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2020年3月

ホタル通信 No.424

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.480 望遠鏡
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

小説の内容に直接関係しませんが、この頃は登場人物に名前を付けていたんですね、自分で言うのも何ですが。

名前についてはいつの頃からか付けなくなりました。理由は簡単です。面倒になったからです(笑)
さて、本題に入ります。話の主軸である望遠鏡を雑誌の付録として手に入れたのは事実です。冬のホタルでは、星とか宇宙とかは比較的扱われるテーマです。今回の小説もこの流れだと思って下さい。

実は小説に書いているほど月の表面は見えていません。小さいながらクレーター・・・さすがに無理でした。
それでも地上から肉眼で見るよりは遥かによく見えていました。
実話度が20%なのは、これらだけが事実であり、奈央(なお)とのやりとりは全て創造の産物です。
ただ、全くの創造でもなく、彼女が星が好きだったせいもあり、自然とこのような小説が生まれました。
タイトルだけではどんな小説か思い出せなかったのですが、読み直してみて、ようやく記憶がよみがえってきました。
もしかしたら「こんな風になればいいな?」と考えていたのでしょうね。

これと言って、とがった特徴がない小説で気の利いたオチでもありません。でも、個人的には大変好きなラストです。
普通の話をちょっとだけ輝かせて話を締め括る・・・今でも心がけていることです。
T424
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[No.970-2]ここは私の場所

No.970-2

「君はいつも右だったの?」

ちょっと意地悪な質問を投げてみた。
多少なりとも興味があるからだ。

「それって、右左が聞きたいの?」
「それとも、恋愛経験?」

どうやら見抜かれていたようだった。
後者の意味が強いからだ。

「えっ・・・まぁ・・・どっちも・・・」
「ふふふ、正直ね・・・私はね・・・」

右左については、彼女も覚えていないと言う。

「だって意識したことないもん!」

むしろ覚えている方が不自然だろう。

「で、後者も聞きたい?」
「・・・いや、やめとく」

過去を詮索するのはよくない。
それに聞き方も卑怯だ。

「真面目なんだから」
「そう、からかうなよ・・・」

同じ大学内に元彼が居る・・・そうなれば意識せざるを得ない。
僕の場合がそうだからだ。

「でもね」
「あなたの元カノがここに居ることは知ってるよ」

広いようで狭いのが大学のキャンパスだ。
どこかで見られていたらしい。

「そ、そうなんだ・・・」
「どこの誰かは知らないけど、いつも右側を歩いてたよね?」
S970
(No.970完)
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[No.970-1]ここは私の場所

No970-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「こっちに来れば?」

彼女が道路側を歩いている。
歩道を歩いているとは言え、こちらの方が安全だ。

「いいよ、こっちで」
「危なくないか?」

最近、物騒な事故も多い。

「大丈夫よ、でもありがとう」
「それならいいけど」

そう言えば、必ず彼女は僕の右側を歩く。
別にそう決めたわけでもない。

「右?」
「そう言えばそうよね」

彼女も特に意識していなかったようだ。
それについては僕も同じだ。

「一度位置が決まると・・・ね」
「何だか、おさまりが悪くて」

確かにそうだ。
彼女に左を歩かれると、僕も何だか落ち着かない。

「まぁ・・・そうだな」
「でしょ?」

例え左側に立ったとしても、自然にその形になる。

「不思議ね」
「これが僕たちの形じゃない?」

今まではどうだったか・・・。
正直覚えていない。

(No.970-2へ続く)

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[No.969-2]お互い大変ね・・・

No.969-2

悟られないようにさらに断片的な会話が続く。
ようやく合図を送った主旨が見えて来た。

「それに、もうひとりは・・・」
「・・・ほんとだ」

カキフライの定食だろう・・・確かメニューにもあった。
それにしてもかなりの量だ。

「意外・・・なんていったら怒られるね」
「・・・そうよ」

トンカツやカキフライは若者だけの食べ物じゃない。
分かっているけど、何だか“負けた”気分だ。

「それに引き換え私たちは・・・」
「あはは・・・だね」

本当はそれを食べたいのに、我慢している。
魚はそれほど好きじゃない・・・お互い。

「注文し直す?」

注文してからそれほど時間は経っていない。
今ならまだ間に合うかもしれない。

「ううん・・・調理に入っていたら悪いし」

店に迷惑は掛けたくない。

「今度頼もうよ」
「そうね、た、たまにはいいよね?」

自分で自分に言い聞かせているようだ。

「ん?」

また、友人が合図を送ってきた。
今度は、反対の席だ。

「お互い大変ね・・・」

若い女の子が頼んだ料理が運ばれてきた。
私たちよりももっとヘルシーそうな料理だった。
S969 
(No.969完)
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[No.969-1]お互い大変ね・・・

