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2020年2月

[No.963-2]夜のサギ

No.963-2

「多少、街灯があるから・・・」

周辺は、真っ暗闇ではなかった。
でも、川底まで光が届くほど明るくはない。

「夜もそんなことするんだ!ってビックリしたよ」

驚きと共に、野生のたくましさもみた気がした。
生きるために必死なのだと・・・。

「なるほど・・・」
「いやにあっさり同意するわね」

気持ち悪いくらい、反応が良い。

「で、獲物は獲れてたみたいだった?」
「さすがに、そこまでは・・・」

見えなかったというより、見ていなかった。
そこまで見ていられるほど暇でもない。

「そう・・・」
「なによ?」

急にテンションが落ちたように感じる。

「まぁ、どちらにしても、私たちと同じだね」
「ん?どういこと?」

同僚が意味深なことを言い放った。

「いいからいいから!」
「それより、早くしないとお店に遅れちゃうよ!」
S963
(No.963完)
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[No.963-1]夜のサギ

No.963-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「そんなドラマ、やってたっけ?」
「違う、違う!ドラマじゃなくて」

のっけから話が脱線している。

「なら・・・小説?」
「タイトルからすれば、サスペンス系ね!」

小説でも漫画でもない。
ついでに映画でもない。

「もぉ・・・話を最後まで・・・」

ここに来る前に、サギを見た。

「サギ?鳥の?」
「そぉ!似てるけど“詐欺師”じゃないの!」

よく通る道沿いに川が流れている。
それほど大きくはないが、普段から水鳥をよく見掛ける。

「その川に、居たの・・・さっき」
「鳥って、夜はダメだったんじゃなかった?」

専門家ではないが、私もそう思っていた。
実際、夜は見掛けない。

「居たくらいなら、驚きもしないけど・・・」

明らかに獲物を狙っている雰囲気だった。
川の中で直立し、時より、つつく動きを見せていた。

(No.963-2へ続く)

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ホタル通信 No.420

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.960~962 柔らかな手
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

何があったのかは読んでいただいた通りです。ただ、ここでも
作者の性別等は非公開ですが、小説上は男性の設定です。

三部作のタイトルですが、内容が内容だけに候補はいくらでも
ありました。その上でこのタイトルにしたのは、それこそ母の手
を握ったのが、・・・年振りだったからです。
記憶は定かではありませんが、私が最後に母の手を握ったの
は、小学生の高学年くらいだったと思います。中学生にもなる
と反抗期も手伝い、手を握るどころか、会話もままならない時
期がありました。

それから・・・年、こんな時に母の手を握りしめるとは考えても
いませんでした。ですから、最初はすごく照れくさかったのが
本音です。でも反面、すごく嬉しかったのも事実です。
手を握りしめるたび、涙が溢れて止まりませんでした。その頃
には会話することができず、僅かな反応を頼りにコミュニケー
ションをとっていました。
相当の痛みや苦しさがあったにもかかわらず、わがままのひ
とつも言わず懸命に向き合っていた姿は、私の人生観を大き
く変える姿でもあり、母が私にくれた最後の贈り物だったと思
っています。

いつ来るかも知れない“危篤の知らせ”に、日々怯えながら、
週末、お見舞いに行っていました。
転院先は最寄駅から徒歩で20分くらい掛かるのですが、この
時間も私の支えでもありました。
お見舞いに行ける、この道を歩んでいる・・・母がまだ生きてい
る証です。ですから、おかしな話ですが、このままこれが続け
ば良いとまで思っていたほどです。

誰もが通る道とは言え、経験するとそう簡単に割り切れるもの
ではありません。
他界後に、病中に書いたであろう、父、姉、弟、それぞれに宛
てた手紙が見つかり、今まで堪えていた悲しみが一気に爆発
したかのごとく泣きました。
それ以来、その手紙は封をしたままです。今の自分にはそれ
をもう一度見れるほど、気持ちの整理ができていません。
闘病中に被っていた二ット帽を形見としてもらい、手紙と共に
傍らにおいています。

今までよりも前を向けて歩けています。父のこと・・・心配しない
でください。今までありがとうお母さん。

ホタルより
T420
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[No.962-2]柔らかな手~第三部~

No.962-2

「30分おきに血圧の数値が更新されるので・・・」

次の数値を見て判断しようと決めた。
でも、その間に容態が激変することも十分あり得る。

「それで?」
「腹をくくって、次の更新まで待ったよ」

そして、次の数値が出た瞬間、迷わずスマホを手に取った。

「覚悟を決めたんだ」
「・・・そう」

家族が到着したのは、夜中の3時半を回った頃だったと思う。

「それから1時間くらいしてからかな・・・」

その装置がけたたましい音と共に赤く点滅を始めた。
血圧は見るに堪えない数値になっていた。

「それに心電図って言えばいいのかな?」

心臓の鼓動を示す波形の間隔が広がり始めた。
音と赤い点滅はもう止めようがない。

「それから、数分後・・・だった」

音も点滅も止まり、病室に悲しいほどの静寂が訪れた。

「そう・・・」
「けどね」

ようやくこれで家に帰してあげることができると思った。

(一緒に帰ろう!)

