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2019年10月

[No.943-2]あずましくない

No.943-2

「ところで、どういう意味なの?」
「そうね・・・うぅん・・・・」

考え込んでしまった。
相当、悩んでいるように見える。

「そんなに考えることなの?」

言っては何だが、たかが“方言”だ。
それを標準語に置き換えればいいだけだ。

「その置き換えが出来ないのよね・・・」
「まぁ・・・しいて言えば」

いくつか、言葉を選んでくれた。

「要するに、気持ち悪いってこと?」
「そうとも言えなくて、なんていうか・・・」

“落ち着かない”感じもあるらしい。
けど、ピタリとあてはまる言葉はないようだ。

「あずましくないは、やっぱり“あずましくない”の!」
「だから聞いてるんじゃない!?」

ややケンカ越しの会話になってしまった。
たかが方言が思わぬ方向に向かってしまった。

「わ、わかったから・・・」

言いだしっぺの友人が先に折れてくれた。
ただ、その独特のニュアンスを感じとれないのは悔しくもある。

「う~ん、それは“あずましく”ないね!」
「そうそう!そんな感じ!」

居酒屋を出る時には、上手くそれを使えるようになった。
S943
(No.943完)
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[No.943-1]あずましくない

No.943-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なんだか、あずましくないね!」
「えっ・・・なに?」

周りがガチャガチャしてせいでよく聞き取れなかった。
まぁ、居酒屋なら仕方がないことだが。

「“あずましくない”って聞こえたけど?」
「そうだよ」

どうやら聞き間違いではなさそうだ。
でも、初めて聞いた言葉だった。

「ごめん・・・なんて意味?」

この手の流行語にはうとい。
つい最近も若手との会話について行けなかった。

「流行語?」
「あはは、違うわよ」

友人が大笑いする。

「ごめん!私が悪いのにね」

友人がそれが何か説明してくれた。

「方言!?」
「そう!私、道産子だから」

そう言えば、札幌出身だったことを思い出した。

「もぉ!また私だけ遅れてると思ったじゃない・・・」
「ごめん、ごめん、つい・・・」

ただ、その意味までは分かっていない。

(No.943-2へ続く)

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ホタル通信 No.411

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.463 蜜の味
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

タイトルだけでは内容が思い出せない小説があります。これもそのひとつです。

この小説は正確に言えば前半はよく覚えていました。でも、どのような展開になるかは全く覚えていませんでした。言い換えれば前半はほぼ事実のため、話を覚えていると言うより、経験が記憶として残っていたわけです。
さて、この赤い花、何だか分かりますか?私も名前を忘れてしまったため、ネットで調べてみました。「赤い花、蜜」で検索すると、一発で出てきました。
さらには一番目に検索されたページは「学校の帰りにみんなが吸った花の蜜」というから驚きです。ちなみに花の名前はサルビアです。

この花の蜜を吸えることを、どうやって知ったのかは覚えていません。周りの影響というか、一種のブームみたいなものでしょうか・・・とにかく、気付けば吸っていました・・・というのが事実です。
後半は、前半の流れを引き継ぎながらも、強引に恋愛系の話に持ち込んでいます。まぁ、いつもの手口と言いますか、オチは恋愛絡みの方が絵になると言うか小説っぽいと言うか・・・。

今回、花の名前を調べた時、少し気になることが書いてありました。そこには「少なからず毒があるので吸い過ぎには注意」と。
今更ながら、「これは小説ネタで使えたのに!」とちょっと悔しい気持ちになりました。
甘い蜜、毒・・・恋愛小説、そのものですよね。この小説を書く際にもう少し調べていたら、違う結末が待っていたのかもしれません。
T411
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[No.942-2]子供は無敵

No.942-2

「子供の頃ってさぁ・・・」
「すぐ覚えるよね」

他の楽器に比べて難易度が高くないせいもあるだろう。

「それに比較的短い曲とは言え・・・」

あっと言う間に音符を覚えてしまう。

「勝手に指が動くというか・・・」
「そうね・・・確かに」

放課後や自宅で練習した記憶は残っていない。
所詮、学校の授業だ。
そこまで、真剣に取り組んでいないのが正直なところだ。

「なんでだろうね・・・」

発表会を目の前にしてもプレッシャーは感じない。
そもそも“プレッシャー”自体の存在さえ知らなかった。

「ある意味、“無心”だったからかもしれないね」

失敗とか成功とか、考えたこともない。

「子供って無敵ね!」
「ほんと、度胸に関しては大人以上かもね」

それに、良い意味で守るべきモノもない。

「けど、急にどうしたの?こんな話をして・・・」
「ん?ちょ、ちょっと・・・ね」

別に大したことじゃない。
日々臆病になって行く私を、見つめ直したいだけだ。
S942
(No.942完)
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[No.942-1]子供は無敵

