[No.962-1]柔らかな手~第三部~
No.962-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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「亡くなる前日に・・・」
ドラマでよく見かける装置が病室に備え付けられた。
「・・・私の時もそうだったよ」
「あの時は辛かったね」
数字と波形が嫌でも病状を知らせてくる。
看病する者にとっては、何とも憎らしい存在だ。
「それで、日付が変わった頃からかな?」
「酸素量が表示されなくなって」
聞けば、検出できないレベルにまで低下していると言う。
「で、そうこうしている内に・・・」
明らかに血圧が下がってきたのが分かる。
今までの最低血圧が最高血圧になり始めた。
「そこからは・・・」
「・・・うん」
憎らしいほど確実に数字が下がり始めた。
素人の自分でさえ、尋常な数字ではないと分かる。
「それから、1時間位してからかな・・・」
看護師が僕にこう言った。
“ご家族を呼んだ方がいいですよ”と。
「その時は僕が看病してたから」
父親と姉、弟は家に帰していた。
「でも、正直・・・迷ったよ」
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