[No.943-2]あずましくない
No.943-2
「ところで、どういう意味なの?」
「そうね・・・うぅん・・・・」
考え込んでしまった。
相当、悩んでいるように見える。
「そんなに考えることなの?」
言っては何だが、たかが“方言”だ。
それを標準語に置き換えればいいだけだ。
「その置き換えが出来ないのよね・・・」
「まぁ・・・しいて言えば」
いくつか、言葉を選んでくれた。
「要するに、気持ち悪いってこと?」
「そうとも言えなくて、なんていうか・・・」
“落ち着かない”感じもあるらしい。
けど、ピタリとあてはまる言葉はないようだ。
「あずましくないは、やっぱり“あずましくない”の!」
「だから聞いてるんじゃない!?」
ややケンカ越しの会話になってしまった。
たかが方言が思わぬ方向に向かってしまった。
「わ、わかったから・・・」
言いだしっぺの友人が先に折れてくれた。
ただ、その独特のニュアンスを感じとれないのは悔しくもある。
「う~ん、それは“あずましく”ないね!」
「そうそう!そんな感じ!」
居酒屋を出る時には、上手くそれを使えるようになった。
(No.943完)
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