[No.939-2]価値がある十円玉
No.939-2
「無くなったって・・・」
「正確には、使っちゃった・・・だけどな」
落としたりしたわけじゃない。
何かを買った際に使ってしまった。
「えっ?」
「財布に入れてたの?」
意識的に避けていたけど、うっかり使ってしまった。
「そりゃ、そうなるわよ」
「・・・だよね」
財布からよけておくつもりだった。
でも、そこまでする価値もないとも思っていた。
「そのわりには、随分と驚いてたじゃない?」
「まぁ・・・逃した魚は大きいと言うか・・・」
無くしてようやく気付いた。
「大袈裟ね!」
「でも・・・ううん、何でもない」
「何だよ・・・言えよ」
明らかに言いたげな顔をしていたからだ。
「私はまるでそのギザ十だね」
鈍感な俺でもその意味は分かる。
「・・・かもな」
「もう行くね、ジュースありがとう」
「今度のギザ十は失くさないでよ!」
(No.939完)
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