[No.960-1]柔らかな手~第一部~
No.960-1 No.950 半年先にあるもの
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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「・・・もう、落ちついた?」
「うん・・・ありがとう」
彼女だから素直に返せる。
それについては彼女の方が“先輩”にあたるからだ。
「残念だったね」
「仕方ないさ、早いか遅いかの違いだけだから」
母の余命宣告を聞いた時は、どこか他人事のようだった。
そんな風には見えなかったからだ。
「11月末頃で、余命半年って聞いたから」
「言葉通りだとすれば・・・」
そう・・・まだ随分先のことだと思っていた。
その時は母も元気だったからだ。
「それが、1か月もたたないうちに・・・」
容態が激変し、入院を余儀なくされた。
「お見舞いに行ったら・・・」
元気な母の姿がそこにはなかった。
笑顔は消え、険しい表情が印象的だった。
「ただただビックリしちゃって・・・」
「・・・だろうね」
少なくとも僕の記憶の中にはない母の姿だった。
それに想像さえしていなかった。
「だから、涙を堪えるのが大変だったよ」
病状を知っているだけに今にも崩れ落ちそうな自分が居た。
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「(039)小説No.951~975」カテゴリの記事
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