[No.903-2]鬼の形相
No.903-2
「つまり、出会い頭?」
「そう・・・」
寸前で、なんとか衝突は免れた。
「で、謝ろうとしたら・・・」
先に向こうから謝ってきた。
「これがお店の人だったら、私は一応“お客様”だから・・・」
謝られるのも分かる。
でも、配送の人にとって、私は直接的なお客様ではない。
「これだけでも、十分、驚いたのに」
店内をウロウロしていると今度は私が彼の進路を妨げてしまった。
「それなのに、向こうから先に“すみません”なんだもん」
社員教育が行き届いていると言えばそれまでだ。
でも、私にはそれ以上のものを感じた。
「・・・私もそう思う」
「これが、顔が穏やかな理由ね?」
そのお陰で、鬼の形相が消えたと思う。
今だにその余韻も残っている。
「素敵な人ね」
だからと言って、映画やドラマのような展開は期待していない。
もしかしたら“鬼の形相”にひるんでいただけかもしれないし。
(No.903完)
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