No.969-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ん、なに?」

友人がしきりに顔を横に動かしている。
何か合図を送っているようだ。

「もぉ・・・ほら・・・と・・・なり・・・」

今度は小声も加わった。
どうやら隣を見ろという合図らしい。

(なにかあったっけ?)

隣には、私たちよりも先に女性が二人座っていた。
おばさんと言うより、おばあちゃんに近い。

「わ、わかったから・・・」

さりげなく隣に目を向ける。
特に・・・変わったところはない。

「普通・・・よね?」
「じゃなくて、料理よ、料理」

隣に悟られないためだろう、断点的な会話が続く。

「・・・料理?」

この店は魚料理に定評がある。
メニューのほとんどは魚がメインだ。
そのせいもあって、特にシニアの人に人気がある。

「料理ねぇ・・・ん?」
「ん?」

思わず二度見してしまった。

「逆じゃん!?」
「でしょ!」

どうやら食べている料理のことを言いたかったらしい。

「・・・カツだよね?」
「うん」

(No.969-2へ続く)

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ホタル通信 No.423

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.485 空の彼方へ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

肝心の“何を見上げているのか”は、最後まで伏せたままです。特に深い意味はなく、物語に大きく関係しないため外しました。

見上げているのは、“あべのハルカス”です。ほぼ真下に歩道橋がありますので、そこで見上げている設定です。
この小説を一言で言えばアンニュイな状況を描いたものです。
最近、あまり書かなくなったタイプの小説です。
作者にとっての静かさは、小説のように雑踏の中で感じることが多く、本当に静かな場所ではそれを感じることがありません。
もう少し闇っぽく表現するとすれば、人が多ければ多いほど、孤独感があると言うことです。この小説はそんな気持ちを描いていると言えますね。
なぜ描いたのか、明確な理由は覚えていません・・・というより多分、理由はなかったと思います。そんなこんなで、どうにも掴みどころがない小説になってしまうので、ラストは恋バナ的な展開にしています。
まぁ、冬のホタルにとっては典型的なパターンですが、いつもオチを考えずに書いている割には、そこそこ収まりがいい小説だとは思っています。

あの時、ビルを見上げて何を想っていたのでしょうか?自分に問うてみたいですね。もしかしたら、タイトルの通り、空の彼方に何かを感じていたのかもしれません。
T423 
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[No.968-2]サプライズ

No.968-2

「それが“誕生日ですよね?”なんだもん!」

二人ともキョトンとしたまま、“はい”と答えるので精一杯だった。
その後、喜びがジワジワと湧いて出て来た。

「あの人、支配人だよね?」
「多分そうだろうな」

幸いにも歌は無かった。
もしかしたら、これも気遣いだったのかもしれない。

「話は戻るけど、注目されるのも悪くないね」
「逆に良い思い出になったくらいだな」

店の人が記念撮影を申し出てきた。
もちろん、それに応えた。

「まぁ・・・照れ臭かったけどな」
「私もよ」

店の粋な計らいで、二軒目の店でも話題に事欠かない。
今でも“興奮冷めやらぬ”といった感じだ。

「でも、不思議よね・・・」

食事中、誕生日の話をした記憶はない。
もし、話題が出たとしても、それが“彼女”の話かは分からない。
へたなサプライズはリスクが高い。

「そうね、“違います”なんてこともあるからね」
「だから、確実に誕生日だと分からないと・・・」

とは言え、四六時中、客に張り付いていることもできないだろう。
残念ながら、これについては謎として残りそうだ。

「とにかく・・・もう一度乾杯しようぜ!」
「うん!」

あらためてワイングラスを持ち上げる。

「お誕生日おめでとう!」
「ありがとう!」

謎が溶けた瞬間だった。
S968
(No.968完)
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[No.968-1]サプライズ