No.942-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
小さな子供が起用に楽器を演奏している。
それを見て、ふとあることを思い出した。

「ねぇ、なんか、楽器を演奏できる?」
「なによ、急に・・・」

私は何も演奏できない。

「そう言えば・・・ピアノ、習ってたよね?」
「うん、小さい頃ね」

この先の答えを聞かずとも顔に書いてある。
“今はもう弾けません”と。

「今は全然だよ!」
「分かってるよ」

高校も同じ学校に通った幼馴染の関係だ。
ある程度のことは分かっているつもりだ。

「で、ピアノのこと?」
「ううん、違う」

小学生の時、音楽の授業があった。
その時、縦笛の授業があった。

「覚えてる?」
「覚えてるよ、いつも隣同士だったじゃん」

それに、“音楽発表会”も開催されていた。

「特別な思い出があるの?」

特にこれといった思い出はない。
ただ、気になっていることがある。

(No.942-2へ続く)

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[No.941-2]匂いのせいで

No.941-2

「何の匂い?」
「多分、ワラを焼いてる匂い」

何となく香ばしい匂いと言うか・・・。
決して焦げ臭いくはない。

「“わら”って・・・稲の?」
「そうだよ」

記憶は定かではない。
でも、今頃になると、そんな匂いがあたりに漂っていた。

「実家が郊外にあって」
「田んぼも多かったから・・・」

稲刈り後は多量のワラが積み重ねられていた。
それを燃やしているところも幾度となく見てきた。

「その時の匂いと同じだったの」

実家を離れてからは、その匂いを嗅ぐこともなくなった。

「まぁ、こんなビル街じゃね・・・」
「だから、どこから匂いがしてるのかな・・・って」

もちろん、田んぼも畑も近くには見当たらない。
だから勘違いの可能性は大いにある。

「・・・しばらく帰ってないんでしょ?」

確かにここ数年、実家に帰っていない。

「それなら、思う存分、嗅いできたら?」
「・・・そうね」

実際、その匂いのせいで、故郷が恋しくなっていた。
S941
(No.941完)
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[No.941-1]匂いのせいで

No.941-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、秋の匂い・・・」
「待って!みなまで言わないで」

友人が私の話を途中でさえぎる。

「えぇっ・・・とね・・・答えは・・・」

クイズが好きな“友人ならでは”の対応だ。
クイズ王もビックリの早押しぶりだ。

「キンモクセイ!」
「・・・」

これがクイズ大会なら大恥をかくことになっただろう。

「ち、違うの!?」

勝手に話を進めて行く。
とは言え、付き合ってあげないと機嫌を損ねかねない。

「クイズなら・・・秋に香る代表的な草花と言えば」
「“キンモクセイですが・・・”となるでしょ?」

私だって、そこそこクイズの出題パターンは知っている。
“○○ですが”はその典型的な例だ。

「言うね~」
「裏を読まなきゃ」

ただ、今回に限っては裏は読めない。
あくまでも私の経験がその答えだからだ。

「じゃあ、なに?」
「今朝ね・・・」

ある懐かしい匂いがしてきた。
随分、昔に嗅いだことがある匂いだった。

(No.941-2へ続く)

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ホタル通信 No.410

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.491 ナビの通りに
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

後半の映画館の展開が、やや強引なような気がします。それに映画館の話は他の小説でも書いたような気が・・・。

前半のナビの話ですが、下調べしたのは事実ですが、行動には移されていません。そのため、話題のスイーツ店どころか、どこにも行っていません。
今の時代、初めて訪れる店でも、メニューから外観まで調べることができる他、周辺の環境も知ることができます。小説に書いた通り、迷子にならないように、最寄り駅からのルートをビジュアルで確認したりすることももはや日常です。

