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2019年2月

[No.899-1]YATAI

No.899-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「・・・近くない?」
「みたいだな」

久しぶりに、あの定番のメロディを聞いた。
今も昔も変わらないようだ。

「どうする?」
「なによ、誘ってるの?」

会社帰り、偶然、違う部署の同期と出会った。

「腹が減っただけだよ!?」
「あら・・・そぉ?」

あからさまに言われるとそれはそれで寂しい。
相変わらず、乙女心を分かっていない。

「で、どうする?」
「そうね・・・」

そうこう話している内に、どんどん音が近づいて来る。
仕方ない・・・。

「まぁ、その誘いにのってあげるわ」
「だから、そうじゃなくて・・・」

あの頃と変わらない、青臭い会話が続く。

「ほら、見えてきたわよ」
「ほんとだ!」

驚くほど、ノスタルジックな屋台が少し先で停まっていた。

(No.899-2へ続く)

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11年目を迎えるにあたり

2009年2月22日(日)に一作目「No.01 グリーティングカード」が掲載されてから今日で、丸10年が経過しました。
自己満足の小説に付き合っていただいた多くの読者の方々に感謝申し上げます。

さて、まずは軌跡を数字で振り返ってみます。
小説が898話ですから掲載本数は、898話×2=1796本です。ホタル通信はNo.389ですから、合計すると、2185本の記事を掲載したことになります。さらに、2185本を3650日(10年×365日)で割れば、掲載率は約60%です。

基本、月曜日と長期連休以外は掲載を続けていたのですが、主に仕事の関係で、しばらく掲載できなかった時期が何度かありました。特に最近、その影響が大きくなり、休む回数が増えているのが現状です。
それでも休む時は「休む」と宣言し、再開時期をキチンと書くことで、フェードアウトすることを防いでいます。もしもブログを止めることになった時は、キチンと宣言しようと思っています。

最近は慢性的なネタ不足で、何度となくピンチに陥ったことががあります。
どんな些細なことでも小説にする一方で、手当たり次第、無理矢理に作ることはありません。ごく僅かであっても、そこに何かを感じ、心が動かなければ作らないのがポリシーです。ですから、言い換えれば大分、感性が鈍ってきているとも言えなくもないですね。

でも、よく10年も続いたな・・・と自分のことながら感心もします。もちろん、最初からずっと続けようと思っていたわけではなく、気付けば「10年でした」というのが正直な感想です。
ここまで来たら、少なくとも1000話までは続けたいと思っていますが、当ブログの“独特の世界観”が落ち始めているという現実を前に葛藤がないわけではありません。

11年目を迎えるにあたり、その葛藤さえも小説のネタのひとつとして、これからも楽しんで頂ければ幸いです。
100%実話の小説が含まれていることもあり、これからも作者の素性は明かさないつもりです。今の世の中、性別や年齢なんて関係ありません。皆さんが想うイメージがホタルそのものです。
11year
作者 ホタルより

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ホタル通信 No.389

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.404 暗証番号
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

パスワードがあるラジオ番組の私書箱の数字だった・・・というのは事実です。

その番組によく投稿していたこともあって、今でも忘れることができない数字です。比較的、覚えやすい数字の並びであったことも関係していると思います。
話のきっかけは覚えていませんが、多分、パスワードの多さに閉口していた自分の気持ちを表現したかったように思えます。
パスワードの話が私書箱に繋がって行くのは、自分の中では自然な流れだったように思えます。

実話度はそれほど高くありません。後半は100%創作です。
いつもの通り、登場人物が物語りを展開させていると、自然と元カレの話へと移行して行きました。元カレの話は、コミカル調に進ませました。
オチは何も考えてはいませんでしたが、そこそこ気に入っています。最後の一行でグッと話が引き締まっています、自分で言うのもなんですが。

実はその数字、今でも使っています・・・というより、変えていないと言ったほうが正解ですね。
T389
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[No.898-2]見送る背中

No.898-2

「じゃぁ、俺も行くわ」

仕事の都合で今日から遠距離恋愛が始まる。

「見送りはいいから」
「・・・うん、分かった」

どこで見送られようが、場所は関係ない。
一秒でも一緒に・・・という時期は良い意味で過ぎている。

「向こうに着いたら連絡するよ」
「気をつけてね」

シチュエーションは違うが見送られるとはこういうことだ。
さっきの母親と同じように彼女もきっと・・・。

(もう少し歩いてから振り向いてみるか・・)

期待を膨らませて、さりげなく振り返る。

「・・・え・・・えぇ~!!」

そこに彼女の姿はなかった。
悲しいけど現実はこうなのかもしれない。

「いってらっしゃいぃ!!」

どこからともなく彼女の声が聞こえてきた。

「ここよ、ここ!」

マンションの廊下から彼女が手を振っている。

「ここからなら、遠くまで見送れるでしょ!」
S898
(No.898完)
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[No.898-1]見送る背中