No.968-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
ドラマにでも出てきそうなシーンを体験した。

「ほんと、ビックリしたね!」
「あぁ、まさしくサプライズだったよ」

さっきまで、彼女の誕生日を祝っていた。
何度か訪れたことがある店だった。

「でも、どうして分かったんだろうね?」
「そうなんだよな・・・」

特別な日には、店から無料でデザートが提供される。
そのこと自体は知っていた。

「予約した時には知らせてないんでしょ?」
「そうだよ、恥ずかしいって言ってただろ?」

無料のデザートは魅力的だ。
けど、明らかに特別な日と分かってしまう。

「目立っちゃうもんね」

誕生日ならバースデーソングを歌われ、一躍時の人になる。
それはそれで照れ臭い。

「でも・・・ほんとに知らせてないの?」
「うそじゃないぞ!?」

確かに、サプライズを狙うことはできた。
けど、僕も彼女も注目されることを苦手としている。

「そう・・・」
「でも、注目されるのも悪くなかったね」

食後にコーヒーを注文した。
しばらくしてから、持ってきたのが例のデザートだった。

「そうだな」

それは頂上に花火をあしらったパフェだ。
無料とは思えないほどのボリウムがあった。

「最初は“誰か記念日なんだぁ~”って思ってた」
「僕もだよ」

それがテーブルに運ばれてきた時は間違いだと思った。

(No.968-2へ続く)

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[No.967-2]気が早い桜

No.967-2

「せっかくだから、他にも見てまわろうよ!」
「見るまでもないだろ?」

彼がとどめを刺してきた。

「ほら、向こうの方は分からないじゃん!」
「そうか?俺には咲いてないように見えるけどな」

並木はかなり遠くまで続いている。
だから、可能性はゼロではない。

「もし咲いてたらラッキーじゃん!」
「良いことあるかもね!」

強引だけど、桜自体にはとても良いイメージを持っている。
少なくともアンラッキーなアイテムではない。

「行ってみようよ!」
「・・・そこまで言うなら」

渋々ながらも二人で歩き始めた。

「やっぱり、咲いてないね・・・」

期待を込めて歩き始めたものの、やはり寂しい枝ばかりだ。
そろそろゴールも近い。

「ごめん・・・ここまで来たのに」
「別にいいさ」

さっきまでとは態度が違った。
よほど私の落胆ぶりを気遣ってくれてるのだろう。

「ここに来るまでに咲いてただろ?」
「笑顔という桜が」
S967 
(No.967完)
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[No.967-1]気が早い桜

No.967-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「やっぱり、まだ見たいね・・・」

近くに寄らなくても咲いていないのは分かる。
見渡せば周り一面、寂しそうな枝ばかりだ。

「そりゃそうだろ?」
「だってぇ・・・」

暖冬の影響でいち早く桜が咲いたとのニュースを見た。
市内の“どこか”で桜が咲いたと・・・。

「確かに今日も暖かいけど」
「さすがに桜は早いだろ?」

そう言われると身もふたもない。

「それに肝心の場所が分からないんじゃ・・・ね」
「そう畳み込まないでよ・・・」

勢いだけでここに来た。
市内で最も有名な桜の名所だ。

「ここだと思ったんだけどなぁ」
「まぁ、可能性は高いけどな」

数本程度、梅の花なら咲いている。
ただ、これだけの敷地には無勢に多勢と言った感じだ。

「どうする・・・帰る?」
「う、うん・・・」

そもそもなぜ桜を見に行く気になったのだろうか。
時期が来れば、いくらでも見れるというのに。

(No.967-2へ続く)

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ホタル通信 No.422

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.455 ネオンカラー
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

ネオンカラーにまつわる高校時代の話は事実です。思い出すとかなり恥ずかしい服装でした。

作者の性別や年齢が分かってしまうので、あまり詳細には書けませんが、当時、確かにそんな感じの色が流行っていました。
その流行に乗ったわけではないのですが、おしゃれを気にする年頃でしたからごく自然にその服を選んでしまったと思います。