もともと、後半に映画の話を持ってくる予定ではなかったと記憶しています。たまたま、話の展開上、“予習”の行為が主軸となったために、“予習”ができなかった過去の経験に結び付きました。
過去の経験・・・と言うくらいですから、映画の話はほぼ事実です。
予習できるありがたさを感じる反面、ドキドキ感は少なくなっています。言葉の使い方は間違っていますが、“出来レース”的な感じでしょうか?
ネタバレしている状況下で、やはり現地に着いても「あ~下調べした通りね」と、冷めた自分が居ます。

そんなこんなを描いた小説です。
下調べをしてスマートに出掛けるか、それをせずに成り行きに任せるか・・・あなたはドッチ派でしょうか?
T410
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[No.940-2]良く効く薬

No.940-2

「はいはい、薬ね・・・」

こんな時に備えて、何種類かの薬を持ち歩いている。
胃薬はその代表だ。

「サンキュー!」
「私はあなたの薬箱じゃないのよ?」

自分で飲むより、圧倒的にあげる方が多い。
そのほとんどを目の前の同僚が消費している。

「まぁまぁ、そんなこと言わないのぉ!」
「・・・ったくもうぉ・・・」

それにしても、昨日は特に盛り上がった歓迎会だった。
盛り上がった分、同僚のダメージも大きいみたいだ。

「今日・・・大丈夫?」
「もちろんよ!」

今日は今日で送別会がある。

「まぁ、その元気だけは見習いたいわね」
「でしょ?」

その元気のお陰で、会はいつも盛り上がっている。

「ほら、ひどくなる前に、薬飲んだら?」
「そうする」

そう言うと、水もなしに錠剤を口に放り投げた。
手馴れているというか、雑と言うか・・・。

「あなたからもらった薬は良く効くのよね~」
「成分が違うからじゃない?」
S940
(No.940完)
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[No.940-1]良く効く薬

No.940-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ・・・胃薬持ってない?」
「・・・大丈夫?」

同僚の顔色がやや悪い。
理由は分かっている。

「遅くまで飲むからよ」
「だって・・・」

連日、送別会やら歓迎会が続いている。
それは同じ部署の私も同じだ。

「ほどほどにしなきゃ!」
「もう若くないんだから・・・」

30歳にもなれば、もう立派な“おばさん”だ。
高卒の新入社員とは一回りも歳が離れている。

「ごめん・・・つい・・・」

いつも率先して幹事を努めてくれる。
それに関しては感謝している。

「幹事が先に酔いつぶれちゃうんだから・・・」

中締めの頃には、だいたいそうなっている。
昨日もそうそうに酔いつぶれていた。

「新人てさぁ、息子や娘の感覚だよね?」

歳を重ねるごとに、母性が強くなっているように見える。

「その前に、彼氏を作んなきゃね!」
「イテテ・・・胃が・・・」

うそ臭い演技と共に、手を伸ばしてきた。

(No.940-2へ続く)

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[No.939-2]価値がある十円玉

No.939-2

「無くなったって・・・」
「正確には、使っちゃった・・・だけどな」

落としたりしたわけじゃない。
何かを買った際に使ってしまった。

「えっ?」
「財布に入れてたの?」

意識的に避けていたけど、うっかり使ってしまった。

「そりゃ、そうなるわよ」
「・・・だよね」

財布からよけておくつもりだった。
でも、そこまでする価値もないとも思っていた。

「そのわりには、随分と驚いてたじゃない?」
「まぁ・・・逃した魚は大きいと言うか・・・」

無くしてようやく気付いた。

「大袈裟ね!」
「でも・・・ううん、何でもない」
「何だよ・・・言えよ」

明らかに言いたげな顔をしていたからだ。

「私はまるでそのギザ十だね」

鈍感な俺でもその意味は分かる。

「・・・かもな」
「もう行くね、ジュースありがとう」
「今度のギザ十は失くさないでよ!」
S939
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[No.939-1]価値がある十円玉

No.939-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・あぁー!無くなってるぅ!」
「わぁぁー!な、なによ、急に・・・」

つい、反射的に声が出てしまった。

「ご、ごめん・・・」

自販機で飲み物を買おうとして気付いた。
有ったものが無くなっている。

「な、なにが無くなったの?」
「十円玉・・・」

彼女がキョトンとした顔をしている。

「はぁ!?」
「実は・・・」

少し前に、ある十円玉を手に入れた。
それは俗に言われる“ギザ十”だ。

「・・・まぁ、聞いたことはあるけど」
「側面にギザギザの溝が掘られててさぁ」

普通の十円玉よりは珍しがられている。
多少価値があるとかないとか・・・。

「えっ!もしかして」
「ものすごく価値があったの?」

その質問には答え難かった。

「いいや・・・いいや?」
「何なの・・・その返事」

価値を調べる前に無くなってしまったからだ。

(No.939-2へ続く)

