き始めた。
やはり、怪我をしているらしい・・・歩き方が変だ。

「なんだか、びっこひいてない?」
「せやね」

歩いていると言うより、ピョコンと飛び跳ねている感じだ。
それも片足だけで・・・。

「・・・どうする?」
「う~ん」

このままだと、大型の鳥や猫に狙われるだろう。
もちろん、心無い人間にも。

「とりあえず、捕まえてみようか?」

これで捕まってしまうようなら、保護が必要だろう。
幸いにも、近くに動物病院がある。

「うん!分かった」
「じゃ、そぉ~と・・・」

と、更に近づいて手を伸ばした瞬間・・・。

「あっ!」
「あっ・・・」

大空高く飛んでいってしまった。

「何だよ!元気じゃん!」
「心配して損したよ、なぁ?」

彼女に同意を求める。
でも、空を見つめたまま返事がない。

「・・・」
「大丈夫だよ、きっと!」

目の前の彼女がそうであったのと同じように。
S971
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[No.971-1]飛べない鳥

No.971-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ?」

彼女が急に視界から消えた。
けど、すぐさま足元でしゃがみこんでいるだけと分かった。

「どうしたの!?急に・・・」
「そんな大きな声、出さんといて」
「ご、ごめん・・・」

意味も分からず、とりあえず謝ってしまった。
僕が何かしたとでも言うのだろうか・・・。

「それより、見てん・・・」

そう言うと、目線の先を指差す。

「・・・あっ」
「せやろ?」

一羽の鳥が地面で休んでいる。
休んでいる・・・と言う表現が正しいかどうかは別にして。

「よく分かったな!?」
「目は良いほうやねん!」

雑草に紛れるような感じで休んでいる。
さすがに鳥の種類までは分からない。

「何してるんだろうね」

野生を相手にしているわりには距離が近い。
2、3歩あるけば手が届きそうな距離だ。

「怪我・・・してるんやろか?」
「かもしれないな」

発見してから、数分は経過しているはずだ。
それでも一向に逃げる気配がない。

「もうちょっと近づいてみようか」

気持ち前に一歩踏み出す。
さすがに、こちらが気になるようだ。
地面をついばむのをやめ、こちらを凝視している。

(No.971-2へ続く)

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