海に出掛けた・・・と言ってもたかが高校生です。彼女を自転車の後ろに乗せ出掛けていったわけですが、そんなにロマンティクなものではありませんでした。「お尻が痛くて大変だった」と風のうわさで知りました。
そりゃそうですよね、車で出掛けるならまだしも、そんなに距離が縮まっていない二人がそれも自転車で出掛けるには“海”は敷居が高すぎます。
この一件だけのせいではありませんが、別れる原因の引き金になった可能性はあります。

生意気な発言ですが、彼女から告白されて付き合うようになりましたから、立場としては僕の方が上した。
でも、別れる際には「思っていたような恋ではなかったと」と言われたのを今でも覚えています。
僕を気遣っての発言だと思いましたね・・・なんせ、当時は硬派を気取っていましたから、普通の女子なら退屈しないわけはありませんからね。
T422
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[No.966-2]白いワンポイント

No.966-2

「あなたにしては、良い買い物したじゃん!」
「もぉ~どういう意味よ!?」

・・・と、怒ってはみたものの、もちろん本気ではない。
逆にいじられて気分がいいくらいだ。

「特にこのオレンジ色のワンポイントが・・・」

オレンジ色は私の好きなカラーだ。
ラッキーカラーと言ってもいい。

「ほら、ベースの色にアク・・・」
「・・・オレンジ?」

彼女が話に割って入ってきた。

「ほら、ここのオレンジ」
「もちろん、分かってるわよ」

ここに来て話がかみ合わなくなってきた。
ワンポイントはオレンジ色しかない。

「じゃなくて、ほら、その白い・・・」
「ナイキのマークのようなワンポイントよ」

(・・・白い?)

この傘に白色の部分はないはずだ。
それとも私が気付いていないだけだろうか?

「ここよ、ここ」
「ん?あっ、ほんとだ・・・って、これ・・・」

お披露目初日で、おそらくアイツの餌食となった。
Photo_20200312212702
(No.966完)
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[No.966-1]白いワンポイント

No.966-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「おはよう!」

今日はあいにくの雨だが、逆に気分がいい。
久しぶりに傘を買い替えたからだ。

「あれ?その傘・・・」

さすが友人・・・察しがいい。

「分かるの?」

しらじらしく答える。
もちろん、気付いて欲しかったわけだが。

「おしゃれじゃん!」
「でしょ!」

単色ではなく、ワンポイントで色が付いている。
控えだが、それがかえって良いアクセントになっている。

「特にそのワンポイントがいいね!」
「さすが、おしゃれ番長!分かってるねぇ~」

悔しいけど、おしゃれ度は彼女の方が上だ。
だからこその嬉しい発言だ。

「どこで買ったの?」
「これはねぇ・・・」

しばらく私の自慢話が続いた。

「・・・そんなに高くもなかったし」
「ハイブランドでもないんだけどね」

ブランド品だとそれだけで評価が高くなる。
安くて良いもの・・・これこそおしゃれ度が試される。

(No.966-2へ続く)

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[No.965-2]女優顔

No.965-2

「同じ車両にすごい美人が居てさぁ・・・」

(なにぃ~!)

「君もそうだろ?同じ時間、同じ車両に乗り込む」
「そ、そうだけどさぁ・・・」

聞けば、単に美人というわけじゃないらしい。

「何だろう・・・“女優顔”って言えばいいのかな?」
「すごく“映える”顔してて」

話をしている最中も満面の笑みだ。
よほどの人物らしい。

「ふ~ん・・・それなら毎日笑顔にもなるわよね!」
「な、なんだよ?俺、怒られてる!?」

男が美人に弱いのは承知の上だ。
けど、今回は許しがたい。

「良かったわね!満員電車に“女神”が居て!」

彼がキョトンとした顔をしている。

「あっ・・・ごめん・・・」

つい感情的になってしまった。

「けどさぁ・・・なんで知ってるの?」
「俺が電車の中でニヤケてること」

しまった・・・つい口を滑らせてしまった。
さっき“電車の中でも”・・・と、つい・・・。

「・・・ん?ニヤケテるの!?」

素直に“好きです”と言える日がくるのだろうか・・・。
S965
(No.965完)
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[No.965-1]女優顔

No.965-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
前から気になっていたことがある。
今日、それを確認してみることにした。

「ねぇ?」
「な、なんだよ・・・朝から」

いけない・・・少し警戒されている。
さりげなく話を進めて行こう。

「ほ、ほら、いつも笑顔じゃん!」
「電車の中でも」

満員電車に揺られているはずなのに毎朝、笑顔だ。
ある意味、仏のようにも見える。

「そう?意識してないけどな」
「私なんて・・・」

逆に鬼の形相だ。
何度足を踏まれて、睨み返してきたことか・・・。

「満員電車辛くないの?」
「そりゃ・・・ね、大変だけど・・・」

(大変だけど何?)

