[No.930-2]電車を見送る少女
No.930-2
「・・・どうしたの?」
「元気ないわね・・・」
手を振る女の子を見ながら、あることを思い出していた。
それは、あまり触れられたくないことだ。
「うん・・・まぁ・・・」
「ははぁ~ん・・・さては・・・」
こういうことだけは本当に察しが早い。
これに“気遣い”が加われば最高なんだが・・・。
「子供の頃のこと、思い出してたんでしょ?」
どうやら、かいかぶり過ぎていたようだ。
「そ、そうそう!泣き虫でさぁ・・・私ぃ!」
この後は、適当に話をでっち上げた。
「あのね・・・そんな話で私が納得するとでも?」
「えっ!?」
追求する気、満々の顔だ。
くやしいけど、単に泳がされていただけだった。
「ほんとは誰なの?」
「・・・もぉ・・・言わなきゃダメ?」
あの日・・・私は決意の中、あの人の背中を見送った。
(No.930完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
| 固定リンク | 0
「(038)小説No.926~950」カテゴリの記事
- [No.950-2]半年先にあるもの(2019.12.01)
- [No.950-1]半年先にあるもの(2019.11.30)
- [No.949-2]目薬(2019.11.28)
- [No.949-1]目薬(2019.11.27)
- [No.948-2]モジモジ(2019.11.24)
コメント