ホタル通信 No.420
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.960~962 柔らかな手
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性
何があったのかは読んでいただいた通りです。ただ、ここでも
作者の性別等は非公開ですが、小説上は男性の設定です。
三部作のタイトルですが、内容が内容だけに候補はいくらでも
ありました。その上でこのタイトルにしたのは、それこそ母の手
を握ったのが、・・・年振りだったからです。
記憶は定かではありませんが、私が最後に母の手を握ったの
は、小学生の高学年くらいだったと思います。中学生にもなる
と反抗期も手伝い、手を握るどころか、会話もままならない時
期がありました。
それから・・・年、こんな時に母の手を握りしめるとは考えても
いませんでした。ですから、最初はすごく照れくさかったのが
本音です。でも反面、すごく嬉しかったのも事実です。
手を握りしめるたび、涙が溢れて止まりませんでした。その頃
には会話することができず、僅かな反応を頼りにコミュニケー
ションをとっていました。
相当の痛みや苦しさがあったにもかかわらず、わがままのひ
とつも言わず懸命に向き合っていた姿は、私の人生観を大き
く変える姿でもあり、母が私にくれた最後の贈り物だったと思
っています。
いつ来るかも知れない“危篤の知らせ”に、日々怯えながら、
週末、お見舞いに行っていました。
転院先は最寄駅から徒歩で20分くらい掛かるのですが、この
時間も私の支えでもありました。
お見舞いに行ける、この道を歩んでいる・・・母がまだ生きてい
る証です。ですから、おかしな話ですが、このままこれが続け
ば良いとまで思っていたほどです。
誰もが通る道とは言え、経験するとそう簡単に割り切れるもの
ではありません。
他界後に、病中に書いたであろう、父、姉、弟、それぞれに宛
てた手紙が見つかり、今まで堪えていた悲しみが一気に爆発
したかのごとく泣きました。
それ以来、その手紙は封をしたままです。今の自分にはそれ
をもう一度見れるほど、気持ちの整理ができていません。
闘病中に被っていた二ット帽を形見としてもらい、手紙と共に
傍らにおいています。
今までよりも前を向けて歩けています。父のこと・・・心配しない
でください。今までありがとうお母さん。
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「(039)小説No.951~975」カテゴリの記事
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