[No.917-2]新しい生活
No.917-2
「まだ、引きずってるわけ?」
「・・・まぁ・・・な」
あの日、声を掛けられたこと。
そして、それに応えられなかったこと。
「大袈裟かもしれないけど」
「そんなこと、人生においてはよくあることじゃない?」
「な、なん・・・」
言い掛けた気付いた。
彼女にはそれを言う資格がある。
「そ、そうだよな」
彼女は数年前に母親を亡くした。
いわゆる突然死で、日常に突然幕が下りた。
「そうそう!」
「だから、もう気にしないの!」
新しい気持ちで、その家の前を通れそうだ。
「今度はどんな人が住むのかしら?」
「また、“おばあちゃん”だったりして・・・」
「おいおい・・・」
時々、ブラックジョークにも似たセリフを投げ付けてくる。
「冗談よ、冗談!」
とは言え、可能性はゼロではない。
「全く・・・勘弁してくれよ・・・」
誰かの新しい生活は、僕の心残りに終わりをもたらしてくれた。
(No.917完)
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