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ホタル通信 No.409

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.493 ギザギザの葉っぱ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

会話についてはほぼ創作ですが、話の主軸の“ギザギザの葉っぱ”は事実です。

実は今でも、この葉っぱを見ると、うさぎのエサを思い出してしまいます。小説ではこの葉っぱが、“タンポポ”ということになっていますが、少し自信がありません。
小説を書く際に、記憶の整理を行い、ネットで調べた上での結論でしたが、本当にそうだったのか、疑問が残っていないわけではありません。

それはさておき、その葉っぱ摘みに奔走したのも事実です。
それが美味しいのかどうかは、うさぎに聞いてみないと分かりませんが、他の雑草よりは美味しそうに思えました。ギザギザ感がどことなく、水菜を連想させるせいでしょうか・・・そんな記憶も残っています。
ただ、そもそも論として“なぜタンポポの葉っぱなの?”にはお答えすることができません。飼育係に引き継がれた伝統と言いましょうか・・・気付けばそうなっていたというのが本音です。

自分で言うのもなんですが、それにしても、変なネタを小説にしたものだと呆れてしまいます。
“冬のホタル”らしいと言えばその通りですが、着眼点があまりにも独創的で、読み返してみて、ちょっとひいてしまいました。
とは言え、そこそこしっくりくるオチにたどり着くのもいつもの通りで「我ながら頑張ってるな」と褒めてあげたい気分です。

この話はスーパーの野菜売り場での会話です。
棚に並ぶ野菜を見て思い出した・・・という展開です。ただ、私にすれば、野菜全部が“うさぎのエサ”にしか見えなくなってしまったことを嘆きながら話が終わります。
T409
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[No.938-2]ある女の子の記憶

No.938-2

「覚えてるよ」
「まぁ・・・断片的だけどね」

何だか負けた気分だ。
歳も同じなだけに、僕の記憶力が劣っているのだろうか?

「ちなみに、自分の七五三も覚えてるの?」
「もちろんよ!」

そう言い切られると、逆に聞きたくなる。

「へぇ~じゃぁ・・・」

どこまで覚えてるか、聞いてみることにした。

「どこの神社に行った?」
「・・・神社だよ」

聞き覚えがある。
まぁ、家が隣同士だから、当然と言えば当然だろう。
自分もその神社に行った可能性が濃厚だ。

「電車で?」
「そうよ、写真に写ってる電車で」

この電車は覚えている。
というより、高校生まで通学でも使っていた電車だ。

「今は、新型車両になってるけどね」
「そうなの!?」

地元を離れてからは、この電車には乗っていない。

「それにしても、ほんとに楽しそうな写真だな」
「そうそう!随分、はしゃいでたわよ!」

・・・どういうこと?
S938
(No.938完)
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[No.938-1]ある女の子の記憶

No.938-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これって、七五三の写真?」

幼馴染が、一枚の写真を僕に手渡す。

「多分、そうだろうな」

電車の座席に、僕と母親が写っている。
おもちゃで遊んでいる僕、それを見守る母・・・といった構図だ。

「みんなそれっぽい服装だもんね」

他にもそれっぽい服装の人がチラッと写っている。
ただ、悲しいかな、記憶には全く残っていない。

「覚えてないの!?」
「仕方ないだろ・・・」

かろうじて、三歳の時の写真だとは分かる。
日付が記録されているからだ。

「だから、懐かしさは感じない」
「逆に“この子、誰?”って感じ」

他人を見ている感覚に近い。

「ほんと覚えてないの!?」
「なんだよ・・・随分、突っかかってくるな」

七五三の記憶だけがないわけじゃない。
自慢じゃないが、幼稚園以前の記憶はほとんどない。

「じゃあ、聞くけど・・・」
「お前は覚えてるわけ?」

そんな大差はないだろう・・・そう思っていた。

(No.938-2へ続く)

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[No.937-2]外を眺めていた

No.937-2

「私・・・もう少ししてから帰るね」
「ごめん、そんなつもりじゃ・・・」

同僚に悪意がないのは分かっている。
でも、週末ともなれば飲みに行く人も多い。

「いいの、いいの!」

雨女に科学的根拠はない。
けど、偶然というレベルをはるかに超えている。

「でも・・・」
「ほんと、私は大丈夫だからさぁ!」

渋る同僚の背中を、軽く押し出した。

「はいはい、いってらっしゃい!」

(・・・さて・・・戻るか・・・)

とは言え、本当にオフィスに戻るわけにもいかない。

「社員食堂で、コーヒーでも・・・」

幸いにも、飲み物程度ならまだ営業しているだろう。

(とりあえず、成り行きを見守りますかぁ!)

