[No.921-2]セミと私
No.921-2
「まだ・・・だよ」
「随分、答えに時間が掛かったわね?」
それに関しては私のせいじゃない。
最初から、そう言ってくれれば十数秒で終わる話だ。
「とにかく・・・それは残念ね」
「残念?」
確かに毎年、何かしらのネタを提供してくれる。
ただ、決して笑える話ではない。
「だって、そこそこいい話を持ってくるじゃん!」
「・・・あっ・・・そ、そうなんだ」
意外な答えだった。
間違いなく茶化されると思っていたからだ。
「セミの一生って、長いと思う?」
「それとも短いと思う?」
これまた唐突に哲学っぽいことを言い始めた。
「あなたは直接、命に触れたわけだから」
「それはそうだけど・・・」
ここ数年、今まさに命の火が消えそうなセミを手にしている。
「その前に、どうしたのよ?朝からマジメな話をして・・・」
いつもの同僚らしくない。
「・・・何か悩み事でも?」
もしかしたら遠回しに相談を持ち掛けられているのかもしれない。
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