[No.904-2]そこに山があるから
No.904-2
「中学生になったら」
通学路が変わり、山がある道を通らなくなった。
「そこから記憶が曖昧になってる」
「今、その場所は?」
その場所どころか、一帯が住宅街に変わった。
かろうじて、山があった場所だけは記憶に残っている。
「だから、いつ無くなったのかは不明」
今でも残っていたら、間違いなく立入禁止になるだろう。
「そりゃそうよ・・・ケガでもしたら大変な時代だもん!」
「まぁ、古きよき時代の話さ」
そんな歳でないけど、ふとそんなことを思い出した。
「登ってみたくなったわ」
彼女が目を輝かせている。
「そんな趣味あったっけ?」
「ううん、ヤンチャなだけよ」
何とも彼女らしいセリフだった。
「頂上から見る景色が、きれいでさ・・・」
絶景が見えるわけじゃない。
それなのに、そこに陣取り、遠くを眺めていた。
(No.904完)
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