[No.924-2]さっきのグー
No.924-2
「今回はね・・・すごいよ!」
「・・・な、なにが・・・」
今回はいつものパターンとは違う。
「セミのように息も絶え絶えじゃなくて・・・」
「元気そのもの!」
誤って、建物の中に迷い込んできたらしい。
でも、いつも不思議に思うことがある。
「不思議?」
「うん、私、7階に住んでるから・・・」
飛ぶことができる彼らには、7階もわけないとは思う。
けど、ここまで飛んでくる必要もないだろう。
「壁を登ってきたとも思えないし」
「・・・それより、話の続きは?」
随分と脱線してしまった。
「ごめん、ごめん!」
バッタは元気そのものだった。
でも、ここに居たらそう長くは生きられない。
「手をグーにして、その中に入ってもらったの」
その名残が、さっきのグーだ。
「元気だから、くすぐったくて」
「・・・私には無理!」
そのまま一階に降りて、適当な草むらで手放した。
力強いキックで草むらに消えたバッタの感触が手に残っている。
(No.924完)
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