No.898-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「いい光景ね」
「・・・そうだな」

とある母親が玄関先で、遠くを見つめている。
その視線の先は、多分、歩いている女の子だろう。

「中学生かしら?」
「そんな感じだね」

女の子は振り向きもせず、前を向いて歩いている。
母親のことは気付いているのだろうか・・・。

「難しい年頃だからね」
「逆に“ウザイ”って感じてるかも」

何となく自分の経験を重ねているように聞こえる。

「君もそうだった?」
「・・・どうだろうね」

女の子が曲がり角を曲がる。
それを見届けてから、母親は家に入っていった。

「いいお母さんね」

いつかその女の子も気付くだろう・・・。
そう言いたげな表情が印象的だ。

「あぁ・・・」

見守られているとは、まさにこんなことを言うのだろう。

「ふぅ~」

なぜだか、一度深呼吸したくなった。
今朝はやけに冷え込む・・・吐く息がいつにも増して白い。

(No.898-2へ続く)

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[No.897-2]とぼけた顔して

No.897-2

「じゃぁ、どんなところ?」

やんわりと詰め寄ってくる。
こうなるともう話題を変えられない。

「そ、そうだなぁ・・・」

ただ幸いなことに、好きなところは山ほどある。
問題は何を選ぶかだ。

「早く言いなさいよ」

まず、気が強いところが挙げられる。
そのせいか良くも悪くも毎日にぎやかだ。

「そう、せかすなよ」

そんな性格でも、ユーモアに溢れている。
そこが一番好きなところかもしれない。

「じゃあ、言うけど・・・」

ちょっと古めだけど、有名な歌で試してみよう。

「とぼけた顔してババンバ~ン!」
「バンバンババババ・・・」

思った通り、僕の“フリ”に乗っかってきた。

「なによ!急に?」
「言ったよ、好きなところ」

僕が歌うと続けて歌い始める・・・そんなノリが好きだ。

「ケンカ売ってる?“とぼけた顔”が好きだなんて!」
S897
(No.897完)
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[No.897-1]とぼけた顔して

No.897-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「付き合って、もう5年になるわね」
「そ、そうだな・・・」

いずれ来るかとは思っていたが、今・・・来たようだ。
覚悟を決めよう。

「僕もそろそろかな・・・と」
「バカね・・・違うわよ」

どうやら、僕が考えているような話ではないらしい。

「てっきり、アノ話しかと・・・」
「その気なら、してもいいけど?」

いじわるく返してきた。

「勘弁してくれよ」
「まぁ、いいわ、今回は」

勘違いから思わぬ展開に発展しそうになった。
でも、いずれキチンと話したいとは思っている。

「ねぇ、私のどんなところが好き?」
「なんだよ・・・急に」

やましいことは何もないが、心の準備も必要だ。
男にとってこの手の質問は。

「何か問題でも?」
「そうじゃないけど・・・」

果たして、彼女が望んでいる答えになるのだろうか?
答えによっては面倒なことになる。

(No.897-2へ続く)

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ホタル通信 No.388

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.465 黒いモヤ
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

勢いに任せた感情的な小説です。でも、冬のホタルの真髄とも言える内容です。

実話度は比較的高めです。夢の部分は創作で、実話のドロドロ感を増すためにあえて加えてみました。
この小説に書かれている話は、他の小説でも度々登場している内容です。彼女がいわゆる“宿無し”なことも初めて書いたわけではありません。
ある意味、彼女が自分の力で部屋を借りること・・・僕や彼女の悲願であったかもしれません。でも、いつも寸前のところまで行くのですが、その願いが叶うことはありませんでした。

実話にドロドロ感があるので、内容は少し哲学的です。
見方を変えれば、少し説教じみた感じもあります。彼女の生き方に口を挟み、僕の思い通りにことを運ぼうとしている身勝手さがにじみ出ています。
彼女を自由にしたいと本気で考えていた一方で、今度は自分が彼女を閉じ込めようとしていたのかもしれません。

今でも想うことがあります。
それは小説の最後にも書いた「だから、生きることを諦めるな」です。何度となく、諦めようとしていた彼女、生きていてくれればそれでいい。
T388
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[No.896-2]グライコ

No.896-2

「・・・何よ?」
「鳩が豆鉄砲・・・みたいな顔をして」

(今、“グライコ”の話をしているよな?)

自分で自分に問い掛けてみた。

「い、いや・・・今さぁ・・・」
「グライコの話、してるよな?」

今度は口に出して確認してみた。

「最初から、そうでしょ?」
「・・・そ、そうだな」

何がなんだか分からなくなってきた。

「父親から譲り受けて」
「インテリアとして使ってたわ」

レトロ好きな彼女らしい。
必要以上の重厚感がいかにも“昔”だ。

「グライコ、知ってたんだ・・・」
「知らないと思ってたんでしょ?」

僕の思い込みが、話をややこしくしてしまった。

「で、そのグライコがなに?」
「・・・何だっけ・・・な」
S896
(No.896完)
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[No.896-1]グライコ

No.896-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なぁ、グライコって知ってる?」
「もちろん!」

彼女が元気よく答えた。
けど・・・多分、勘違いしているだろう。

「・・・どう思う?」

どうとでもとれる質問で確認してみた。

「どう・・・って、私は好きよ」
「あなたは?」

やはりそうだ。
ファストフードのアレと勘違いしている。

「僕も好きだよ」

今の時代、音楽はスマホで聴く時代だ。
ミニコンポどころかラジカセすら見かけない。

「同じでよかった!」

僕らの時代、“グライコ”は憧れの的だった。
特にバーが表示されるタイプはワクワクした。

「懐かしいね!」
「・・・懐かしい?」

確かアレは毎冬、販売していたと思うが・・・。

(No.896-2へ続く)

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