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[No.898-2]見送る背中

No.898-2

「じゃぁ、俺も行くわ」

仕事の都合で今日から遠距離恋愛が始まる。

「見送りはいいから」
「・・・うん、分かった」

どこで見送られようが、場所は関係ない。
一秒でも一緒に・・・という時期は良い意味で過ぎている。

「向こうに着いたら連絡するよ」
「気をつけてね」

シチュエーションは違うが見送られるとはこういうことだ。
さっきの母親と同じように彼女もきっと・・・。

(もう少し歩いてから振り向いてみるか・・)

期待を膨らませて、さりげなく振り返る。

「・・・え・・・えぇ~!!」

そこに彼女の姿はなかった。
悲しいけど現実はこうなのかもしれない。

「いってらっしゃいぃ!!」

どこからともなく彼女の声が聞こえてきた。

「ここよ、ここ!」

マンションの廊下から彼女が手を振っている。

「ここからなら、遠くまで見送れるでしょ!」
S898
(No.898完)
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