[No.926-2]黄色のラケット
No.926-2
「でも、急にどうした?」
「・・・卓球、始めるの?」
昔と違って、雰囲気も変わった。
俺たちの時代は、少なからず卓球に偏見があった。
やや根暗なスポーツだと・・・。
「まさか!」
「うち、スポーツはまるでアカン」
ある意味、意外だった。
見た目は少なくとも文学少女ではないからだ。
「そうは見えないけどな・・・」
「それならどうして?」
今日、急に呼び出された。
それなりの理由がなにかあるはずだ。
(・・・まてよ)
こんな時は、かならず“あいつ”が出てくる。
「実はなぁ・・・」
「せいじゅうろうが・・・」
そう言うと、あいつを目の前に出してきた。
「随分と汚れたな~!」
そこそこ痛みも進んでいる。
「卓球、始めるんやて」
「せいじゅうろうが?」
もはや、“誰が”と本気でボケたりはしない。
「はぁ・・・いつものせいじゅうろうだよね?」
目の前にはいつものあいつか居る。
「よう見てん!黄色いラケット持ってるやん!」
「どこにだよ!?それは、まくら・・・」
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