家族みんなの心の声が病室にこだましたような気がした。
S962
(No.962完)
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[No.962-1]柔らかな手~第三部~

No.962-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「亡くなる前日に・・・」

ドラマでよく見かける装置が病室に備え付けられた。

「・・・私の時もそうだったよ」
「あの時は辛かったね」

数字と波形が嫌でも病状を知らせてくる。
看病する者にとっては、何とも憎らしい存在だ。

「それで、日付が変わった頃からかな?」
「酸素量が表示されなくなって」

聞けば、検出できないレベルにまで低下していると言う。

「で、そうこうしている内に・・・」

明らかに血圧が下がってきたのが分かる。
今までの最低血圧が最高血圧になり始めた。

「そこからは・・・」
「・・・うん」

憎らしいほど確実に数字が下がり始めた。
素人の自分でさえ、尋常な数字ではないと分かる。

「それから、1時間位してからかな・・・」

看護師が僕にこう言った。
“ご家族を呼んだ方がいいですよ”と。

「その時は僕が看病してたから」

父親と姉、弟は家に帰していた。

「でも、正直・・・迷ったよ」

(No.962-2へ続く)

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[No.961-2]柔らかな手~第二部~

No.961-2

「それに、ありがちだけど・・・」

小さい頃の話もした。
あの時、こんなことを思っていた・・・さながら懺悔のようだった。

「それでいいんじゃない?」
「傍らに誰かがいるって、心強いものよ」

もう目が開かなかったから、情報源は音しかなかった。
声と話の内容で、僕と分かってくれていたと思う。

「ドラマとかではよく見掛けるシーンだけどね」

それを自分がするとは思わなかった。
なぜか、小さな頃の話になる。

「そりゃそうよ」
「私だって・・・」

彼女の話を聞いて納得できた。
母との共通の話題はせいぜい中学生までだった。

「特に働き始めたら・・・ね」

僕も彼女も、実家を離れて働き始めた。
当然、お互いの日常はそこで断ち切られる。

「そう考えると・・・辛いね」
「そうね、こんなに後悔するとは思わなかった」

そうこうしている内に、運命の日を迎えた。

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[No.961-1]柔らかな手~第二部~

No.961-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
足も手もかなりむくんでいた。
手で言えば、まるでグローブをつけているかのようだった。

「赤ちゃんの手のような感じだったね」

擬音で表すとすれば、“プニプニ”していた。

「いわゆる“水が溜まる”ってやつ」
「そう・・・大変だったね」

むくんでいるだけに、皮膚がピンと張り詰めていた。
それだけに、肌がつやつやしているのも印象的だった。

「だから、赤ちゃん・・・なのね」
「そういうこと」

ただ、血の巡りが悪いせいか、特に指先が冷たかった。
触れるたび、涙が溢れ出た。

「・・・会話はできた?」
「ううん、手を握り始めた頃からは・・・」

ごく小さくうなづく程度だった。
顔を近づけてやっと反応が分かるレベルだった。

「だから、答えを求めるような会話じゃなくて」

僕が一方的にしゃべるようにした。

「そうそう!日付を気にしてたから・・・」

時々、今日の日付と時間を告げた。

(No.961-2へ続く)

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[No.960-2]柔らかな手~第一部~

No.960-2

「それからと言うもの・・・」

お見舞いに行く度に容態が悪化しているのが分かる。
それも、かなり大きく・・・。

「そしたら、いつの間にか呼吸器付けてるし」

最初はチューブを鼻に付るだけの簡単なものだった。
でも、次に会った時には・・・。

「・・・マスク?」
「うん」

酸素量も限界まで増やしているという。
看護師にそう聞かされた。

「病院も替わることになったし」
「・・・緩和ケアね」

もう、手の施しようがないと前々から言われていた。
だから、そのタイミングで転院させた。

「お母さんには?」
「説明したよ・・・けど、その前に・・・」

自分で病院主催の説明会に出ていたという。
それは後になって知った。

「ただ、母には“緩和しながら治療しようね”ってことで」

実際、先進医療で治療できるように話を進めていたからだ。
それは母も承知していた。

「けど、それを受けるにしても体力が・・・ね」

その治療を待たず、母はほぼ動けなくなった。

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[No.960-1]柔らかな手~第一部~

No.960-1     No.950 半年先にあるもの

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・もう、落ちついた?」
「うん・・・ありがとう」

彼女だから素直に返せる。
それについては彼女の方が“先輩”にあたるからだ。

「残念だったね」
「仕方ないさ、早いか遅いかの違いだけだから」

母の余命宣告を聞いた時は、どこか他人事のようだった。
そんな風には見えなかったからだ。

「11月末頃で、余命半年って聞いたから」
「言葉通りだとすれば・・・」

そう・・・まだ随分先のことだと思っていた。
その時は母も元気だったからだ。

「それが、1か月もたたないうちに・・・」

容態が激変し、入院を余儀なくされた。

「お見舞いに行ったら・・・」

元気な母の姿がそこにはなかった。
笑顔は消え、険しい表情が印象的だった。

「ただただビックリしちゃって・・・」
「・・・だろうね」

少なくとも僕の記憶の中にはない母の姿だった。
それに想像さえしていなかった。

「だから、涙を堪えるのが大変だったよ」

病状を知っているだけに今にも崩れ落ちそうな自分が居た。

(No.960-2へ続く)

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