[No.961-2]柔らかな手~第二部~
No.961-2
「それに、ありがちだけど・・・」
小さい頃の話もした。
あの時、こんなことを思っていた・・・さながら懺悔のようだった。
「それでいいんじゃない?」
「傍らに誰かがいるって、心強いものよ」
もう目が開かなかったから、情報源は音しかなかった。
声と話の内容で、僕と分かってくれていたと思う。
「ドラマとかではよく見掛けるシーンだけどね」
それを自分がするとは思わなかった。
なぜか、小さな頃の話になる。
「そりゃそうよ」
「私だって・・・」
彼女の話を聞いて納得できた。
母との共通の話題はせいぜい中学生までだった。
「特に働き始めたら・・・ね」
僕も彼女も、実家を離れて働き始めた。
当然、お互いの日常はそこで断ち切られる。
「そう考えると・・・辛いね」
「そうね、こんなに後悔するとは思わなかった」
そうこうしている内に、運命の日を迎えた。
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