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[No.938-1]ある女の子の記憶

No.938-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
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「これって、七五三の写真?」

幼馴染が、一枚の写真を僕に手渡す。

「多分、そうだろうな」

電車の座席に、僕と母親が写っている。
おもちゃで遊んでいる僕、それを見守る母・・・といった構図だ。

「みんなそれっぽい服装だもんね」

他にもそれっぽい服装の人がチラッと写っている。
ただ、悲しいかな、記憶には全く残っていない。

「覚えてないの!?」
「仕方ないだろ・・・」

かろうじて、三歳の時の写真だとは分かる。
日付が記録されているからだ。

「だから、懐かしさは感じない」
「逆に“この子、誰?”って感じ」

他人を見ている感覚に近い。

「ほんと覚えてないの!?」
「なんだよ・・・随分、突っかかってくるな」

七五三の記憶だけがないわけじゃない。
自慢じゃないが、幼稚園以前の記憶はほとんどない。

「じゃあ、聞くけど・・・」
「お前は覚えてるわけ?」

そんな大差はないだろう・・・そう思っていた。

(No.938-2へ続く)

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