[No.899-2]YATAI
No.899-2
「初めてみた・・・」
「・・・俺も」
昔のテレビドラマに出てくる定番中の定番の屋台だ。
土台がリアカーゆえに、もちろん人力で動いている。
「でも・・・すごくうまそうに見えるよな」
「それは言えてる」
少し離れた位置からでも、湯気が上がっているのが見える。
それだけでも食欲をそそる。
「雰囲気がそうさせてるんだろうな」
多分、“本当の味”自体はそう期待できない。
けど、雰囲気という魔法の調味料が加われば・・・。
「そして、年老いた主人が・・・」
会話に割り込むでもなく、聞き流すのでもない。
そこに、独特の時間が流れて行く。
「・・・まぁ、ドラマ・・・ではね」
「だな」
期待がどんどんと膨らんでくる。
加えて、一人前の大人になった気もする。
「じゃ、入るぞ!」
勢いよく、かざり程度の、のれんをくぐる。
そこにはファンキーな若者が一人立っていた。
(No.899完)
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