「まぁ、それ以上の幸せがあるからね!」
「なにそれ・・・」

こいつに彼女がいないことは知っている。
それ以外で幸せなことがあるのだろうか?

「聞きたい?」
「・・・まぁ、聞いてあげてもいいけどぉ」

願ってもいないチャンスだ。
ついでに何か進展があるかもしれない。

(No.965-2へ続く)

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ホタル通信 No.421

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.482 次の恋
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

実話度が示す通り、概ね事実です。事実と大きく異なっているのは彼女を呼び付けた方法です。

小説ではメールにしていますが、実際は手紙です。
当時、メールが一般的ではなかった時代でしたから、連絡手段と言えば電話か手紙でした。ですから、彼女が来るか来ないかは“賭け”のようなものでした。
話はそれますが、そう考えると昔は、待ち合わせするということは、かなり重みのある行為だったのかもしれませんね。簡単に相手に連絡を取ることができませんから、お互い是が非でも待ち合わせ場所に行かなくてはなりません。

冒頭書いた通り、ほぼ実話ですから、会話もほぼ再現できています。ただ、ラストの4行だけは創作しています。つまり、こんな会話はなかったわけです。
この部分は願望と言えば願望なのですが、絵空事というわけでもなく「言いかけて言えなかったセリフ」と表現できます。

さて、この小説のその後を書くとすれば、彼女とはこれっきりとなり、会うこともなく、もちろん連絡もとっていません。
もし、あの時、勇気を出して、そのセリフを口にしていたら・・・と考えなくもないですが、“言わなかった”からこそ、今の自分があると思っています。
T421
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[No.964-2]マーボー豆腐

No.964-2

「それで・・・話って?」
「今日のLINEでさぁ・・・」
「・・・うん」

いつになく神妙な表情だ。

(あれ?何か勘違いさせてる?)

「“マーボー豆腐だよ”と送ってくれたじゃん」
「・・・そうだけど?」

さっきとはまた表情が変わった。

「送ったLINE見てみなよ」
「えっ・・・」

何かを悟ったのか、恐る恐るLINEを確認している。

「これが何か?」
「よく見てみろよ」

いつも“マーボー”ではなく、“マァボー”になっている。

「・・・話はそれだけ?」
「そ、そうだけど・・・」

部屋から追い出されるまでにそう時間は掛からなかった。

あれから何とか仲直りはできた。
ただ、マーボーは作ってくれない。

『今晩は、チンジォロースだよ』

もう細かいことは気にしない。
食べることが先決だ。
S964
(No964完)
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[No.964-1]マーボー豆腐

No.964-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
彼女からlLINEが来た。
今晩、食事を作って待っているという。

「それにしても・・・プッ!」

思わず笑いが出てしまった。
“笑み”ではない・・・間違いなく“笑い”だ。

「とにかく行ってみるか」

そろそろ言っておいた方が良いだろう。
大きな恥をかかないうちに。

「今晩はいつものマーボーだよ」
「それ好きなんだよな!」

極端に言えば毎日でも食べたいくらいだ。
特に彼女の作るマーボー豆腐は絶品だ。

「どこで覚えたんだよ、これ?」
「昔、料理教室に通ってたんだ」

(昔ねぇ・・・)

ちょっと気になりもするが、今日はこれが目的じゃない。
そろそろある事実を伝えないといけない。

「今日・・・大切な話があるんだ」
「えっ!?」

驚きの表情と共に、なぜか赤ら顔になっている。

「ちょ、ちょっと待って!ちゃんと聞きたいから・・・」

料理の手を止めて、食卓テーブルの椅子に座った。

(No.964-2へ続く)

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