心の中で呟きながら、窓際の席で外を眺める。
もちろん、雨の様子を伺うために。

「さて、お手並み拝見といきましょうか!」

自分のことなのに、まるで他人事のような表現になってしまった。

「・・・ん?・・・あれ?」

ふと周りを見渡すと、数名の社員が私と同じように外を眺めていた。
S937
(No.937完)
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[No.937-1]外を眺めていた

No.937-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
徐々に“あの力”が復活して来ている。
以前にも増して、それが強くなっているようにも思える。

「最近、週末になると雨・・・だよね?」

言いたいことは分かっているつもりだ。
同僚の顔にもそう書いてある。

「・・・だね」

自分が雨女だということは自覚している。
それに、周りの人達にも十分過ぎるくらい知られている。

「復活してきてない?」
「例の・・・力」

痛いところを突いて来る。
最近なって、雨を呼び込む確立が明らかに増えてきている。

「ほら、一時期、あの力が消滅したじゃん」

例の力とか、あの力とは・・・雨女の力のことだ。
つまり、雨を降らせる力に他ならない。

「・・・そうなんだよね」
「自分でもそう思ってた」

雨が降るどころか、雨が止んでしまうこともあったくらいだ。
そんなこんなが、約1年も続いた。
それにしても、力が存在するのが前提なのには笑える。

「本当に力が消滅したと思ってたもん」
「これで、雨女の汚名返上かと・・・」

それがどこに行ってしまったのだろうか?
そうこう話しているうちにも、雨足はどんどん激しさを増している。

(No.937-2へ続く)

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ホタル通信 No.408

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.453 えっへん!
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

久しぶりの“100%実話小説”のご紹介です。家庭菜園にまつわる小説は、今でも書き続けています。

以前のホタル通信でも書いているとは思いますが、“自ら進んで始めた”というより、“勧められて始めた”が正解です。
ただ、全く興味がなかったわけではありませんから、背中を押してもらった感はあります。
「昨年、プチトマトを育てた」ようなことを書いていますが、これ以上のことには触れていません。今回の小説には不要なので、あえて触れてはいませんが、見事に大失敗しています。
そこそこ実りはしたのですが、レモン以上の酸っぱさで、悶絶した記憶が残っています。

100%実話ですから、読んで頂いた通りです。
脚色もほとんどありませんから、まさしく小説のようなやりとりが交わされていました。
冒頭、家庭菜園にまつわる・・・と書きました。今回のように家庭菜園を楽しんでいる様を描いたものが多いのですが、育てている野菜そのものに触れていることも少なくありません。
特に「No.447 折れない心」がその代表例で、自分でも意外と思えるほど、多くの拍手を頂いています。

よくある例え話ですが、経験談をもとに作られていますので、共感を頂いているのでは?と勝手な分析をしています。
今年は、「No.935 見えない命」で発表した通り、連休と所用の関係で、家庭菜園をスタートさせて以来、はじめて栽培を休みました。
もちろん、来年は育てるつもりですし、冬でも育つ“何か”があれば挑戦してみるつもりです。
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[No.936-2]ロックとクラシック

No.936-2

「まぁ、あなたじゃないけど・・・」
「秋が来たってことよ」

これも秋の訪れを告げる風物詩のひとつだろう。
秋風と共に、それを運んできた。

「つい、この前までは・・・」
「あいつらだったのにね」

友人が言う“あいつら”は“あいつら”に他ならない。

「そうそう!朝から勘弁して!って感じ」
「でもさぁ、聞こえなければ聞こえないで、寂しくない?」

今度は友人が詩人ぽい。

「そりゃ・・・ね」

もう、数週間前から聞こえなくなっていた。
まるで活躍の場を失ったかのように。

「言うなれば主役交代だね!」
「うまいこというよね」

本当にそう思う。

「でも、上手くできてるよね、自然って」
「そうだね」

ロックが終わり、さながらクラシックと言ったところだろうか。
S936
(No.936完)
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