[No.969-2]お互い大変ね・・・
No.969-2
悟られないようにさらに断片的な会話が続く。
ようやく合図を送った主旨が見えて来た。
「それに、もうひとりは・・・」
「・・・ほんとだ」
カキフライの定食だろう・・・確かメニューにもあった。
それにしてもかなりの量だ。
「意外・・・なんていったら怒られるね」
「・・・そうよ」
トンカツやカキフライは若者だけの食べ物じゃない。
分かっているけど、何だか“負けた”気分だ。
「それに引き換え私たちは・・・」
「あはは・・・だね」
本当はそれを食べたいのに、我慢している。
魚はそれほど好きじゃない・・・お互い。
「注文し直す?」
注文してからそれほど時間は経っていない。
今ならまだ間に合うかもしれない。
「ううん・・・調理に入っていたら悪いし」
店に迷惑は掛けたくない。
「今度頼もうよ」
「そうね、た、たまにはいいよね?」
自分で自分に言い聞かせているようだ。
「ん?」
また、友人が合図を送ってきた。
今度は、反対の席だ。
「お互い大変ね・・・」
若い女の子が頼んだ料理が運ばれてきた。
私たちよりももっとヘルシーそうな料理だった。
(No.969完)
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