[No.968-2]サプライズ
No.968-2
「それが“誕生日ですよね?”なんだもん!」
二人ともキョトンとしたまま、“はい”と答えるので精一杯だった。
その後、喜びがジワジワと湧いて出て来た。
「あの人、支配人だよね?」
「多分そうだろうな」
幸いにも歌は無かった。
もしかしたら、これも気遣いだったのかもしれない。
「話は戻るけど、注目されるのも悪くないね」
「逆に良い思い出になったくらいだな」
店の人が記念撮影を申し出てきた。
もちろん、それに応えた。
「まぁ・・・照れ臭かったけどな」
「私もよ」
店の粋な計らいで、二軒目の店でも話題に事欠かない。
今でも“興奮冷めやらぬ”といった感じだ。
「でも、不思議よね・・・」
食事中、誕生日の話をした記憶はない。
もし、話題が出たとしても、それが“彼女”の話かは分からない。
へたなサプライズはリスクが高い。
「そうね、“違います”なんてこともあるからね」
「だから、確実に誕生日だと分からないと・・・」
とは言え、四六時中、客に張り付いていることもできないだろう。
残念ながら、これについては謎として残りそうだ。
「とにかく・・・もう一度乾杯しようぜ!」
「うん!」
あらためてワイングラスを持ち上げる。
「お誕生日おめでとう!」
「ありがとう!」
| 固定リンク | 0
「(039)小説No.951~975」カテゴリの記事
- [No.975-2]話したいこと(2020.04.17)
- [No.975-1]話したいこと(2020.04.16)
- [No.974-2]After Tone(2020.04.14)
- [No.974-1]After Tone(2020.04.12)
- [No.973-2]ここにも春が(2020.04.10)
コメント