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2020年1月

[No.959-2]奇妙な踊り

No.959-2

「何だよ、笑ってるじゃん!」
「せやかて~」

正月らしい、何とも平和な時間が流れる。
それもこれも、こいつの存在が大きい。

「これ、どこに置いとく?」
「そうだな・・・」

せっかくなので、目につく所に置いておきたい。
縁起を担ぐ意味でも。

「車の中なんてどう?」
「“先住民”もいることだし・・・」

先住民は、ドアポケットにちょこんと居座っている。

「せやな・・・交通安全もあるしな」

関係ないけど、そういうことにしておこう。
雰囲気はそう遠くもない。

「行き先が決まって・・・めでたい!」

さっきよりも上機嫌だ。
それをつかむと、それが泳いでいるフリをし始めた。

「めでたい!めでたい!」

そう言いながら、体をユラユラと揺らして踊り始めた。

「・・・なに冷めてるねん!一緒に踊るで!」
「えぇー!そうなの!?」

奇妙な踊りから1年がスタートした。
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(No.959完)
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[No.959-1]奇妙な踊り

No.959-1    [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」
「・・・」

無言で見つめ合う。
とは言え、“ラブラブ”だからではない。

「いやぁ~めでたい!」
「ほんとだね」

何がめでたいのか、細かいことは気にしない。
菜緒(なお)と居るとこれが日常だ。

「あの時、何考えてたん?」
「それは菜緒と一緒だよ」

さっき、リラックマの店に寄った。
その時、あるぬいぐるみを見つけた。

「“これ欲しい!”ってこと?」
「そうだよ、だから買った」

彼女に無言でねだられたわけではない。
もちろん、見つめられたからでもない。

「俺も“欲しかった”からね」
「だって・・・プッ!」

かわいいのもあるが、どちらかと言えば笑える。
それに正月らしい“ネタ”だ。

「笑ろうたら失礼やん!」
「・・・プッ!」

彼女も堪えきれずに笑った。

(No.959-2へ続く)

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ホタル通信 No.419

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.490 すれ違い
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

ほぼ100%の実話です。脚色もほとんどありませんので、お約束通り、作者は語り手である男性とは限りません。

100%実話なので書いてある通りのことが起こりました。一度ならまだしも、二度も続けて直前に連絡が入りました。
彼女は知り合いで何度も会っている人なので、素直に受け入れても良かったのですが、なぜかそうすることができませんでした。
理由は簡単です。「体調が悪い」ということを疑っていたからです。もちろん、体調が前日から悪く、ギリギリまで回復するのを待った上での判断だったかもしれません。でも、そんな風に考える余裕も冷静さも欠けていました。

小説に書いている通り、出掛ける前なら素直に受け入れられていたかもしれません。諦めもつきます。
でも、上から目線の言い方になりますが、“わざわざ電車賃まで使って出掛けた”わけですから、何らかの結果が欲しくもなります。
それに話せませんが、別の理由もあります。出掛けてしまった以上、そうそう帰れない事情が・・・。

とにかく、その時は頭に血が上っていたことを今でも覚えています。
電話ではなく、メールかLINEでのやり取りでしたが、明らかに文字の“口調”が攻撃的でした。
自分を美化すれば、“それでも会いたかったから”となるわけですが前述した通り、当時の正直な気持ちは「うそを付いている」と考えていました。

今となっては、苦い経験として反省していますし、それを素直に受け入れられる年齢にもなりました。
T419
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[No.958-2]時代の流れ

No.958-2

「時代の流れだよね」

今の時代、自宅に居ながらレンタルできる時代だ。
それに、そもそもレンタル不要の時代でもある。

「そうだね」
「ネット経由で見られるし」

それも定額で見放題なら、こっちを選んだ方が良い。
特に私たちのようなヘビーユーザーは。

「けど、店で色々と物色するのが楽しいんだよね」
「言えてる!思わぬ出会いが待ってるからね!」

予告で見たものもあれば、全く知らないものまで・・・。
それに何度もパッケージに騙された。

「酷評するのもある意味、醍醐味よね」
「そうそう!悪口の言い放題!」

もちろん、そこには愛がある。

「で・・・現実問題どうする?」
「う~ん・・・」

想いを語ったものの結論は出ていない。
近所にレンタルショップがないからだ。

「電車に乗って行くのも何だし・・・」
「そうね、結構深刻な問題よね、私たちにとっては」

大袈裟だけど、すぐに答えが出そうにない。

「じゃあ、聞きに行こうか?店員さんに」
S958
(No.958完)
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[No.958-1]時代の流れ

No.958-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「えっ!?」

店の前に大きな張り紙がしてあった。

「ねぇ、知ってた?」
「・・・もしかして」

友人のことだ。
すでに目にしているはずだ。

「閉店するんだって」
「・・・みたいね」

言わずとも通じていたようだ。

「私なんか週に一度は通っていたもんね」

“行っていた”ではなく、“通っていた”ところに想いを感じる。
確かに私も“通っていた”からだ。

「横着して“お奨めは?”なんて聞くこともあったし」
「私なんて・・・」

映画のタイトルが思い出せない時、助けてもらった。

「ほら・・・こんな感じの俳優が出てる映画・・・なんてね」

まるで難しいクイズを出しているようだった。
それでもちゃんと答えてくれた。

「プロだよね」
「うん、言えてる」

そんな頼もしい店員が居た近所のレンタルショップが閉店する。

(No.958-2へ続く)

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[No.957-2]自然と文明の境界

No.957-2

「橋を架けるならもっと早くにしなさいよ!って感じ」

けど、橋が架かったお陰で周辺の経済は活性化した。
大袈裟だけど。

「私はね・・・正直言うとちょっとガッカリしてる」
「・・・そうなの?」

橋は地元の悲願だとばかり思っていた。

「私は昔の方が良かったわ」
「静かだったからね」

家の周辺は、いわゆる袋小路になっていた。
格好よく言えば、文明と自然の境界的な場所でもあった。

「その表現、ピッタリね!」
「確かに、ここで文明が終わりって感じだった」

文明を超えた先は、大自然そのものだった。

「まぁ、早い話・・・田舎ってことだけどね」
「あはは、そうそう!」

友達に言わせれば、橋が全てを変えたことになるだろう。
行き交う車と立ち並ぶお店がその答えだ。

「便利になった反面、失ったものの大きいと思わない?」
「・・・かもね」

文明と自然の境界線は、思い出と現実との境界線でもあった。
S957
(No.957完)
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[No.957-1]自然と文明の境界

No.957-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
久しぶりに地元の友達と会った。

「ほんと、変わったよね?」
「このあたりは特にね」

今、通過中のこの橋には強い“思い入れ”がある。
言葉の使い方は決して正しくはないが・・・。

「昔さぁ、向こうに行くの大変だったよね?」

家のすぐそばを大きな川が流れていた。
だから向こうに行くには、必然的に橋を渡ることになる。

「私はまだマシな方だったけど」

ただ、家の近くに橋が無かった。
そのために、相当遠くの橋を渡る必要があった。
極端に言えば、目の前にある場所に行くにも・・・だ。

「もし、近くに橋があったら、数分で行けるのにね」

既存の橋を使えば、その10倍近い時間が掛かった。

「それが、今じゃねぇ・・・」

ある意味、悲願とも言える“近く”に橋が架かった。
地元を離れてから、5年くらい経過した頃に。

「嬉しいやら悲しいやら」

格段に便利にはなったが、私はその恩恵を受けていない。

(No.957-2へ続く)

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