« [No.962-1]柔らかな手~第三部~ | トップページ | ホタル通信 No.420 »

[No.962-2]柔らかな手~第三部~

No.962-2

「30分おきに血圧の数値が更新されるので・・・」

次の数値を見て判断しようと決めた。
でも、その間に容態が激変することも十分あり得る。

「それで?」
「腹をくくって、次の更新まで待ったよ」

そして、次の数値が出た瞬間、迷わずスマホを手に取った。

「覚悟を決めたんだ」
「・・・そう」

家族が到着したのは、夜中の3時半を回った頃だったと思う。

「それから1時間くらいしてからかな・・・」

その装置がけたたましい音と共に赤く点滅を始めた。
血圧は見るに堪えない数値になっていた。

「それに心電図って言えばいいのかな?」

心臓の鼓動を示す波形の間隔が広がり始めた。
音と赤い点滅はもう止めようがない。

「それから、数分後・・・だった」

音も点滅も止まり、病室に悲しいほどの静寂が訪れた。

「そう・・・」
「けどね」

ようやくこれで家に帰してあげることができると思った。

(一緒に帰ろう!)

家族みんなの心の声が病室にこだましたような気がした。
S962
(No.962完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| |

« [No.962-1]柔らかな手~第三部~ | トップページ | ホタル通信 No.420 »

(039)小説No.951~975」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« [No.962-1]柔らかな手~第三部~ | トップページ | ホタル通信 No.420 »